血染の祝福

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兵士たちの笑い声が近づいてくる。
石造りの門の上で、パルゼアはじっと耳を澄ませていた。

足元には大鍋。
中には煮えた油が満ちている。

怖くないわけではない。
それでも、もう後戻りはできなかった。

やがて門が開く。
酒の匂いが風に乗って漂ってきた。

「クズどもが調子に乗りやがって。今日も自分たちの立場を思い知らせてやらねえとな」

先頭を歩く大男が笑う。
腰には、父を斬った剣。
その姿を見た瞬間、パルゼアの震えは止まった。

ゆっくりと大鍋を押し出す。
煮えた油が頭上から降り注いだ。

「ぐあああああッ!」

悲鳴。
三人の兵士が地面を転げ回る。
空になった鍋が石畳へ落ち、鈍い音を立てた。

「な、何だ!?」

残った兵士たちが一斉に見上げる。
門の上。
白いドレスをまとった赤髪の少女が、無言で立っていた。

血染めの祝福

「貴様か!」

兵士が槍を向ける。
パルゼアは答えない。
ただ一本の松明を放った。
炎が油へ触れる。
火柱が立ち上がった。

「ぐああああああ!」

兵士長が絶叫する。
全身を炎に包まれながら、それでも剣へ手を伸ばした。

「女ぁ……!そこから降りてこい!」

その声をさえぎるように、パルゼアが跳んだ。
炎の中へ、一直線に。
全体重を乗せたナイフが、首元へ深々と突き刺さる。

「ぐううう、きっ貴様ぁ……!」

兵士長の巨体が揺らぐ。
パルゼアは止まらなかった。

倒れた男へ馬乗りになる。
振り下ろす。

もう一度。
さらにもう一度。
何度も、何度も。

返り血が白いドレスを染めていく。
炎がすそへ燃え移る。

それでも少女は一言も発しない。
兵士たちは動けなかった。
目の前にいるのは少女ではない。

復讐そのものだった。

やがて兵士長の身体から力が抜ける。
血泡が口元から流れ、動かなくなった。

静寂が訪れる。

圧倒された兵士たちはその場にへたり込む。
地獄のような光景を前に、震えることしかできなかった。

パルゼアはゆっくり立ち上がった。
赤く染まった手。
血に濡れたナイフ。

その頭上へ、一筋の光が差し込む。
曇った空を貫く、厳かな光だった。

天から降り注ぐ戦神の祝福。
炎と血溜まりの中で、パルゼアは聖女となった。


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灰燼の誓い
「あらあらまあまあ……ずいぶんと暴れたものね」 戦場に似合わない間延びした声。 パルゼアが振り向いた先に、見慣れない女が立っている。...

コメント

  1. 匿名 より:

    凄惨ですね・・・
    パルゼアさん聖女になる前から強い。
    お父さんが殺されたことによって感情を失ったのが逆によかったのかな。
    門から飛び降りて全体重アタックは勇気がありすぎるw

    • akima より:

      自暴自棄になっていた部分もあると思います。
      兵士長さえ殺せたら他の兵隊に殺されても良い、という覚悟で臨んだのですが天啓を受けたことで生き延びることができました。
      恐怖は感じていなかったので全部思い切りの良い攻撃になった形ですね。

  2. 匿名 より:

    フィデア兵がクズすぎる。交易が盛んだったころから高圧的だったんでしょうね。

  3. 匿名 より:

    天啓を受けた

    残った兵隊を処刑

    vs駐屯地の兵隊の流れか。
    聖女単独でも普通の兵隊なら百人ぐらい殺せそう。

    • akima より:

      そうなります!
      普通の兵士だと槍や弓などで応戦することになりますが、その手の通常兵器は全部念動防御で防げます。
      でも聖女の攻撃は普通の兵士には防ぎようがないので、法力が尽きるまで一方的に倒せる形です。