
重なる暗雲
「わざわざ誘いに乗ってひとりで出向くなんて。ベルナズ!あなた、自信過剰にもほどがあるわ」 めずらしく感情を露わにしながら、ジグナがたしなめ...
「わざわざ誘いに乗ってひとりで出向くなんて。ベルナズ!あなた、自信過剰にもほどがあるわ」 めずらしく感情を露わにしながら、ジグナがたしなめ...
夕方の陽射しが、朽ちかけた石柱をやわらかく照らしている。 乾いた風が通り抜けるたび、床に散らばった砂や小石がささやかにかすれる音を立てた。...
「ああ、新しい秩序とかなんとか…。教会で信望者を集めてるみてえだな」 酒場の古びたテーブルの上にカードを配りながら、ミリオフが言う。 マ...
「それにしてもよ。なんで民衆は『自称、神』なんてのを簡単に信じちまうんだろうな」 両手を頭の後ろで組み、長椅子に腰掛けたベルナズがぼやく。...
「私は民衆の苦しみを直視する神だ。教皇庁のように至高の存在として見下ろす側にはならない――」
「お嬢様…ご立派になられましたな」 レイヴィエ家に仕える執事、ノーウェンは燕尾服のポケットからハンカチを取り出すと目元を押さえた。
エザリス王国の首都バトリグ。 かつては街道に商隊が行き交い、官僚や貴族が闊歩する華やかな都だった。 しかし今、石造りの壁には新たな落書き...
灼熱の日差しが、アズカー地方の鉱山を照らしつけていた。 荒涼たる大地に吹きつける風は乾いて熱く、中央の華やかな貴族生活とはまるで別世界のよ...
幼いコルゼティは、真冬の冷たい風が吹き荒れる夜、熱に浮かされてベッドに横たわっていた。 頬は真っ赤に染まり、小さな額には冷たい布が置かれて...
「手強かったわね。イズデイル、立てる?」 「ええ、なんとか…」 差し出されたガルフィズの手を取り、イズデイルは立ち上がる。