哀哭の灯台

フィデア皇国で育った少女ロズタロトには、ジョシュアという将来を誓い合った恋人がいた。幼少の頃から一緒に遊び、互いの夢を語り合った二人は、将来結婚し、幸せな家庭を築くことを心に決めていた。

しかしロズタロトは18歳の時に天啓を受け、聖女としての使命が課せられた。聖女となったロズタロトは獣魔と戦うため、故郷を離れることになる。

戦いの中で日々を過ごすロズタロトは、ジョシュアへの想いを心に秘めながらも、国を守るために力を尽くす。しかし、離れて暮らすことで二人の間に少しずつすれ違いが生まれていった。

手紙のやり取りも徐々に途絶え、ロズタロトはジョシュアの心が遠く離れていくのを感じていた。彼女は使命を果たすためには仕方のないことだと自分に言い聞かせていたが、心の奥底では孤独と悲しみが広がってた。

数ヶ月後、二人はついに別れることを決める。ジョシュアは別の女性と出会い、新しい生活を始めることになったからだ。

ロズタロトは深い失意の中でそれを受け入れた。彼女は自分の使命が人々を守ることであり、ジョシュアの幸せを妨げることはできないと悟っていたからだ。

それからの3年間、ロズタロトはひたすらに獣魔との戦いに身を捧げた。傷つき、倒れそうになることもあったが、彼女の心は折れることはなかった。

そんなある日、友人からジョシュアが結婚し、もうすぐ父になるという知らせが届く。ロズタロトは複雑な思いを抱えながらも、ジョシュアが幸せに暮らしていることを知って、胸に温かいものを感じた。

その夜、ロズタロトは静かに海を見つめた。夜の海は黒ぐろとしていて、水面が星の光を反射させていた。

ジョシュアと過ごした日々を思い出し、涙が頬をつたっていく。二人で見た風景、交わした言葉、共に笑った時間すべてが、今も彼女の心に鮮やかに刻まれていた。

ロズタロトは静かに祈る。

彼女の涙は、過去への未練とともに、未来への決意でもあった。彼が家族とともに平和に暮らすために、彼女は戦い続けることを選んだのだ。

灯台の屋根から見下ろす海は、深く、広く、そして穏やかだった。

ロズタロトの瞳からこぼれた大粒の涙は夜の海に溶け込み、やがて消えていった。

NEXT↓

巨獣の降臨
街の広場で大々的な儀式の準備が進められている。 怪しげな祭壇の中央では、フィデア領を統治しているゾルオネ枢機卿が魔法陣を描いていた。 ...

コメント

  1. 匿名 より:

    ひょうひょうとした印象のロズタルトだけどこんな過去があったのか。彼女への見方が変わるお話ですねー。感情移入しやすくなるのですべての聖女の分を書いてほしい。

    • akima より:

      軽薄というか軽いノリなんですが、恋愛面は真面目というか、ちゃんとしてます。
      ただのテキトーなお姉ちゃんじゃないんです笑
      全員分!ありがとうございます、がんばります!

  2. 匿名 より:

    意外と人間味のあるキャラでびっくり