「還れ――闇の棲家へ」
法力を込めた黒い大刀が薄く光を放つ。
ゼルロズはダルガロスの胴体めがけ、大刀で斬り下ろした。
刃は分厚い外皮を裂き、黒い鮮血が舞う。
怒りに燃えた赤い目でダルガロスがゼルロズをにらむ。
大型獣魔にも着実にダメージを与えられるゼルロズの一撃は、リガレア帝国の聖女にとって最も強力な攻撃手段である。
しかし、その威力と引き換えに消費する法力は大きい。
また、斬撃の前後に隙ができるのも弱点といえる。
ゼルロズに向けてダルガロスが鋭く振り上げた鈎爪を、パルゼアが盾で受ける。
鈍い音が灰色の空のもとに響く。
衝撃を抑えきれず、パルゼアは空中にふっ飛ばされた。
「ほらほら、こっちよ!」
ロズタロトが空中を飛び回りながら、連弾を浴びせる。
弾丸は硬い外皮に突き刺さり、小さいながらもダメージを蓄積させていた。
ダルガロスが天に向かって雄叫びをあげる。
「ロズタロトが牽制し、パルゼアが守り、ゼルロズが攻める。シンプルだが有効な戦い方だな」
戦場に到着したゼハインは尖塔の先に立ち、聖女たちの戦いを眺めていた。
その口元にはわずかな笑みが見られる。
「大型獣魔ならまだしも、ダルガロス相手にどこまでもつかな」
ゼハインはバイザーの下で目を細める。
彼女のつぶやき通り、パルゼアたちは圧倒的な力を持つ神獣の化身に徐々に押されつつあった。
三人の聖女は致命傷こそ避けてはいるものの、大小さまざまな傷を負っている。
さらには急激な法力の消費により、疲労は限界に達していた。
「どうする?このままじゃ押し切られるわよ」
「ゼルロズ。私たちが時間を稼ぐ」
「承知」
猛攻をかわしながら短い話し合いを終えた三人は、それぞれが持ち場につく。
近くの屋根に大刀を突き刺すと、ゼルロズは両手を合わせて意識を手のひらに集中させていった。
その姿を目で追うダルガロスの鼻先に、複数の弾丸が突き刺さる。
ロズタロトはダルガロスの攻撃範囲の境界をかすめながら、素早く旋回し、飛び回っていた。
パルゼアは盾をふたつ重ねて、念動力を集中させる。
前足による打撃をすべて盾でいなすつもりなのだ。
触れれば即座に人体をバラバラにしてしまう鈎爪が、風切り音とともに振り回される。
攻撃を引き付けるため、パルゼアは一定の距離を保ちながら獣魔の打撃を弾き、かわしていた。
業を煮やしたダルガロスは大きく息を吸い込むと、後方へあとずさった。
低く身を構え、鋭い牙をむき出しにして力をためる。
膨大な魔力がダルガロスを包んでいる。
まっすぐに突進してくることは一目瞭然だった。
「来るわよ!避けて!」
ロズタロトの叫びは届いていたが、パルゼアはあえて地上に降り立った。
両手を前に突き出し、重ねた盾を空中に固定する。
その背には難民たちを受け入れる施設があった。
まだ全員が避難できていないことを、パルゼアは感応力で理解していた。
獣の喉から発せられた咆哮は、まるで火山の噴火のように激しく、周囲の空気を振動させる。
ダルガロスが凄まじい速度で突進を始めた。
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コメント
ゼルロズやば
バフなしでダメージとおってるやん
そうですね、通常攻撃だけで小型獣魔も倒せます。
リガレア最強の3人をものともしない耐久力とパワーに加えて遠距離攻撃、「3大獣魔最強のグエイジス」より強く見えます。
飛びかかる、尻尾を捉えるなりして地上に引き摺り下ろしたらダルガロスの方が強いのでは。
高高度から熱線の撃ち合いになったら、火竜タイプのグエイジスに分がある。
この様子だとゼルロズも【纏閃】を使えそうですね。
強力なリガレウムを産出する分、硬度を生かした剣・盾・実弾重視になりがちなリガレアでは粒子砲は配備されないのでしょうか?
フィジカル強い系なのでリガレア勢とはかみ合いますかね。
エザリス勢は遠距離多めでしたので…
遠距離はエルゼナグの方が強いです。
近距離もほぼ互角だけどダルガロスの方がちょい上かな、ぐらいの感じで書いています。
ゼルロズは纏閃も使えますし、さらに自分流にアレンジした技も持ってます。
リガレア帝国はリガレウムを活かしたブリッツが多いですね。
神気を集める粒子砲みたいなのもありますが、使う聖女は少なめです。
ピンチですね。
通常攻撃は受けられるとしてもタックルはさすがに・・・
強いバフありなら止められる?
強いバフ効果があっても正面から受け止めきるのは無理ですね。
一瞬ひるませるのが精一杯です。
複数のバッファーが強化を重ねがけする事でバフの効果をより高める事は可能ですか?
ゲームだと同一系統(攻撃+攻撃など)は最も効果が高い一つのみ有効という場合があります。
攻撃が強い一人を皆で強化して攻撃を貫き通す(守り切る)展開も熱いと思います。
基本的には多重バフ可能です!
でも際限なく上がっていくわけではなく、上限がある感じですね。
みんなでバフはゼルロズみたいなボスキラー型の聖女にはぴったりかも。
グエイジスの腕や尾を斬り落としたゼルロズの斬撃を受けても動きが衰えない頑強なボディ、グエイジスの尾を苦も無く止めて微動だにしないパルゼアを吹き飛ばす鈎爪、大型と3大獣魔ではこれ程までに違う物でしたか。(ロズタロト…頑張れ)
今後さらに強力な獣魔の登場により激化する戦闘では、バフの上乗せが必須になりますね。
巨体相手に定番の策として狙撃手を多数配置して目を狙えば攻撃能力を低下させられる可能性はありますが、激しく暴れまわる破壊者にはまず当たらない上、何より気分が悪いので有象無象の小型獣魔戦はともかく重要なボス戦では成功しない作戦でしょう。
とにかくタフな獣魔ですね!
急所を攻撃して一撃必殺しないとずっと回復しながら殴ってくるタイプです。
ロズタロトは相性が悪いですが、敵の体勢を崩したり、は可能です。
狙撃手をたくさん用意する作戦も強力ですね!
ただ、法力の通りはやっぱり近接武器が一番なので、大物は近づいて攻撃しないとダメージが通りにくくなってます。
ゼルロズはモンハンで言うところの大剣みたいな戦い方か。
タメ撃ちして離脱。仲間がそのスキをカバーする。
同じタメがいるなら離れて攻撃できるヴィゾアの方が有利では?
そうですね、もっと機敏ですが一撃離脱型という意味では共通していると思います。
ガードは難しいですけど…ゼルロズだと踏ん張れずにふっ飛ばされてしまいます。
ヴィゾアは離れた場所からタメ撃ちができる、という意味では有利ですが一撃の威力はゼルロズの方が大きく上回ります。
天墜:大型獣魔を一撃で消し飛ばし、3大獣魔のマナグロアさえも全身を包み消滅させる
消滅させる程の威力となると現段階では最強の攻撃手段に思えます。
溜め時間が遥かに長いヴィゾアの天墜 < グエイジスの熱線
射程の優位を考えると、ゼルロズの纏閃は溜めが短い。
厚い外皮を破った傷口に直接法力を叩き込み威力絶大。
ヴィゾアの天墜は長大な法力収束時間を複数の仲間達に守ってもらわなければならず、膨大な消費により戦闘継続不可、2発目は撃てず、距離が離れ過ぎると威力が減衰する、みたいな違いがあるかもです。
天墜は聖女側の攻撃方法としては最高峰ですね。
ただ、マナグロアはリンカージェとの戦いで衰えていたのもあります。
リンカージェの攻撃も法力を宿しているので、マナグロアは再生させることもできない状態で戦いに駆り出されていました。
本調子だったら天墜を避けられたか、直撃しても倒しきれなかった…という違いはあります。
ゼルロズは必中かつ威力大、その代わり敵に近づく必要がある、という技になります。
次回登場予定!
マナグロアの傷が治ってからエザリスを攻めるのは無理なんでしょうか?
リンカージェの法力攻撃で受けた傷だからギレルグルみたいに何年もかかる?
聖女の攻撃なので再生能力を発揮しきれず、再生に時間がかかりますね。
リンカージェはすぐ攻めたかったので構わず突撃した形です。
マナグロアの回復を待たずに襲撃したリンカージェも著しく消耗して本調子ではなかった?
マナグロアも傷が全快すれば従魔術を打ち破るポテンシャルがあったかもしれません。
狂戦士状態のリンカージェに屈服する程切り刻まれた為、耐久力だけでなく攻撃の勢いも衰えていそうですね。
マナグロアvsリンカージェもけっこうな死闘だったので、どちらも疲弊はしていました。
リンカージェは再生できるからまだマシでしたが、マナグロアは本調子とは言えない状態でしたね。
攻撃力も下がっていたので、従魔術の弱点が出てしましました。
更新されてるかと思って来たらまさかのお盆休み!?
すいません、ヘンなところでお盆に入ってしまいました!
また明日から更新がんばります!
ゼルロズは中二病。オレにはわかる。
実はそうなんです!
なぜバレたんだ…
聖女と獣魔のパワー勝負はあつい
でもちょっと無謀すぎんか
どうしても書いてみたかった題材です。
聖女が押し返せるぐらい強いとバランスが崩れちゃうんですけども。
パルゼアは自信あったみたいですね。