「ってぇーーい!いっけええええ!」
ジレミューの叫び声とともに、砲弾が飛んでいく。
白い煙を上げながら突き進み、遠くに霞む巨影に着弾。
オレンジ色の爆炎が確認できた。
「お姉ちゃんもやっちゃって!」
空中に浮かぶダルメザの背中に向けて、ジレミューが言う。
「そだね~。よ、っと!」
黄金に輝く巨大な大砲が火を吹く。
やまなりに飛んでいく砲弾は、またしても神獣に着弾した。
「全然避けないのがまた不気味だね…」
海上要塞の上空では、聖女たちによる遠距離攻撃が開始されていた。
北の果て、ヘウズ侵蝕領域に現れた影。
その巨躯は、腰から上が海面から出ている。
海底深くに封印されていると伝えられた、神獣ガルズレムが今眼の前にいるのだ。
イルザス、ミズハなど各国のシューターたちが集まり、長距離からの攻撃を仕掛けている。
「油断しないでください。相手は神です。この距離でも攻撃を仕掛けてくるかもしれない」
輝く盾を油断なく構え、イズデイルが呼びかける。
ガルズレムの遠距離攻撃に備えて、神器・ルジェラムの天盾を携え、シューターたちの隊に参加しているのだ。
「しかしまあ、こんだけ離れてるんじゃ効いてるのかどうかもわかんないわね」
ピンク色の髪を潮風が撫でる。
ロズタロトはバイザーをずらし、呆れ気味につぶやいた。
「ケッ!ビビりすぎだってんだよ。ちょっと見てきてやるよ」
「あ、ベルナズ!勝手な行動は――」
イズデイルが言い終える前に、ベルナズが飛び出した。
その背をロズタロトが追う。
「聞いてるの? あんた」
「なんだぁ!? 怖えなら、お前も下がってろよ」
振り返りもせずベルナズが飛ぶ。
「ふん、生意気なヤツね」
小さく悪態をつくとロズタロトは速度を上げた。
神獣の姿はどんどん大きくなっていく。
「くっくっ、確かにバカでけえな」
不敵な笑みを浮かべながら、ベルナズは神獣を見上げた。
しかし、その姿は想像を遥かに超える威容だった。
漆黒の甲殻は、長き沈黙を破って浮上した証のように、鈍く、しかし確かに光を反射している。
背に広がる翼は、夜の深淵そのものに感じられた。
星の光を吸い込んだような青紫の膜が、生きた鼓動のように揺らめいている。
巨大な顎には剣のような牙が並んでいる。
大海を揺るがす四肢、禍々しく輝く鉤爪――
その力は、破壊のためではなく、何かを守るために存在していたはずだ。
空を舞う小さな影たちと比べ、その存在はあまりにも圧倒的だった。
ロズタロトは、その威容に言葉を失いながらも、心の中に湧き上がる使命感を強く感じた。
「大して効いていないみたい――ってか、すぐに治っちゃうみたいね」
ガルズレムの左肩から白い煙が立ち昇っている。
ジレミューやダルメザの砲弾による爆発は損傷を与えたが、そのキズが恐ろしいまでのスピードで再生されていく。
「遠すぎて法力が乗ってねーんだろ。手本を見せてやるよ!」
ベルナズは口角を上げて4機の砲型ブリッツを展開させた。
ガルズレムはふたりの聖女には目もくれず、ただゆっくりと浅瀬を進むのみだった。
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コメント
じっとしてるわけない聖女No.1!
そうなんです、神獣と聞いていてもたってもいられず飛んできた人!
これまでも射撃で小さな損傷を無数に与えても再生されてほとんど効いていない。
神獣が相手では1点に集中して撃ち込んでも効くか怪しいが、各々散発的に砲撃。
遠距離からの射撃に法力が乗らない事は実証済みなので、法力が減衰しない有効射程に接近してから攻撃しないと無駄に消耗する。
法力を用いず兵器の火力で様子見という事は流石に無いはず。
速度自慢のベルナズが接近戦に移行したが、今回ばかりは無謀に過ぎる。
「当たらなければどうという事は無い」聖女も回避不能攻撃にさらされる恐れがある。
ほぼ効いてないですね…小型獣魔ならなんとか、なんですが。
そもそも神獣って人間の武器で傷つけられるのか?
というところから調べてる感じですね。
ベルナズの回避率なら…と言いたいところですが、神獣は物理攻撃の速度も神級なので慢心すると退場することに…!
遠すぎて法力が乗ってない。
やっぱりチョクで法力を流さないと再生は止められない。
ベルナズ×ロズタロトが新鮮٩(ˊᗜˋ*)و
遠い分、一方的に攻撃できるようではありますが、法力が乗ってないと回復されちゃうんですよね。
100ダメージ与えたけど90回復、HP1万みたいな。
この二人は書いてみたいなと思ってました☺