禁術の伝授
「だーかーら。俺がオッさんに力を貸してやるって言ってんだよ」 短い赤髪を揺らして、ゼハインが苛立たしげに眉をひそめる。 小さくため息をつ...
「だーかーら。俺がオッさんに力を貸してやるって言ってんだよ」 短い赤髪を揺らして、ゼハインが苛立たしげに眉をひそめる。 小さくため息をつ...
自分の命を脅かす存在であった獣魔を、聖女となった今は一方的に蹂躙できる。 いつしか手段が目的にすり替わっていく。
かつてハーデニー公が治めていた小国。
ギサリオ公国の駐屯地、壊滅―― フィデア城の自室でくつろぐゾルオネ枢機卿の元に、不穏な知らせが届いた。
大陸の南側には、かつて御使いと人間がともに暮らしていたとされている遺跡がいくつか残されている。
リガレア帝国の首都であり、採掘や精錬など鉱業に関係する人々が住まう都市。
「かなりの使い手だな。ま、ただの人間にしちゃ悪くねえ」
「一刀両断ってヤツよ。おめえらにも見せてやりたかったぜ」 兵士長は朝から上機嫌だった。
砂糖と焼けた小麦の甘い香りがする。 14歳になるパルゼアのために、父ウォランドがケーキを焼いてくれたのだ。
水平線に向かって日が落ちていく。 増援の依頼のためにゲイルード海上要塞を訪れたズィーグレが見たものは、巨大な獣魔の影だった。