凶獣の復活

アムネズの一撃により首をはねられた天獣の身体は、ゆっくりと光の粒へと変わっていった。

「ふう……危なかったッスね」
「ああ。手強かった」
ファズニルの手を取りながら立ち上がり、アムネズは消えていく天獣の姿を見送った。

「なあ、ギルゼンス様は天獣がいることを知ってたのかな?」
ズィーグレは納得がいかない様子だった。
天獣は侵入者を排除しようとしたのかもしれない。
だとしたら、なぜか。

思いを巡らせる暇もなく、地下神殿が地鳴りとともに大きく揺れ始めた。

「全員伏せろ! 崩れるぞ」
アムネズは叫びながら砕けた石壁の破片を使って念動防御を試みた。
ドーム状の簡易シールドの中で、三人は崩れゆく地下神殿を眺めることしかできなかった。

「なんだってんだよ、いったい」
「あの天獣、倒しちゃマズかったんじゃないッスか?」
疲れ切ったズィーグレの横顔に目をやりながら、ファズニルがつぶやく。
天獣は獣魔とは違う。
神の眷属である、御使いが遣わした者なのだ。

「かといって、あのまま殺られるわけにもいかないだろう」
頭上から降りしきる瓦礫を念動力で弾きながら、アムネズは天獣の荒々しい突進を思い返す。
いきなり襲いかかってきたのだ。
手加減などできる相手でもなかった。

不意に炸裂する爆音。
三人が身を潜めるほんの数メートル先で、地下から天井に向かって巨大な熱線が噴き上がった。
熱線は石造りの床をあっという間に溶かしていく。
天井をもやすやすと突き破り、暗い地下に太陽の光が差した。

「はあ!? 今のはなんだよ……!?」
思わずそうこぼしたズィーグレだが、同じような熱線を見たことがある。
一部の炎を操る獣魔が放つものだ。
しかしその規模は、ズィーグレが見たどの獣魔のものとも比較にならないほど大きかった。
振動が収まっていく。

熱線によって作られた空へと続く巨大な空洞の中を、黒い影が飛び上がった。
漆黒の身体にいくつもの赤く光る模様が浮き出ている。
影は地下神殿内から一気に空へと飛び立つと、周囲に轟くほどの咆哮をあげた。

「アム姉、あれって、もしかして……」
空を見上げたファズニルの口は、ぽかんと開いたままだった。

「間違いない。三大獣魔の一体、エルゼナグだ」

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永遠の約束
「アムネズが上手くやってくれたみたいね」 ギルゼンスは満足げに微笑んだ。

コメント

  1. 匿名 より:

    続き待ってました!
    ついに登場しましたねエルゼナグが!
    ちなみに何度かコメントしたのですが反映されません・・・
    承認制なんでしょうか?

    • akima より:

      ありがとうございます!
      結構お気に入りの敵キャラなので力が入っております笑
      コメントは承認制になってます!
      pixivからリンクすると海外からすごい数のスパムコメントが来るので…ご了承くださいm(_ _)m

  2. 匿名 より:

    リテブル竜洞で眠っていたマナグロア、天獣の守護で封印されていたエルゼナグ、未だ謎の後一体、3大獣魔といっても格に差がある様に思います。

    • akima より:

      マナグロアがやられたか…
      ククク…やつは三大獣魔の中でも最弱。
      体も1.2倍ぐらいデカいですし、エルゼナグは獣魔の中では最強候補なんです。
      謎の1体も後々登場する予定になってます!