エザリス王国が獣魔の襲撃を受けた日。
ギルゼンスはバイザーを外し、観光客を装ってヴェラム大聖堂の地下に忍び込んだ。
そこから感応力を研ぎ澄ませ、地上で戦うリンカージェの姿を”視”ていた。
リガレウムでできた超重量級の大剣を軽々と扱う念動力。
同時に聖女ふたりを相手にできる感応力。
獣魔の血によって身体能力は強化され、自己の修復能力まで身に着けていた。
「でも、あれじゃダメね」
石造りの浴槽につかりながらギルゼンスは目を閉じた。
窓から入り込んだ月明かりが濡れた肌を照らす。
隣室からは幾人かの男女の寝息が聞こえていた。
獣魔を従えることができる従魔術。
たしかに強力ではあるが、獣魔の制御に要する法力の消耗が激しい。
憑魔術なら————
聖女が獣魔を従えるのではなく、聖女と獣魔を融合させたなら。
余すことなく獣魔の力を得ることができる。
そう考えたギルゼンスは、聖女ゼイシグたちを憑魔術に必要な神器の回収に向かわせた。
あとは獣魔だ。
できるだけ強力な個体が望ましい。
ギルゼンスが目を付けたのは神獣の化身とされるエルゼナグだった。
かつて慧神イオクスの御使いが、地下神殿に封じたという伝説が残っている。
獣魔と融合させる聖女も必要だが、それはなんとでもなる。
「楽しくなりそうだわ」
ギルゼンスはゆっくりと目を開ける。
鮮やかなエメラルドグリーンの瞳が薄闇の中で燦々と輝いていた。
↓NEXT
遺跡の守り手
「こんな所に何があるってんですかね?」
コメント
倫理観を力への欲望で捻じ伏せられると怖い物無しですね。
ギルゼンスに盲目的に心酔する聖女は多いだろうし、本当に楽しそうです。
マナグロア、エルゼナグ、3大獣魔の後一体はグエイジスでしょうか?
念動力という大きな力を手にしたら、なんでも力づくで解決しようとするのではないか…というのが着想ですね。
男性的な考えかもしれません。
ギルゼンスにとっては楽しそうな展開ですが、他の聖女はたまったものじゃないですね笑
グエイジスはノーマル大型獣魔なので、あと1体は現時点では謎なんです!
聖女皇さまのオシリが・・・!
そうなんです!
これはR-15指定ですね!
あーゴーレムみたいなやつはこの話につながってんのか
そうなんです!
アップした時期がかなりずれたのでわかりにくいですが…
”視”ていた
これってどういう意味ですか?
なんで”が付いてんの
目で見ているのではなく、感応力で見るように感知していた、という意味です!
めずらしく聖女の目についての描写がある
いつも目隠ししてるので、ほぼ書くことがないですね笑
お風呂入ってる時ぐらいかな。
獣魔の血で身体強化されたリンカージェの存在、従魔術で獣魔を従えエザリスを襲撃する事を事前に知り得たのは何故か?
↓NEXTに【遺跡の守り手】【深淵の像】回収【朱の彫像】が抜けているので、追加すると連続して読む際スムーズになります。
念動力は髪の編み込みを高速で行ったり、部品点数が多く侍女が必要になる様な複雑な衣装を素早く着込むのに役立ちそうです。
濡れても余分な水気を念動力で弾き落としたり。繊細なメイクも精密性の訓練に向いているかも。
忍び込んだ大聖堂地下はホテルの様に快適そうですね。
森や月を望めるテラスに設置された浴槽、男女で利用できる幅広ベッド。
湯気、蝋燭の明かり、激しい音声を漏らさず閉じ込めるギルゼンスの念動障壁は範囲も効果も規格外!
獣魔と人間の「調和」はギルゼンスにとってとても興味深いテーマなので、リンカージェの動向はチェックしてました。
本人も手下も諜報活動が得意なので。
NEXTの件、ありがとうございます!
これが抜けていると話がわかりにくいですね。
感謝です!
念動力はいろいろと便利なので、聖女も法力なしでは生きられなくなってると思います。
人は便利なものにはすぐ慣れてしまいますよね。
大聖堂地下はホテルほどは快適じゃないかな?
この話は場所を書いてないですが、ギルゼンスの住処のひとつです。