紺碧の巨龍

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リンカージェは、洞窟の中を歩いていた。

外の光は、とうに消えている。

濡れた岩肌。

足元を流れる冷たい水。

どこからともなく響く滴の音。

空気は重く、深かった。

息をするたび、石と湿り気の匂いが肺へ沈んでいく。

正直、来るべきではなかったと思っている。

三度くらい、引き返そうと思った。

いや、本当はもっとだ。

父の言葉を思い出す。

――命を落とす。

その通りかもしれない。

父が半信半疑だった記録を信じて、こんな場所まで来てしまった。

馬鹿だと思う。

それでも……どうしても頭から離れなかった。

獣魔を従えた聖女の記録。

もし、本当にできるなら――自分に強大な力があれば。

王国の過ちを、正せるかもしれない。

そんな考えが、一度胸に生まれてしまった。

どうしても、消えなかった。

リンカージェは立ち止まる。

背後で、静かに黄金が揺れた。

四本の宝剣。

持ち出す時、少しだけ迷った。

倉庫の奥で、白い布に包まれて眠っていた剣。

触れた瞬間、まるで待っていたかのように浮かび上がった。

洞窟の奥へ進むと、やがて空気が変わった。

冷たいけれど、どこか重い。

胸の奥へ直接圧し掛かってくるような感覚。

リンカージェは立ち止まった。

その時だった。

低い音が響く。

呼吸、いや違う。

もっと深い。

岩そのものが、眠りながら鳴っているような音だった。

暗闇の奥。

岩壁だと思っていたものが、ゆっくり動いた。

巨大だった。

長い胴。

深い青の鱗。

洞窟を満たすほどの質量。

閉じられていた瞳が、ゆっくりと開く。

深海のような青だった。

その視線が、リンカージェへ落ちる。

全身が固まる。

逃げろ――本能が言った。

駄目だ。

人が向き合っていいものではない。

紺碧の巨龍・宝剣

巨体がゆっくり動く。

石が砕け、洞窟が震える。

リンカージェは恐怖で喉を鳴らした。

それでも、一歩だけ前へ出る。

「……マナグロア」

声がかすれた。

父の記録にあった名前。

巨大な獣魔は答えない。

ただ、じっと見ている。

リンカージェは震える呼吸を整えた。

怖い――怖いけれど。

逃げたくなかった。

「少しだけ」

声が小さく揺れる。

「話を聞いてほしいの」

沈黙。

次の瞬間だった。

洞窟を裂くような咆哮。

青白い雷が、暗闇を埋め尽くした。

リンカージェの身体が反射的に動く。

黄金の剣が飛ぶ。

雷と刃がぶつかり、洞窟が震えた。

甘かった。

話し合えるかもしれないなんて。

巨体が迫ると同時に、尾が空気を裂く。

速い。

ありえない速度。

目で追えるものではなかった。

リンカージェは飛び退く。

岩壁が砕けた。

一撃で、人間など消える。

母が目隠しをして戦った理由を肌で感じていた。

見てからでは遅い。

リンカージェは目を閉じ、周囲へと感覚を研ぎ澄ませた。

「っ――!」

迫る爪を避けながら、宝剣を走らせる。

金の刃が青い外皮を裂く。

浅い。

傷はついた。

だが、浅すぎる。

マナグロアの瞳が変わる。

怒りだった。

雷が爆ぜる。

衝撃とともに、視界が白く弾けた。

身体が吹き飛ぶ。

岩へ叩きつけられる。

肺から空気が抜けた。

背中が熱い。

動けない――

呼吸がうまくできない。

黄金の剣が二本、地へ落ちる。

残りも軌道が乱れていた。

巨体が近づく。

ゆっくり、確実に。

終わりを告げるように。

リンカージェは動こうとした。

怖い。

死ぬ。

いま、ここで。

こんなところで――

母にも、父にも。

何も言わずに。

巨大な爪が持ち上がる。

その時だった。

胸の奥で、大きな鼓動が鳴った。

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従魔の契約
熱い。 傷口が熱を持つ。 焼けるような熱。 それなのに、どこか冷たい。

コメント

  1. 聖剣の目隠し乙女 より:

    「敵マナグロアHP10万 攻撃SSS。 従魔マナグロアHP9999 攻撃力S…!?
    仲間になった途端に弱くなる現象、どうにかならないものかしら。」
    いつの日かリンカージェが仲間に加わった時には、果たして…?
    ゾルフレッド「勇敢なる人の子よ、我が一団に歓迎しよう」
    アズトラ「貴女が正そうと為す行いは、私達も見てきました」
    イオクス「心身の調和を取り戻した其方なら、真に討つべき敵を見極める事も出来よう」
    ゼハイン「ちなみに4人パーティーだ。戦力はインフレしているから、リンカージェは馬車で待機していてくれ」
    馬車の中ではマナグロアとエルゼナグ、ダルガロス等が膝を抱えていた。

    • akima より:

      馬車で待機笑
      そのメンバーだと出番はなさそうですね。
      敵だった時は強いのに、味方になると弱くなるのはあるある…
      特にHPはガクっと下がります。
      ゲームのシステム上、仕方ないかもしれないですがなんかモヤりますよね!

  2. 聖剣の目隠し乙女 より:

    ポニーテールのリンカージェはゼタリリアが若い頃にそっくりですね。
    聖女紹介ゼタリリアの立ち絵だと帽子もあって違う姿に見えていました。
    【境界の死闘】白いゼタリリアに対し、衣装とバイザーを黒くして対比になる姿が良いです。

    • akima より:

      そうですね、実は若き日のゼタリリアに似てます。
      バイザーは対照的な色合いになってます。
      そこまで見てもらえて嬉しい笑

  3. 聖剣の目隠し乙女 より:

    こんなにも死に物狂いで無念を晴らそうとしていたのに、第二、第三の復讐、雪辱戦が描かれなかった事がいささか物足りなくもあります。
    「私が秩序となる」キャラ紹介の割に信条が変化する描写もなく、案外あっさり引き下がった様な。
    あまり敵対し過ぎてもエザリス勢に受け入れられなくなる、加減の難しさ。

    • akima より:

      思ったよりエザリスの聖女たちが手強かったのもありますね。
      あと暴走モードを使うと何人かは倒せてもその後が危険だったり…
      戦闘能力は高いんですが、さすがに複数人をなぎ倒せるほどのパワーはない、という感じで書いております。

  4. 聖剣の目隠し乙女 より:

    実際に効果があるか不明な術をいきなり最強クラスの獣魔相手に試してしまうリンカージェ。
    最初は小型獣魔を探して実験し、次は中型と考えそうなもの。
    王国を混乱させるなら手数が多い方が陽動になりそうだが、従えられる獣魔は一体限りか、あるいは獣魔の総数が増えると術者の負荷が大きいのだろうか。

    • akima より:

      国家を相手にできるほどの獣魔を従えたかった、という思いですね。
      練習無しでいきなりぶっつけ本番…
      そのあたりも聖女全員に通ずる万能感みたいなものからきてたり。
      複数の獣魔を従えるのは厳しいですね!