紺碧の巨龍

リテブル竜洞の奥深く。
神獣の化身とされ、三大獣魔に数えられるマナグロアは強い法力を感知して永い眠りから醒めた。

「お前がマナグロアか」
金色の髪を後ろに束ねた少女—
リンカージェが洞窟の奥からゆっくりと近づいてくる。
右手を掲げると、空中に薄っすらと魔法陣が浮かび上がった。
「わたしに従ってもらう」

マナグロアは鎌首をもたげ、咆哮をあげた。
周囲の空気がビリビリと震える。
人間の女が従魔術を仕掛けている。
つまり、力を示して自分を従えようとしているのだ。
長らく忘れていた怒りの感情が蘇る。
この傲慢な人間の女を引き裂かねば、この怒りはおさまらない。
マナグロアの全身に電撃が走った瞬間、それは渦となって周囲に広がった。

リンカージェは電撃の渦をかわしながら、巨大な獣魔の力を見定めていた。
エザリス王国の聖女たちは手強い。
圧倒的な法力を持つリンカージェですら、単独で制圧することはかなわないだろう。
従魔術でマナグロアをけしかけることで混乱を作り出し、その隙に教皇庁の司教たちを皆殺しにする。
それを成し遂げるためには、複数の聖女たちと渡り合える、強い獣魔の存在が必要不可欠なのだ。

降りしきる電撃の合間に、リンカージェは4本の大剣型ブリッツによる斬撃を繰り出す。
黄金に輝く刃はマナグロアの硬い外皮を斬り裂き、黒い血が舞った。

しかし回避から攻撃に転じた一瞬の隙をマナグロアは見逃さない。
金属で作られたかのごとく硬く重い尾が、リンカージェの華奢な体をとらえた。
岩壁に叩きつけられ、吐血しながら膝をつく。
間髪をいれずに放たれた電撃が彼女を貫いた。
巨体が迫る。

マナグロアがとどめの一撃を加えようと近づいたその時。
リンカージェが低くうめいた。
獣のような唸り声が続く。
黒いバイザーの下から赤い光がもれ出ていた。

全身から煙を上げ、激しく咆えながら立ち上がる。
強烈な戦意に呼応するように浮遊する、4本の大剣。
内に眠る獣魔の血が覚醒したのだ。

リンカージェが意識を取り戻した時、すでに勝敗は決していた。
おびただしい傷と鮮血におおわれた両者。
その傷は急速に修復され、薄い煙をあげていた。
マナグロアは地面に横たわると、青く輝く目を静かに閉じた。
ふたたび魔法陣が空中に浮かび、リンカージェが詠唱を始める。
特殊な印を結ぶことで、従魔の契約が結ばれようとしていた。

少女は歪んだ笑みを浮かべた。
復讐の時は、もうすぐそこまで迫っている。

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従魔の契約
「リンカージェの名において命ずる」

コメント

  1. 聖剣の目隠し乙女 より:

    「敵マナグロアHP10万 攻撃SSS。 従魔マナグロアHP9999 攻撃力S…!?
    仲間になった途端に弱くなる現象、どうにかならないものかしら。」
    いつの日かリンカージェが仲間に加わった時には、果たして…?
    ゾルフレッド「勇敢なる人の子よ、我が一団に歓迎しよう」
    アズトラ「貴女が正そうと為す行いは、私達も見てきました」
    イオクス「心身の調和を取り戻した其方なら、真に討つべき敵を見極める事も出来よう」
    ゼハイン「ちなみに4人パーティーだ。戦力はインフレしているから、リンカージェは馬車で待機していてくれ」
    馬車の中ではマナグロアとエルゼナグ、ダルガロス等が膝を抱えていた。

    • akima より:

      馬車で待機笑
      そのメンバーだと出番はなさそうですね。
      敵だった時は強いのに、味方になると弱くなるのはあるある…
      特にHPはガクっと下がります。
      ゲームのシステム上、仕方ないかもしれないですがなんかモヤりますよね!

  2. 聖剣の目隠し乙女 より:

    ポニーテールのリンカージェはゼタリリアが若い頃にそっくりですね。
    聖女紹介ゼタリリアの立ち絵だと帽子もあって違う姿に見えていました。
    【境界の死闘】白いゼタリリアに対し、衣装とバイザーを黒くして対比になる姿が良いです。

    • akima より:

      そうですね、実は若き日のゼタリリアに似てます。
      バイザーは対照的な色合いになってます。
      そこまで見てもらえて嬉しい笑