熱い。
傷口が熱を持つ。
焼けるような熱。
それなのに、どこか冷たい。
リンカージェは息を呑んだ。
傷が――塞がっている。
ゆっくりと、薄い蒸気をあげながら少しずつ。
裂けた皮膚が動き、血が止まる。
壊れたはずの身体が、ありえない速度でつながっていく。
怖い――これを知っている。
母を救ったもの。
獣魔による再生。
もう一度大きな鼓動が鳴った。
今度は、もっと身体の奥深く。
何かが目覚める。
――壊せ。
内なる声。
マナグロアが爪を振り下ろす、その瞬間。
ひとりでにリンカージェの身体が動いた。
雷が弾け、黄金の剣が唸る。
洞窟が揺れる。
咆哮と、崩れる岩。
血と、耐えがたいほどの熱。
何かが壊れる音と引き裂く音。
雷鳴が大気を裂いた。
そして、突然静かになった。
リンカージェがゆっくりと目を開けた時、戦いは終わっていた。
肩で息をする。
身体中が痛い。
それでも立てる。
洞窟は崩れかけていた。
岩肌には深い傷、焦げた地面。
そして、目の前にマナグロアがいた。
巨大な頭を静かに下げて、伏していた。
リンカージェは息を止める。
意味が分からなかった。
逃げず襲わず、ただ、待っている。
ふと父の記録を思い出した。
リンカージェは、震える手を持ち上げた。
空中に印を描く。
巨大な青い瞳が、静かに細められる。
その瞬間だった。
心臓の奥へ、何かが流れ込んできた。
雷の音、怒り、孤独。
そして静かな承認。
リンカージェは息を呑み、即座に理解した。
この獣魔はすでに、自分の敵ではないのだと。
巨大な影が、彼女の後ろへ静かに伏した。
リンカージェは地面にひざを立て、手のひらを掲げる。

少しだけ。
母の静かな眼差しと、父の微笑みを思い出した。
――もう何も、失わせはしない。
破滅の鼓動はそのままに、聖女は小さく息を吸う。
「リンカージェの名において命ずる」
その声は静かだが、確かな決意が秘められていた。
「――エザリス王国を滅ぼせ」
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コメント
リンカージェが従魔術を使えるようになったいきさつとか明らかになるんですかね
そうですね、誰に習ったか、は3章で明らかになります!
情報が少ない初期は禁術を文献等から学んだと考えていました。
(ヴェイダル博士の膨大な蔵書の中に禁術関連も含まれていたと想像)
ギルゼンスの憑魔術もゼハイン経由で得たという事?
術自体はそれほど難しくないのですが、憑魔術はアイテム、降魔術は儀式が必要になります。
ヴェイダル博士なら禁術についても知識はありますね。
ギルゼンスとゼハインは…どこかで交差するかな?
契約と共にマナグロアの意識を迎え入れたリンカージェは雷光を使える様になる?
エルゼナグと融合したギルゼンスは人の身で炎を発し操る。
発電器官を持たないリンカージェがマナグロアとの繋がりにより、聖魔の素養が電気の扱いを身に着ける。
「大剣の縁に獣の雷光が絡んでいる。もはやそれは、ただの聖女の力ではなかった。」
電撃使えるようになると強いですね~リンカージェ。
パワー押しにも限界があるので、何かしらの攻め手を増やしたいところです。
一応デンキウナギみたいに発電器官があるマナグロアさん笑