🌐 Language / 言語
🇺🇸 [English Edition]
🇯🇵 [日本語版]
数日前。
夕暮れの海。
空は赤く、波は静かだった。
それなのに潮風に混じって、焦げたにおいがする。
海面が、ぶくぶくと泡立っていた。
まるで海の底で、巨大な何かが呼吸しているように。
少女が、海の上に浮かんでいる。
目元を覆う布には、繊細な模様が浮かび上がっていた。
長い金髪が風に揺れる。
――ゼタリリア。
それが少女の名前だった。
ひとりだった。
静かな海の上。
来るべきものを待っていた。
海が、大きく揺れた。
次の瞬間、海面が爆ぜる。
巨大な影が飛び出した。

赤熱した瞳。
四足の身体。
黒く硬そうな外皮。
熱気と咆哮。
怪物だった。
巨大な爪が海を裂く。
海水が蒸発し、白い蒸気が上がった。
その時。
四本の剣が、空へ浮いた。
音もなく。
まるで意思があるように。
少女の身体が、ゆっくり浮かび上がった。
金色の刀身を輝かせながら、ただ怪物へ向かって飛ぶ。
巨大な爪が振り下ろされた。
速い。
だが、ゼタリリアは半歩だけ身体をずらした。
それだけで避ける。
剣が走る。
黄金の軌跡。
怪物の肩が裂ける。
黒い血が海へ散っていく。
咆哮で海が揺れる。
もう一撃。
今度は尾、次に牙。
目隠しをしているのに、すべて躱していく。
怪物の攻撃は当たらない。
まるで、先に動きを知っていたかのように。
怪物が怒り狂う。
海面を砕きながら暴れる。
熱気が漏れる。
だが、ゼタリリアは冷静だった。
静かに避け、斬りつける。
――勝てる。
そう思い始めていた。
その時。
怪物の喉奥が、赤く光った。
まずい。
そう思った瞬間に炎が来た。
轟音と、熱。
世界が白く弾ける。
遅れて、何かが崩れる音がした。
ゼタリリアは、自分の右腕を見た。
肘から先が、崩れた。
黒く焼けた右腕は、炭のようにひび割れ、海風に触れるたび、ぼろぼろと砕けて落ちていく。
――腕が、ない。
数秒遅れて理解した。
痛みは、まだ来ない。
ただ、自分の身体ではないような、奇妙な感覚だけがあった。
怪物が吠える。
逃がさない。
そう言っているような目だった。
ゼタリリアは呼吸を整える。
右腕がなくても。
剣は、まだ動く。
――戦える。
恐怖より先に、そう判断した。
斬り、避け、また斬る。
炎をかわす。
その繰り返しの中で、違和感に気づいた。
頭は硬い。
だが、喉元だけが違う。
怪物は、そこを守っている。
――そこが弱点ね。
ゼタリリアは空中で身体をひねった。
一本の剣を先に放つ。
怪物が腕を上げた、その瞬間。
三本の黄金の剣が、喉へ突き刺さった。
絶叫。
海が震える。
決まった――そう思った。
次の瞬間だった。
巨大な腕が迫る。
速い。
避けきれない。
衝撃。
左腕と、両脚。
身体が、握り潰された。
骨が砕ける音が、自分の内側から響く。
「あ――」
息が止まる。
遅れて、悲鳴が漏れる。
「ああああああああ!!」
痛い。
息ができない。
動けない。
怪物の巨大な指が、左腕と脚を押し潰していた。
喉奥が赤く光る。
炎。
終わりだ。
逃げられない。
四肢の感覚は、もうほとんどない。
それなら。
ゼタリリアは、自分の潰れた左腕を見る。
――動かないなら。
黄金の剣が走った。
血飛沫。
自分の腕と一緒に、怪物の指が飛ぶ。
続いて脚。
海へ血が散った。
怪物の目が、わずかに揺れる。
四肢を失った少女が。
それでも、前へ飛び込んで来たからだ。
炎が吐かれる、その直前。
ゼタリリアは落ちるように懐へ潜り込む。
喉元。
剣が走る。
一度、二度と――何度も。
深く、外皮を裂き、骨を断つ。
怪物が絶叫した。
海が震える。
やがて巨大な身体が、ゆっくりと傾いた。
海へと、空を覆うように倒れていく。
――終わった。
力が抜ける。
黄金の剣とともに、ゼタリリアの身体も海へ落ちていく。
沈む夕日が見えた。
波音が遠い。
静かだった。
小さく息を吐く。
――やり遂げた。
小さな達成感だけを胸に、ゼタリリアは静かに目を閉じた。
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コメント
読む順番としてはこの記事が一番最初でいいんでしょうか
そうですね、メインのストーリーはここから始まります!
初めてコメントします。
メカクシをした聖女というのが面白い設定で楽しませてもらっています。
渋で見つけて一気に読ませていただきました。
続きも楽しみにしています。
ありがとうございます!
テミス像が有名ですが、目隠しをした女神像というモチーフは結構多いですね。
国内だとあんまり見かけませんが…
ピクシブきっかけで興味を持っていただけたんですね。
続きも張り切って書きます!
ようやくストーリーが繋がりましたね。
通して読むと圧巻です。
四肢を失う重傷を負いながら、ゼタリリアは良く戦いましたね。
義肢を得てからの彼女の平穏を願いたいものです。
気になった情景をパラパラと投下していたのですが、流石に読みにくいなと…
連続して話がつながるようにリンクしてみました。
ゼタリリアは比較的穏やかに暮らせている方なんですが、一発目の勝負が厳しすぎました!
ゲートニクは大型の獣魔に入るのですか?だとしたら訓練もなしでいきなり相打ちに持ち込めたゼタリリアが有能すぎる(女神の剣も強いんでしょうけど)
そうですね。
大型なので聖女単体で倒すのは非常に難しい獣魔です。
ただ、ご指摘どおりアズトラの宝剣が獣魔に対して非常に強い力を発揮できる武器なので、なんとか相打ちに持っていけたというところです。
あと、ゼタリリアも聖女の中では相当上位に来る実力者ですね。
ゼタリリアって聖女の中で何番目ぐらいに強いんですか?ベスト5に入りますか?
ベスト5には入るかどうか微妙なところですね。
10には入ると思われます。
第一章をすべて読ませてもらいました。時系列がわからないのですがゼタリリアがはじめて獣魔を倒してから20年ぐらいたったのでしょうか?娘であるリンカージェが18歳ぐらいだとするとそのぐらいなのかと。
コメントありがとうございます!
確かにわかりにくいですね。
境界の死闘から2年後ぐらいにリンカージェが生まれて、14年後に天啓、その2年後に獣魔の血が覚醒。
そこから動き出すので18~19年ぐらい経過したことになります。
またわかりやすくまとめたいと思いますm(_ _)m
最近渋のアカやけにアクセス増えてませんか?
そういえば…
多い時だと3000ぐらいありますね。
海外の閲覧者が多いみたいですよ。
でもpixivの数字って合ってるんですかね?
Pixivからのアクセスとか分かるものなのですか?
投稿主の方はともかく、第3者から履歴を確認する項目は無い様に見受けられます。
アカウント全体のアクセス数はわからないと思います。
個別の投稿に対するアクセスは第三者でも確認できますので、そのことかな、と。
小説かー漫画だったらなーと思いましたが思いのほか読みやすくて助かってます。明日から休みなので最新話まで一気読みしますねー
ありがとうございます!
まあまあ文字数があるのでまたお手すきの時にでも。
ゼタリリアは物語の中でも重要ポジですよね?
もっと掘り下げた方がいいんじゃないですか。
戦う羽目になった理由4行しかないんだけど。
そうですね、第一話に相当する部分なので回想シーンが続くと退屈かなと判断しました。
またゼタリリアの過去に興味を持ってもらえた人向けに過去編を書いてみます。
目隠しをした美少女のひじが消し炭になるところから始まる物語ってなんなんだよ!?ニ章まで読み進めましたが上の方と同様に人数が多い割に掘り下げが少なく感じます。テンポがわるくなるということを気にされていますがそれなら登場させる聖女を少なくするとか。だれかひとりに主人公をすえて物語を進めるほうがわかりやすさはあると思いますよ。
どこから始まるねんみたいなお話がけっこう好きでして…
まあそれにしてもですよね笑
それぞれの掘り下げについてはもう少し必要だと感じております。
各聖女ごとのサイドストーリーを一話分ぐらいはないと、なかなか感情移入しづらいかなと。
主人公をリンカージェに決めて、教皇庁に復讐する話…でもいいのですが、他にも書きたいお話というか場面がいっぱいありまして。
少しずつ登場したキャラクターたちが後に絡み合っていく、みたいなお話が書きたくて今の形になっています。
読む側としてわかりやすくなるよう、もう少しサイドストーリーなどで補完していきます。
ご意見ありがとうございましたm(_ _)m
ゲートニグ討伐に当たり、宝剣・バイザー・法衣を用意したのは教皇庁ですよね。
美的センスに優れる一方で、背中が大きく開き、お尻を満足に隠しきれていない衣装を着せる。
獣魔襲来をあらかじめ知っていて周到に準備したのか。
聖女用防具をデザインから完成まで大至急行った職人衆が優秀なのか。
全然守れていない気がしますが…
職人の趣味なのかもしれない!
でもゼタリリアも気に入って来てたはずです、きっと。
なのでヨシ!
メインは整理されてる?ようですがサブの物語というか寄り道がたくさんあるようで読みづらいです。いくつか読んでみた感想なのですがいつの時代の話なのかがわからん。獣魔と聖女が登場したころからエザリスが襲撃されるまでが二十年ぐらい空いてるけれどその後は比較的最近の話?
ご意見ありがとうございます!
設定資料というか、メインの話とはまた別の細かい設定なんかも記事にしているのでわかりづらいのだと思います。
とりあえずメインストーリーを読んでいただければ、だいたいこんな話かーというのはわかってもらえる…はず!
その後、「○○ってどうなってるの?」という細かい補足みたいなものをサブストーリーにアップしたりしています。
お時間あればそちらも読んでいただけると嬉しいです。
時系列は
神話の時代
→
獣魔と聖女が登場(プロローグ)
→
18年後、リンカージェがエザリス襲撃(一章)
→
ギルゼンスがエルゼナグ復活をもくろむ(二章)
→
ゾルオネ枢機卿が反乱を起こす(三章)
といった感じになってます!
いやそうではなくて建物とか国とかの設定の話が細かく散らばっているけどどう読めばいいのかわからないという話です。サイドストーリーもどの章に関係する話なのか??
そういうことですね。
建物・国とかのカテゴリは聖女BLITZの舞台を説明するものになってます。
聖女の日常なども世界観を補完するものですね。
なので、メインを読んでいただいてまだ読めそうならサブストーリー、もっと世界観を見てもらえるなら建物や国についてのカテゴリも見ていただけると嬉しいです。
時系列やどの章に絡む話なのかは、また今後整理していきたいと思います!
ある程度読み進めてから戻ってくると相当無茶なことやってるなという感想になります。ゲートニグは大型獣魔とあるので普通なら聖女単独ではどうにもならないわけで。神器と呼ばれる武器を使っていたことを考慮しても上々の戦果と言える。個人的には彼女の次に天啓を受けた聖女が気になります。二番目の聖女も獣魔と戦うことになったのでしょうか。今も生きているのか?
一線級の聖女でも一対一では厳しすぎますね。
アズトラの宝剣があってこその善戦ですが…それでも相打ちでした。
ヴェイダル博士が通りかかってくれなければそのまま、でしたし。
二番目の聖女についても書こうと思ってます!
読み出しを見ると「あれ?これが一話であってるのかな?」と不安なるw
読み飛ばしたように見えるかもしれません笑
でもこれが1話なんです!あってます!
はじめまして。今日から少しずつ読み進めていきます。上でも書かれていますがはじめてこのサイトに来た人向けに案内ページを作るといいかなと思いました。現状は新着記事が大きく表示されているようです。
ありがとうございます!
ご指摘いただきました通り、ちょっとわかりにくい形になっておりまして。
はじめての方向けの案内ページやあらすじもまとめたいと思います。
ここから順番に読んでいくのはわかったんですがキャラストーリーというのは読む前提なんですか?キャラストーリーが行き止まりになっている気がするんですが読んだら引き返して読み進めるのでしょうか。
キャラストーリーは読まなくても先に進めるようになっております。
本筋には大きく関わりません。
「この聖女ってどんなキャラなんだろう?」と思った時に補足で読める感じになっております。
お世話になってます(笑)
軽い気持ちで読み始めたら壮絶なスタート(笑)
GWに少しずつ読ませてもらいますね!
大変お世話になっておりますm(_ _)m
いいね・リポストは気軽にやるタイプなのでお気になさらず。
長いのでご無理なく☺
よくイラストをアップされている銀髪・褐色娘は出てこないのでしょうか…?
第一章の最後からニ章で出てきます!
ギルゼンスという聖女です。
ニ章では特に主役級で、その後もちょいちょい出てききて悪さしてます笑
Glockパワーでプチバズってましたねw
少しずつ読んでいこうと思ってます
思ったより長い!!!
ありがとうございます☺
知っていただくきっかけが作れてよかったです。
そうなんですよね、小説で7章まで読んでくれってちょっと重たいですよね…
やっぱ漫画にしてみたいなあ。
絵を眺めているだけだったのですが今日から読み進めています。最初からけっこうエグい話なんですね…でもお盆休みを利用して追いつきたいと思ってます。またコメントします。
新規イラストだけ見るとザクネルが決断力と人格を備えた、人の上に立つ立派な人物であるかの様に見えます。
初戦に揺れるゼタリリアを支え導く真剣な面持ちの裏では、初心な少女を誑し込む下心が舌舐め擦りしていそうな大司教。
四肢を損壊し退場していなければ、リズレウの様に利用される未来が待っていた?
ザクネルは人格者っぽい面もあるにはあるのですが、余裕がなくなるとすぐ悪い方向に傾いてしまいます。
孤児など貧窮している女性につけこむところがあるので、比較的余裕のあるゼタリリアは利用されていなかったかもしれません。
なんとなくうさんくささもこの時点で感じてますし笑
ゲートニグがコワすぎる(笑)格好いいけど獣魔がちょっとリアルすぎるかな~
ちょっとイカツイですよね~笑
洋ゲーっぽいというか、このあたりもう少し工夫が必要です。
セルシェーディング、とか入れてみようかな。