教皇庁の使い

後にリガレア帝国領となる小さな村で、ヴェイダル博士は聖女ゼタリリアとともに静かな時間を過ごしていた。

義肢の操作にも慣れ、日常にも支障をきたさなくなったころ、教皇庁の使いを名乗る一団が村を訪れる。

彼らの要望はアズトラの宝剣をエザリスに返すことだった。

「あなたはあの戦いの場に居合わせたのでしょう。では宝剣の行方も知っているはず。あれは我らエザリスの国宝なのです」

まず気遣うべきは彼女の安否ではないのか————

ヴェイダルは拳を握りしめた。
彼はエザリス王国に対して、ゼタリリアの回復状況を記した信書を送っている。

それなのに労いの一言もない。
彼女のことを捨て駒としか考えていないのか。
自分たちの代わりに少女を戦わせたことに対して、罪の意識すら持っていない様子だ。

「お引取り願えますか。貴方たちに話すことはありません」
「……大変なことになりますぞ、ヴェイダル殿。これは国家間の問題に発展するだろう」

使者は捨て台詞を吐く。
しかし、彼が再びエザリスの土を踏むことは無かった。

帰路で大型獣魔の襲撃に遭い、船とともに海の藻屑となったのだ。

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聖魔の天啓
時は経ち、聖女ゼタリリアとヴェイダル博士の間に生まれた娘———— リンカージェと名付けられた彼女もまた、14歳で天啓を受けた。

コメント

  1. 匿名 より:

    この大型獣魔はもしかしてグエイジスくん・・・??

    • akima より:

      どうでしょう、大型獣魔も種類がありますので…
      グエイジスくんがネタ枠になっているような。

  2. 匿名 より:

    海路で来たんでしょうか。獣魔がひしめいている世界で船に乗るのは勇気がいりますねー

  3. 聖剣の目隠し乙女 より:

    大型獣魔さん良い仕事しましたね。

    第二の巨大獣魔現る!俄かに信じがたい急報を受け、首都バトリグに激震が奔った。
    教皇庁の使いを名乗る一団が聖女ゼタリリアに詰め寄る。
    『聖女様!どうか我ら聖職者を!! …ゴホン。 どうか罪無き善良な民を、無辜なる全ての人々をお救い下さい』
    ヴェイダル「手足を失い瀕死の重傷から立ち直ったばかりのゼタリリアは、とても戦える状態ではありません。
    彼女は、もう十二分以上にその役目を果たし終えました。どうかお引き取りを」
    使者『神に身を捧げ奉仕する事こそ、全ての信徒の義務であり喜び。
    聖女は栄誉ある役目を授けられた事に感謝するべき立場。
    教皇庁より下された神の言葉に従うのは、当然ではありませんかな?』

    自らの発言を神の権威と言わんばかりの使者達に、言い知れない怒りと吐き気を覚える。
    その後、ゼタリリアの身を案じたヴェイダルは彼女と共に姿を消した。

    • akima より:

      教皇庁の人間は自分たちのことしか考えてないんですよね。
      ゼタリリアのことよりアズトラの宝剣のことばかりで。
      大型獣魔はたまたま居合わせたのか、誰かがけしかけたのか…