オーゾレス亡き後、リガレア帝国に不穏な空気が漂っていた。
力によって抑え込まれていた矛盾が、せきを切ったように表面化している。街角では民衆の不満の声が聞こえ、役人たちは右往左往するばかりで有効な手を打てずにいた。
明らかに内政が行き届いていない。
教育に土木、社会福祉、通信や運輸。挙げればきりがない。オーゾレスの治世では、これらすべてが個人の意志と力によってのみ維持されていた。だが今、その支柱を失った帝国は、まるで設計図のない建物のように、あちこちで軋みを上げている。
首都の大通りには、かつての活気はない。商人たちは先行きの不安を口にし、学び舎では教師が足りず、橋や道路の補修は滞り、病に倒れた者への手当ても十分に行き届かない。遠方の町村との連絡は途絶えがちで、物資の輸送も混乱していた。
皮肉にも、オーゾレスの死によって統治に必要なものが浮かび上がった。
一人の権力者が全てを決定し、全てを管理する。それは確かに迅速で効率的だったかもしれない。しかし、その人物が失われた時、残されるのは巨大な空洞だけだった。
パルゼアは帝国の現状を知るため、バトリグの街を歩いていた。秋の陽光が石畳を照らし、枯れ葉が舞い散る中を行く彼女の表情は、どこか物思いにふけっている。
「力ですべてをねじ伏せる――それだけでは到底、争いのない世界など作れない。そういうことか」
風が秋の気配を漂わせていた。それはどこか寂しげでありながら、同時に新しい季節への希望も運んでくるようだった。
オーゾレスが求めた理想の世界。それは確かに歪んだ夢だったかもしれない。だが、真の平和とは一人の意志で築かれるものではなく、多くの人々の協力と理解の上に育まれるものなのだ。
帝国の再建は困難を極めるだろう。しかし、その過程で人々が学ぶことは多い。権力に頼らない統治の在り方、民衆の声に耳を傾ける政治、そして互いを支え合う共同体の大切さ。
パルゼアは歩き続ける。聖女帝として、この混乱の中にあって、人々に寄り添い、新しい秩序の構築を支援するために。
風に舞う落ち葉が、変化の時代の到来を静かに告げていた。
強者の支配から、人々の協調へ。
真の平和への道は、今ようやく始まったばかりなのだ。
コメント
激闘を通じてパルゼアの心にも変化が・・・
これでお父さんの死を乗りこえたと言えるんじゃないでしょうか
結局力がないと何もできないじゃないか、という気持ちは残っていると思います。
ただまあ、それだけでも上手く行かないのが人の世…!
お父さんへの気持ちには踏ん切りがついたかもしれません。
予想以上にオーゾレス頼みだった件。。パルゼアは政治とか興味なさそうではある。
オーゾレスに任せていた感じですね。
パルゼアは聖女を率いて国を守る、ということに専念していました。
オーゾレスが傑出して優秀だったにせよ、個人が治世の全てを賄うのは無理がある。
教師が足りない<現場で教鞭を執っていた?流石に時間が足りない。
オーゾレスは気に入っているキャラで、天才があらゆる概念を創り出し全てを決定する物語は好みなものの、貧しく無学な少女が専門分野を極め、独力で牽引する事は不可能としか思えない。
科学者・技術・軍事…優れた巨大企業は各分野に独自のルートを築いて成長する。
先進的な文明が広がっている帝国が指導者一人の死で仕組みが崩壊するとは考えにくい。
それともザルビエ社やラムゼイ社の様な摩天楼が続く光景は極僅かで、聖女達の過去編で描写される中世と近世が入り混じった様な環境が大半とか。
否定的な言葉ばかりで、すみません。
オーゾレスが実際に教師をしていたわけじゃなくて、教育分野を任されていたということですね。
内政を個人が取り仕切っていた例は歴史的にも珍しくないと思います。
オーゾレスは学はないものの人心掌握術に長けていて、それぞれの専門分野の人々の意見をまとめつつ、リガレア帝国の内政を取り仕切っていたという感じですね。
リガレアが帝国として統一する以前はフィデア、ギサリオ等、小国毎に政治や生産システムが存在していた。
ゾルオネの人格はともかく、枢機卿は権力相応に有能でないと務まらない。
建国までの混乱で犠牲が出たとしても、ゾルオネを生かして政治を任せた事から、宰相やそれなりに仕事ができる官吏が機能しているはず。
オーゾレスがシステムを構築した訳ではなく専門家に詳細を任せていたなら、時間はかかるにせよ仕組みを引き継ぐ事は可能なのでは。
決定権と責任の所在が不明になった事――パルゼアでは政治的判断が追い付かず、他の内政官に適切な権限が割り振られていない為、遅滞が長引く。
元小国に監視役として聖女を領主に任命し、ある程度の自治を任せるのが応急処置になるだろうか。
行政知識が無い聖女がゼロから組み上げるのではなく、ゾルオネを続投させる辺り既存の統治システムを概ねそのまま流用している節がある。
それぞれの橋渡しを上手く行えるまとめ役を見出せるかが課題。
パルゼア自ら政治に関心を持って良い統治者になりそうではある。
てっきりNanobanana沼に浸かって出てこれないのかと(笑)
リガレアは良い国になっていきそう
まだハマりこんで出てこれませんね☺
表情差分が作れるので
口を閉じている絵、開けている絵を交互に表示してアニメっぽくできないか…
とか、いろいろ試しています!
リガレアは今後、もう少し独裁から民主主義に寄っていくとは思います。