ファズニルのバフ効果を受けながら、アムネズは関節を狙って攻撃を繰り返していた。
手応えはある。
しかし、いずれもエルゼナグの進撃を止めるには至らなかった。
肩を上下させながらユゼルテスは呼吸を整える。
彼女が放った打撃もまた、エルゼナグに大きなダメージを与えていた。
かぎ爪や尾を振り回す動作に陰りが見える。
戦い始めたころに比べて、明らかに動きが鈍っていた。
しかし――
それ以上に聖女たちの消耗は激しかった。
大小さまざまな傷を負い、疲労は限界に近い。
このままではエルゼナグを倒す前に全員の法力が尽きてしまうだろう。
「おい、金髪!」
横薙ぎの打撃をくらわせながらユゼルテスが叫ぶ。
「なんだテメエ、偉そうに!」
吐き出される火炎を避けながらベルナズが応じた。
「このままじゃ埒が明かない。お前のスピードなら熱線も避けられるか?」
「あぁ? まあ、距離があればな」
ベルナズは荒い呼吸を繰り返しながら、エルゼナグの赤い目をバイザー越しに睨んだ。
至近距離で撃たれたなら避けることは難しい。
ただし、エルゼナグの熱線は凄まじい威力を誇る代償として、撃つ前に溜めがある。
周囲の神気を取り込む必要があるのだ。
(そういう意味じゃヴィゾアの天堕に似てるな)
ベルナズは獣魔マナグロアを打ち倒した聖女王の横顔を思い出す。
今回の勝手な行動を知られたら、こっぴどく叱られるだろう。
無事に帰れたら、の話だが。
火球を念動力でそらし、アムネズが手首を斬り裂いた。
赤黒い血が噴き出す。
それでもエルゼナグの猛攻は止まらない。
アムネズの法力も尽きかけようとしていた。
突然、ベルナズが後方へと飛んだ。
その姿をエルゼナグが目で追う。
再びその両眼に宿る炎が燃え盛った。
エルゼナグは再び体をそらすと、大きく息を吸い込んだ。
体内で変換された魔力が喉の奥で光を放つ。
すべてを焼き尽くす高エネルギーが凝集されていく。
「ファズニル! 全力でバフれ!」
2機の槌型ブリッツを背に、ユゼルテスがエルゼナグの頭部に向かって飛翔する。
「りょーかいッス! まかせて!」
ファズニルが杖を構えた。
警戒に返事をしたものの、法力を使用しすぎた影響で目と耳から出血している。
ベルナズに向かって熱線が吐き出されようとした、その瞬間。
鉄槌が唸りをあげてエルゼナグの顎に向かって振り上げられた。
ぐしゃり、と骨が砕ける音がする。
大きく開けられた口が閉じられ、牙の間から光が漏れた。
「おおぉぉぉおおおおお!!!」
雄叫びとともにユゼルテスは念動力を振り絞り、もう1機の鉄槌でエルゼナグの眉間を叩いた。
ちょうど上下から挟み込む形で直撃した槌が、激しい金属音を響かせる。
行き場を失った熱線が、エルゼナグの口内で大爆発を起こした。
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コメント
熱線を吐き出す瞬間に上下から挟んで爆発。
相手の最大の武器を逆手に取ったわけですか。
ユゼルテスは力押しするくせに頭いいんですねぇ。
強すぎるが故にパワー押しにはなってますが、本人は結構クールに戦況を分析してますね。
そういうことしなくても勝てる例が多すぎたがゆえの自信なんです。
今まで登場した聖女の中でユゼルテスってどのぐらいの強さなんでしょうか。
ヴィゾアの必殺技が当たったらエルゼナクも倒せますか。
ユゼルテスは対大型獣魔の近接アタッカーという意味では最強クラスになります。
でも小型~中型ならアムネズの方が得意ですね。
ヴィゾアの天堕が直撃したら…
エルゼナグのHPが7割ぐらい減る感じです。
かなりのダメージになりますけど、当てるのはかなりムズイです。
ユゼルテス強いですね……やったか!?
足止め・(撤退・会議)➤総力戦と思っていたら、少数先遣隊だけで倒してしまいそうな勢いです。
大型獣魔戦に特化しているというのもあって、かなり強く見えると思います。
実際かなりの実力者なんですけども。
一線級の聖女が3名+ファズニルなので三大獣魔ともギリ渡り合える感じですね。
ベルナズとユゼルテスは噛み合わなさそうなのに連携できているのがよきです。国が違う聖女でも共闘することがあるんだ。
ベルナズは偉そうにされるとキレるのですが、ユゼルテスの戦いぶりに一目置いてるので記事内ぐらいのやり取りになりました。
所属する国が違う聖女が協力する場面もあります。
ゲイルード海上要塞では3国の聖女たちが協力して獣魔を迎撃しております。
そのあたりのお話も書きたいと思っていますので、良かったら見てみてくださいね!
アタッカーが二人バファーが一人シューターが一人
これで押し切れるならディフェンダーはいらないでしょうか。
(大型獣魔の攻撃は盾では防げないとしたら中型獣魔までしか通用しない?)
その場合ディフェンダーが不遇職な気がしてしまいます。
小型~中型獣魔が複数体登場した時も範囲攻撃ができる大砲型のシューターが一掃してしまえば防ぐ必要もありません。
リンカージェのような聖女が相手ならディフェンダーが攻撃を引きつけて他の聖女が攻撃するという分業もできるのかな。
ディフェンダーがいればもっとダメージを抑えられました。
熱線は防御できないですが、火球や尻尾、引っかき攻撃はある程度守れます。
一発防御するたびに数十メートルふっ飛ばされるんですけどね。
小型は範囲攻撃できるシューターで対応できます。
中型ぐらいになると範囲攻撃だけでは倒せないので個別に戦う必要があり、獣魔の攻撃を惹きつける役としてディフェンダーが活躍できます。
どちらかというと中型~大型獣魔との戦いで輝ける職ですね。
今回はヴァルネイ共和国のディフェンダーが出払っているので、アムネズたちだけで応戦しています。
ディフェンダーは味方をかばって被害を軽減するイメージですが、マナグロア戦でもディフェンダーは後ろに守る者も無く吹っ飛ばされたり防げない攻撃があったりと、弾除けの頭数を増やしているだけに見えてしまい、見せ方の難しさを感じます。
攻撃や支援に専念して回避が間に合わない仲間を守り切って踏み止まる描写を度々描かれるとディフェンダーの重要性を実感できるのですが。
アタッカーやシューターから大ダメージを負わされると、獣魔は攻撃担当を脅威と認識してディフェンダーには目もくれない可能性があります。
獣魔は大量に法力を込めたBLITZ以外では打ち抜けず、攻撃時は大きな隙が生じて回避が犠牲になる、状況だと高速で仲間をかばうディフェンダーが輝けるのですが。
私も火力で押し切ってしまるならタンクはいらない子に見えてしまいます。
ディフェンダーは確かに難しいですね。
あまり強くしすぎるとディフェンダーで抱えて遠距離からシューターで撃てば良い、という形になってしまいますし。
攻撃・速度に優れたアタッカーとバッファーで速攻を仕掛けるのは強力ではあるんですが、それだけでは倒せない獣魔もいます。
あと実はディフェンダーがあまり活躍しないのは第3章への布石だったりもします。
ではヴィゾアの天堕とエルゼナグのビームはどっちが強いですか
うーん、エルゼナグの熱線の方が威力が上です。
ため時間もヴィゾアの方が遥かに長いです。
アムネズやユゼルテスの必殺技に名前はついてないのでしょうか
あります!
話を進めることを優先して割愛しております。
第一章、シューター
第二章、アタッカー
第三章、ディフェンダー
活躍する職業?がかぶらないように書いていると予想。
パルゼアの登場が楽しみです。
ヴィゾアやベルナズがシューター
ユゼルテスやアムネズはアタッカー
と活躍する聖女の職分がバラけるようには意識しています。
アタッカーは花形というか、前衛なのでいつも活躍するんですけどね。
とりあえず主がアークナイツ好きなのはわかった。
大好きな作品です!
職分に対しての有利不利を考える時によく思い出しますね。
サローザの意識がベルナズに釘付けになって大きな隙を生じた事がエルゼナグの致命的な敗因に繋がったように思います。
当初は聖女を取り込んだ事でパワーアップ(熱線が……曲がる!?)を危惧していましたが、対弾丸防御など念動力を使う気配も無く融合が不利に働いた印象を受けます。
混ぜ物無しのエルゼナグ単独だったら勝機を見出せず、初戦で倒せなかったのでは?
そうですね~意識の引っ張り合いも良くなかった感じです。
誰が主導権を持つんだ、みたいな。
いずれはそれぞれの持ち味を活かしてパワーアップできたかもしれません。
融合してすぐ奇襲したのが功を奏した形ですね。
エルゼナグだけだったら倒せなかったか、倒せたけど聖女側も大半が死亡、となっていたかも。
エルゼナグのビームが口の中で爆発したのが勝因ということは獣魔のビームは獣魔に有効ということ。でも法力?がないからすぐ治るのかな
獣魔の熱線は獣魔にも有効です!
再生はするのですが、エルゼナグの熱線は威力がデカすぎてすぐには治らない…というか致命傷ですね。
体内で意識の引っ張り合いがなかったらユゼルテスの技は避けられていたかも。
エルゼナグ+ギルセンス+サローザ3身合体の結果、さながら船頭多くして船山に上る状態、3者足して3で割った様に弱くなってしまった。
フュージョン弱(ジャック)!
(Jフォーム:強化形態、のはずが強敵の圧倒的強さを見せつける負けバトルの噛ませ犬に使われる。その後、通常形態で果敢に挑み勝利)
もともとエルゼナグが最強格の獣魔なので、その力をコントロールできたら…
ってことで実験的に憑魔術を使ったのですが、予想に反してギルゼンスも巻き込まれて…
と予期せぬ事態に陥ってしまいました。
そこをユゼルテスたちが強襲してエルゼナグが融合に慣れる前に仕留めた形ですね。
フュージョン弱はpixiv百科事典で見てみたら、そんなに弱そうなことは書いてなかったですが…イマイチだったんでしょうか笑