地下をどれほど降っただろうか。
アムネズたちは中央に祭壇が設けられた広間にたどり着いた。
「なーんか怪しいとこに着いちゃいましたね」
ファズニルが周囲に感応力をめぐらせながら、広間の中央に向かって歩きだす。
獣魔の気配はない。
「ま、なんか出てきてもこれだけ広ければ蜂の巣にできるけどな」
石壁に触れながらズィーグレが言う。
彼女のブリッツはかなりの大型で、狭い場所での戦いには適していない。
アムネズは入り口とは逆方向を調べていたが、地下へと続く階段らしきものは見つからなかった。
おそらく、ここが地下神殿の最奥なのだろう。
「じゃあ、このいかにもって感じの祭壇を調べますか」
ファズニルが石造りの簡素な祭壇に近づく。
獣魔のような姿が彫られた天板にファズニルの手が触れた瞬間————
空中に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
「うわっなにっ? びっくりした!」
「ファズニル、離れろ。戦闘準備だ」
ただならぬ空気を察知したアムネズは二振りの刃型ブリッツを展開させた。
閃光が瞬く。
広間が白く染まった。
光の向こうからゆっくりと、獣の姿が浮かび上がる。
「おいおい、冗談だろ? あの姿……天獣かよ!」
弾丸を装填しながらズィーグレがつぶやく。
おとぎ話で聞いたことしかない、黄金に輝く獣。
神や御使いが地上に遣わすとされる空想上の生物————のはずだった。
咆哮が広間を駆け巡る。
発光は徐々に収まり、鎧に覆われた狼のような姿があらわになった。
家屋ほどの巨体を震わせると、輝く両眼をアムネズに向ける。
天獣は体を屈めた。
来る————!
疾風のごとき突進。
天獣は屈めた体をバネのように開放し、凄まじい速度で体当たりを繰り出した。
アムネズは間一髪で空中に逃れ、刃を振り下ろす。
激しい金属音。
ツツヤミガネで作られた漆黒の刃は黄金の鎧に弾かれた。
「いきなりかよ、この!」
宙空からズィーグレが機関銃型のブリッツを撃ちまくる。
ファズニルの念動力によってさらに加速された弾丸は、天獣の毛皮を貫き、浅い傷を作った。
傷口からはモヤのように輝く気体が漏れている。
「生き物じゃないんスね、このワンちゃん。獣魔みたいに修復はしないみたいッスよ!」
天獣の体全体に感応力を巡らし、ファズニルは叫んだ。
「攻撃が通るなら倒せるはずだ」
アムネズが側面から斬撃を叩き込む。
切っ先が鎧の隙間から天獣を斬り裂いた。
しかしほぼ同時に、鋭い前足の爪が横薙ぎに放たれる。
かわし切れず、刃で防御したアムネズが壁際まで吹っ飛ばされた。
「くっ……!」
起き上がろうとするアムネズに向かって、天獣はふたたび体を屈めた。
「させるかよ!」
両者の間に割り込み、ズィーグレは連続で銃弾を見舞う。
天獣は弾丸を振り払うように体を震わせた。
いくつかの銃弾は鎧の間から毛皮を突き破ったが、大したダメージになっていないようだ。
炎や電撃を使うわけではない。
ただし攻撃・耐久力・速度、いずれも大型獣魔と同等か、それ以上だった。
アムネズは口角をわずかに上げて微笑んだ。
相手にとって不足はない。
磨き上げた技をいかんなく発揮できる時が来たのだ。
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コメント
一話に挿絵二枚だと・・・!?
つい力が入ってしまいました笑
「血が出るなら殺せるはずだ」
まさしくソレです笑
天獣かっけー
切っても撃っても全然こたえないんですね
やっぱり近距離パワー型は強いんだ
あと「ツツヤミガネ」にもリンクした方がいいのでは?
効いてはいるんですが、動きを止められるほどのダメージはないですね
タフなんです
搦手とか遠距離攻撃はしないけど強い、みたいなの書いてみたかったんです
ご提案ありがとうございます!
リンクしておきますね
武器の材質までリンクしたら念動力とかブリッツにもってなりません?
Wikipedia状態w
うーん、ウィキペディアみたいにするのもいいかな、と思ったんですがどうでしょうか。
リンクだらけだと読みづらいかな。
固有名詞をクリックすると聖女各人のページに飛ばずに、キャラが参加している物語一覧へ移動する状態なので、先ずは参加聖女を確認し易い様に改善できればと。
タグによるリンクですよね。
こちらも法則を決めて、もう少し回遊しやすい形にしたいと思います!
もしかして祭壇の画像差し替えました?こっちの方が絵柄が統一されていていいと思いました。
ハイ、実は替えました!
タッチが全然違ったので読み直している時に気になって…