🌐 Language / 言語
🇺🇸 [English Edition]
🇯🇵 [日本語版]
砂糖と焼きたての小麦が甘く香る。
「今日のは特によく焼けたよ」
父はそう言って笑った。
丸いケーキに生クリームを塗り、色鮮やかな果物をひとつずつ丁寧に並べていく。
その手つきは、まるで宝物を扱うように優しかった。
「ありがとう、父さん」
十四歳になったパルゼアは、完成間近のケーキを眺めながら微笑む。
ふと、父の口元に残る青あざが目に入った。
「……まだ痛む?」
「少しだけね」
父は照れくさそうに笑った。
「心配しなくていい」
戦争は終わっていた。
それでも街には占領軍が残り、人々の争いは絶えなかった。
父は菓子職人だった。
悲しむ人に甘い菓子を届ければ、少しでも笑顔になれる。
そんなことを本気で信じている人だった。
「みんなが、少しだけ優しくなれたらいいんだけどね」
そう言ってクリームを絞る横顔は穏やかだった。
「父さんは、本当に人が好きなんだね」
「そうだな」
父は迷いなく答えた。
「争いだって、ちゃんと話せば分かり合えるはずだよ」
その言葉を聞くたび、パルゼアは父を誇らしく思っていた。
やがてケーキが完成する。
「おめでとう」
父は嬉しそうに拍手した。
その笑顔が、パルゼアは大好きだった。
翌朝。
父は一枚の書状を胸にしまった。
「街の人たちと一緒に、お願いに行ってくるよ」
「お願い?」
「自治を認めてもらえないか、話してくるんだ」
「大丈夫なの?」
「心配ないよ」
父は笑う。
「話せばきっと分かってくれる」
その言葉を残し、家を出て行った。
それが最後だった。

――夕方。
冷たい雨が降り始めた頃、玄関が激しく叩かれる。
血まみれの男が立っていた。
肩で息をしながら、麻袋を抱えている。
「……すまない」
震える声だった。
袋が床へ置かれる。
赤黒く染まった布。
その中から、父の顔が見えた。
「……え」
頭が理解を拒んだ。
男は膝をつき、何度も頭を下げる。
「止められなかった……」
「どうして……?」
返事は涙に途切れた。
父は最後まで話し合おうとしていた。
暴動を止める代わりに、街に自治を認めてほしい。
ただ、それだけを伝えたかった。
だが相手は話を聞こうともしなかった。
暴力でねじ伏せられた。
それでも父は立ち上がった。
最後まで、人を信じ続けた。
そして――殺された。
パルゼアは父の亡骸にしがみついた。
何度呼んでも返事はない。
涙が止まらない。
甘い香りだけが、静かな部屋に漂っている。
父は間違っていなかった。
誰よりも優しく、誰よりも正しかった。
だからこそ、守られなかった。
その日、パルゼアは悟った。
優しさだけでは、人は守れない。
理想を貫くには、それを押し通す力が必要なのだと。
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コメント
新章きたか!からの安定の鬱展開・・・
父の友人は上半身だけ背負って帰ってきたのね
いきなり重たい過去で恐縮です。
でもこの経験が後のパルゼアの意思の強さになり、念動力にも影響してくるので描いてみました。
父の友人は一回家に帰って袋に入れてからパルゼアの家に行った形です。
宗教の腐敗
マインドコントロール
民族紛争←new!!
目隠しフェチ向けのライトファンタジーだと思ったら感情ぐちゃぐちゃにされました
宗教の、というか組織が腐敗している形を書いてみたかったのがあります。
小さい権力を振り回す系ですね。
内容はシンプルなんですけど、ちょっと重たい話が多いかな…。
ギサリオ人とフィデア人はなんで仲悪いんですか
まず、2国をつなぐ大運河の交易でギサリオが発展したという背景があります。
その後、ギサリオがどんどん栄えて軍事力を強化していきました。
フィデアからするとそれが面白くなかった感じですね。
天啓を受ける前のパルゼアはただの無力な少女だったわけですか。リガレア帝国の聖女って髪の色が赤ピンク黒だからそれぞれが出身地によって分かれてるのかなと思ったり。
そうですね、普通の女の子でした。
髪の色に関してはご明察の通りで、赤がギサリオ、ピンクがフィデアです。
序盤に固有名詞が多いと読みづらいかな、と思いまして今後書いていく予定です。
リガレア帝国って最近建国されたばかりということになりますよね。パルゼアって政治もできてるのかな。それとも法王みたいな優秀な腹心がいるということか。
そうです!
聖女になってからのパルゼアが作ったので出来たばかりの帝国です。
法王みたいな人はいないですが、聖女たちが分業で担当してます。
パルゼアはもっぱら軍事担当。
甘いものが好きなのはお父さんの影響なんだね…
大切な思い出なんです。
BLITZが現代科学と同等以上のハイテク兵器に見える一方で、文明・文化水準は中世時代をベースとしている様に見受けられます。
フィデアの暴虐は某宗教が改宗しない者は悪魔なので何をしても構わない、と奴隷化して売却した歴史上の事実を連想します。(改宗を強いて鞭打ちを続けた跡が深々と残る鉄杭の世界遺産のページは現在削除されています)
博愛や生命・多様性の尊重といった美辞麗句の暴走で正常な自然淘汰が機能しなくなり、人口に到底足りない資源を取り合い、汚染を拡大、自ら首を絞めている現代を鑑みるに、生かすべきを生かし殺すべきを殺す中世ダークファンタジーは読み物として痛快な物があります。
スマホとかはないですね笑
中世よりはもう少し発展しているイメージです。
フィデアの人々は無意識化で他の国の人々を差別している感じですね。
もう生まれつき下に見ているせいで、自分たちも気づいてないというか。
パルゼアの父、ルジエリの父、ヴェイダル博士等、父親系の登場人物には善良な人が多いですね。ここに歪みと狂気を加えると…
パルゼアの父「我々の話を聞いてくれ!」
フィデア兵「下がれ!ステテコパンツにシルクハットが民族衣装などと抜かしているギサリオ人とは聞く耳持たぬわ!」
パパぜあ「何故このセンスが分からぬ?覆面マントにパンツ一丁のフィデア人こそ、変態ルックではないか」
ノルディズ「おやっさん、常連のアタシにはそろそろダンディな素顔を見せてくれても良いんじゃないか?」
ルジエリ父「荒くれマスクに革の腰巻のダンディズムが分かるとは、嬢ちゃんも大人になったな」
ギサリオ人の民族衣装とは笑
パルゼア、ルジエリのお父さんは狂気薄めですね。
戦乱の世にかよわい女性として生まれて無力感を感じていたところに、いきなり神に選ばれて超常の力を得る
みたいな体験をしていないので比較的常識人ぽい感じなんです。
戦乱の世にかよわい女性として転生、神より超常の力を与えられたリアリスト戦闘狂ターニャ・デグレチャフ(幼女戦記)と似た物を感じます。
傑出した技術力・軍事力を持つリガレアはドイツのイメージがあります。
名作と噂の幼女戦記ですね!
いつの世も子どもや女性が犠牲になってしまう…のですが、聖女BLITZはそこをくつがえしたい!
リガレア帝国はたしかにドイツを意識してるかもしれません。
個人主義が強いイメージがありますね。
内容がソフトになってる!?
ギサリオやフィデアなどの国の名前もどっかいきましたがいつか説明はあるんでしょうか??
凄惨すぎるシーンはもう少し抑えてみました。
兵士長もちょっと露悪的すぎるかな…と思ったり。
国の名前もなくても話が進められるから、今はいいかなと。
サブストーリーで出していこうと思ってます!