「お~? オッサン元気じゃん」
ヴェラム大聖堂前で住民の避難誘導を行なっていた聖女ウェレジアは、走り寄る赤い影に気づいた。
老婆に手を貸しながら聖女ガルフィズも振り向く。
「ザクネル様。ご無事で……え?」
赤いローブをまとった大司教ザクネルの背を、見慣れない聖女が追っているように見える。
その半身は返り血で濡れていた。
「ヤバそうなのに追われてんね」
ウェレジアは気だるげに壁に立てかけていた盾を引き寄せる。
どうにも気が進まなかった。
ザクネルの偽善者じみた言動が好きになれないのだが、かといってアズトラ教の大司教を見殺しにもできない。
「行くわよ!」
黒い大剣を携え、ガルフィズは飛び出す。
きっと彼女も良くは思っていないのだろう。
それでも助けるか否かの判断に自分の気持ちを含めない。
いかにも正義を愛するガルフィズらしい行動だった。
甲高い金属音とともに、黒と金の大剣が空中でぶつかりあった。
さらに放たれた金の大剣を、ウェレジアの盾が弾く。
――重っ!
4本も同時に扱うにしては、1本が重すぎる。
それだけで謎の聖女が尋常ではない法力を持つことが理解できた。
「ふん、飯食ってんのか?」
虚勢を張りながら降り注ぐ刃を盾で払いのける。
ウェレジアは、たったこれだけの攻防で汗をかいている自分に気づき、動揺していた。
ガルフィズの黒い大剣がうなりをあげて空を斬り裂く。
重量では聖魔リンカージェの大剣に勝るが、彼女が操るのは1本だけだ。
ウェレジアとの二人がかりでなければ、一分も持たなかっただろう。
それほどにリンカージェの力は突出していた。
襲撃を知らせる鐘はまだ止まない。
轟音をあげながら空に電撃が走る。
永遠の平和が約束された国と称えられたエザリス王国は、今まさに存亡の危機にさらされていた。
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コメント
おっさん爆走してて草
聖女ってもっといっぱいいるんじゃなかったっけ?
囲んでしまえばいいのでは??
命がけの爆走です!
エザリス王国お聖女は首都バトリグ、その他の主要都市、ゲイルード海上要塞、など数か所に配置されてます。
その辺り説明不足なので補足の記事もアップしますね。
ありがとうございます!
おっさんやっぱり嫌われてるんか
エザリスのモデルってバチカン?
エザリスの聖女はみんな胡散くささに気づいてるんですが、布教などの面で実績はあるので司教として扱ってる感じですね。
モデルはバチカン市国ではなくて、ギリシャ神話なんです。
ウェレジアはいいキャラしてますねー
精神的に凹むと思念が弱まってブリッツの操作にも影響する
だから強がる
こういうの好きです
二章以降にも登場して欲しいな
聖女は心のあり方がそのまま戦力につながりますので、メンタルはタフであるに越したことはないですね。
熱いほうが勝ちます。
登場させたい聖女がいっぱいいるので迷います笑
リンカージェなら聖女二人ぐらいすぐ倒せそうなんですがこの時はまだ本気を出してないんですかね
一人ずつならすぐ倒せますが、二人一気に相手するとなると手こずりますね。
それでも獣魔の力を使えば蹴散らせますが、そもそもリンカージェの標的は聖女じゃないのでまだ本気じゃないというのもあります。