色とりどりの宝石が神気を集め動力源としての輝きを放つ。
魔導巨兵の駆動方法を応用した技術により、少数ではあるがリガレア帝国には空を飛ぶ乗り物『魔導翼船』が実現していた。
木製プロペラが静かに回転する。
機体の骨組みはしなやかな木材、外板には薄い合金が貼られている。
エンジン音は驚くほど静かで、低い駆動音だけが聞こえた。
「この魔導翼船もお手本となるモノがあったって話なのよ。その方が簡単に作れるじゃない♪」
薄いピンク色の髪を肩の辺りで切りそろえた聖女――コルディザが諭すように言う。
「それはわかったんだけどさ」
憮然とした表情のまま、ルジエリは腕を組んだ。
「本当に神器なんてあるの?」
「今から行くヴァトリヤの戦塚には、ルジェラムが使った盾が眠っている――という伝説があるわ」
操縦席から振り返らずにマルジナが言った。
長い黒髪が風にそよぐ。
コルディザ、ルジエリ、マルジナの3人はパルゼアの命により、神器を求めて戦塚へと向かっていた。
「ふふ、楽しいわね♪ 女三人、気兼ねせずに空を漫遊だなんて。ちょっとした旅行気分」
コルディザは小さなカバンの中から水筒を取り出す。
ふたを開けると強い酒のにおいが船内に充満した。
「ちょっとちょっと! 飲む気?」
「ん? ああ、あなたも飲む?」
呆れるルジエリをよそに、コルディザは水筒を差し出す。
「そうじゃなくて! 遊びじゃないんだってば」
「んふふ、硬いわね、ルジエリ♡ でもそういうのも嫌いじゃないの」
「な、なんの話してるの…」
「まあまあ♪ 最初はみんなそうなのよ。大丈夫、私にまかせて」
コルディザはするりとルジエリの肩に手を回す。
その動きはやけに滑らかで、自然だった。
「あのねぇ…」
操縦席からマルジナのため息がもれる。
神器を求める以上、行く先には何があるかはわからない。
腕の立つ聖女が必要だ。
ただし、情勢を見る限り貴重な戦力である聖女をやすやすと国外に送るわけにはいかない。
できるだけ少人数で任務をこなすには、攻撃・防御どちらもこなせるコルディザが適任だった。
それはわかる。
「あなたたちも『そういう仲』なんでしょ? ピンと来たのよ♪ 私も混ぜてみない? きっと楽しいわよ」
「なんなのよこの女、話が通じないよ!」
頬ずりしようとするコルディザを、ルジエリは両手で突き放そうとしていた。
しかしコルディザは念動力を駆使して体ごとすり寄せてくる。
「不安だわ…いろいろ」
マルジナのつぶやきは紺碧の空へ、淡く溶けて消えていった。