「ここで間違いないわ」
丘に着陸させた魔導翼船から降りたマルジナは、バイザーをずらして目を細めた。
ヴァトリヤの戦塚は古びた石碑が無数に並ぶ丘陵地だった。
苔むした大地には風が一筋通り抜け、まるで英霊たちのささやきのように耳をくすぐる。
空は曇天。
淡い陽が差し込むだけで音ひとつない。
全てが沈黙を守る、厳かなる終焉の地だ。
「ずいぶん遠くまで来たわね♪ 魔導翼船がなかったら来れないわ~、こんなとこ」
コルディザが大きく伸びをする。
広いとは言えない船内で長時間過ごしたせいか、体の節々が痛むようだ。
「いかにもって場所だね」
船から降りるとルジエリは大剣型のブリッツを2機、音もなく展開させた。
強い神気があたりに立ちこめている。
丘の中央には、他の塚とは異なる威容を誇るひときわ大きな戦塚がそびえていた。
石の棺は割れ目から淡く光を放ち、緑の輝きが霧の中ににじんでいる。
その光は呼吸をするように脈打ち、まるで中に眠る神器が目覚めを待っているかのようだった。
「ルジェラムの天盾が眠っているのはあの塚ね。ただ、すんなり手に入るわけは――」
マルジナが言い終える前に、どこかで金属が擦れるような音がする。
空気が震えた。
「――上!来るよ!」
ルジエリの声と同時に、曇り空から巨大な影が滑るように舞い降りる。
それは全長10メートルを超える異形の鳥だった。
体を覆うのは羽毛だけでなく、金属質の鎧のような装甲。
青く輝く目は冷たく、まるで測量機のように三人をとらえている。
「へえ~これってもしかして天獣ってやつ?」
「そうみたいだね。神器を守ってるってことか」
コルディザの問いに、ルジエリがつぶやくように応える。
感応力を働かせ、怪鳥の姿をトレースする。
「あの姿は…天獣ケルゼオン。神話の中でしか見たことがないけど」
杖型のブリッツを掲げ、マルジナは戦闘態勢を取る。
羽ばたきひとつで、大広間に爆風が巻き起こる。
散らばっていた瓦礫が一斉に宙を舞う。
「ハデな歓迎ね~♪」
コルディザは盾を前に突き出し、身を低くして風を受け止めた。
ケルゼオンは空中で羽ばたきながら、3人の聖女を睨めつける。
その眼が青く点滅した。
次の瞬間、金属翼から射出された無数の羽弾が、音もなく一直線に飛んでくる。
「私の後ろに」
コルディザが2人の前に立ち、盾を構える。
盾で弾ききれなかった羽弾は、槍型のブリッツではたき落とす。
「ルジエリ!」
攻撃が止んだ瞬間、マルジナが杖を掲げた。
付与されたバフ効果により、ルジエリの全身が薄っすらと光を帯びる。
地面を蹴り、高速で飛行するルジエリの放った大剣が、ケルゼオンに迫る。
しかし、奇怪な鳴き声とともにケルゼオンは羽ばたきで風を起こし、大剣の軌道を変えた。
「あらら~遠距離攻撃は効きが悪そうね。近づいてズップリいくしかないわ」
軽妙に言いながら、コルディザは唇を舐めた。
薄っすらと浮かべた笑みに、自身は気づいていないようだった。
コメント
ケルゼオンのデザインかっこええな
良い感じに生成できました笑
鳥系、結構多いですね
長距離移動中に獣魔と遭遇しなかった事は僥倖。
獣魔の群れに狙われたら、魔導翼船が被弾しない様に守り切る事は難しい。
あるいは獣魔では到達できない高度を飛行してきたのか。
辺境で魔導翼船が大破したら…。
生体と外殻が融合した姿がワンダと巨像を連想してロマンを掻き立てられる。
羽弾…飛ばした羽が突き刺さる羽手裏剣の様な?
マルジナのバフが乗ったルジエリの大剣をもそらす羽ばたきが強力。
発言・表情から好戦的な一面が覗くコルディザは次回、アタッカーの様に振舞うのだろうか。
移動中に会ってたらやばいですね!
一応空は飛べる人たちばっかりではありますが…
帰るのが大変です。
バフありのルジエリでも通りが悪いので、接近戦に持ち込むしかない!
というわけで、コルディザ先輩の出番です!
ヴァトリヤは神様の名前?
それとも地名かな
ヴァトリヤは地名ですね!
地方の名前です!
大型獣魔ぐらいの強さはあるみたいですね。
同等か少し強いとか?
ケルゼオンは大型獣魔ほどタフではないです。
その分、機動力が高い!