遠距離からは羽ばたきによる風と、羽弾。
近距離では鋭いくちばしとカギ爪。
距離に応じて攻撃を切り替えるケルゼオンに対し、ルジエリたちは劣勢を強いられていた。
「このままじゃ勝てないよ」
「だよね～。私もそう思うわ」
羽弾を盾で弾きながら、コルディザが言う。
念動力を使える聖女にとって、空中を飛ぶ相手と戦うことは不利ではない。
ただし、相手が巨体に似合わない速度を持っている場合は別だ。
迫りくるカギ爪を盾で横薙ぎに弾くと、コルディザは槍をケルゼオンの胴体に突き刺す。
だが、浅い。
「あなたってホント器用だね」
「そうよ？少しは私に興味がわいてきたかしら♡」
攻撃と防御。
いずれも場に応じて切り替えるコルディザの戦いは、攻撃一辺倒のルジエリには新鮮に見えた。
「ふたりとも下がって」
地上からマルジナが叫ぶ。
バッファーとしては優秀な彼女だが、距離が離れるとバフ効果を付与できない。
ルジエリは近づいたケルゼオンの脚に斬撃を加えると、身を翻してマルジナの元に戻った。
「いったん退く？」
「向こうの方が足が速いよ」
ルジエリは答えながら地面に目を落とした。
鎧や衣服にくるまれ、白骨となった遺体があちらこちらに転がっている。
神器を狙う不届き者は、すべてケルゼオンによって葬られてきたのだろう。
「ちょっと～独りにしないで」
コルディザも地面に降り立つと、ふたりに駆け寄る。
いくつかの傷を負ったケルゼオンが空を仰ぎ、怒りの咆哮をあげる。
金属が擦れ合うような不快な音が、戦塚に響き渡った。
「あのコ、目がいいみたいね～」
「目？ 私たちの攻撃を見切っているってこと？」
ルジエリがいぶかしげな表情を浮かべる。
「そ。このまま空中でヤリ合っても勝ち目は薄いわ。避けられちゃうし。だから、私が引き付ける間に目を狙ってみて。共同作業よ♡」
「そんなこと、できるの？」
コルディザの提案に、ルジエリは納得ができなかった。
あの波状攻撃をひとりでしのぐことなど可能とは思えない。
「もちろん、私ひとりじゃ無理だわ。だから――」
「わかった。あなたにバフ効果を集中させる」
マルジナが答え、空を見上げる。
怒り狂ったケルゼオンが、こちらめがけて急降下しようとしていた。
「来るよ！」
「落ち着いて、ルジエリ♪ チャンスは一瞬だからね」
バフ効果を受けたコルディザは、ゆっくりと腰を落とす。
ひとつ息を吸い込むと、槍をケルゼオンに向かって放り投げた。
青白い光を帯びた槍が空を裂く。
鋭い穂先がケルゼオンの胸元に突き刺さり、降下する速度が緩まった。
「さて、勝負ね」
コルディザは盾を両手で持ち、身をかがめる。
巨体が迫るその一瞬――
横薙ぎに盾を振るい、くちばしに叩きつける。
「今よ♪」
コルディザの間延びした掛け声と同時に、ルジエリは飛び上がる。
不気味な光を放つケルゼオンの両目を、2本の大剣で同時に突き刺した。
大地が震えるような金切声。
両目を潰されたケルゼオンは大きくのけぞった。
「ゴメンね～これも仕事なの」
ガラ空きになったケルゼオンの胸元に、念動力で引き戻したコルディザの槍が突き刺さる。
その一撃が勝負を決定づけた。
ケルゼオンは最後の羽ばたきと共に胸を閃かせた。
純白に輝く翼が霞のようにほどけ散る。
巨体は光の粒となり、やがて静かに空の彼方へ、ゆっくりと溶けていった。
「お見事。ふざけた聖女だと思ってたけど、あなた強いのね」
マルジナがゆっくりと杖を下ろす。
「うん。コルディザがいてくれてよかった」
安堵のため息をつきながら、ルジエリが微笑んだ。
「三人がひとつになったおかげよ♪ 一緒に汗をかくのって気持ちイイわね」
コルディザは中央が丸く凹んだ盾を撫でる。
「そこで、この後別の意味でもひとつになるっていうのはどう？もっと気持ちイイと思うんだけど……あ、ちょっと♡」
マルジナとルジエリは無言のまま、ひときわ大きな戦塚へと歩き出す。
石の棺は聖女たちを迎え入れるように、淡く輝いていた。
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コメント
お、なんか躍動感のあるイラスト！
コルディザは思ってたより強かったな。
いろいろ凝ってます☺
コルディザはちょっとパワーアップしてます。
最初、ちょっと弱く表現しすぎたなと反省。
こんなつよかったっけ？
と思ってキャラクターの紹介ページみたら上方修正されてる！？
ちょっとパワーアップしてます！
どっかで修行してきたのかもしれない☺
コルディザ活躍回ですねールジエリがサポート的な。リカード登場のときもそうでしたけどね。
今回はサポート役ですね。
新キャラが活躍する時にもよくいる聖女。
スピードと回避がそれなりに高そうなマルジナが地上に下がったまま空に上がってこない理由は、ケルゼオンの攻撃の激しさ故か、バフに専念する為か、単に防御が低いので常に後衛として距離を取るからか。
打たれ弱い鳥型が無防備となりバフ付きとはいえ、神器の守護者を務めるケルゼオンを一撃で仕留めるコルディザにはアタッカー並みの頼もしさがある。
細身の槍と小振りな盾、攻撃用の威力としても専業ディフェンダーとしても心許無い武具で強敵を凌ぐ技術と突破口を見出す戦術眼、古参の戦闘経験を感じさせる。
享楽優先で隙が無くても手を出してくる、気持ち良い位空気を読まないコルディザの言動が楽しみ。
【日常編】に期待絶大！！
マルジナは基本下がってますね。
理由は…挙げていただいた全部かな。
バフありではありますが、コルディザ大活躍となりました。
けっこう経験豊富な聖女だったりします。
日常編は…書ける内容になるのでしょうか！？笑
PixivならＲ18タグ付ければＯＫ
な、なるほどー！
ひきつけて盾でぶん殴る作戦ってパルゼアも採用してましたよね。これがリガレア流の盾術！
やってましたね！
力こそがパワー、たとえ防具でも殴れば武器になるっ！
ほんで続きは？
今書いてます書いてます！
この章の6・7話が書けたトコです、イラストはまだ完成してないです！
最初の方を見直すとかなりイラストの雰囲気が変わってる。
体の動き？がでてきたかな。
昔はエフェクトだけ豪華でもっと棒立ちだったｗ
ぼ、棒立ち…！
どのイラストのことを言っているのかよくわかります笑
どうしたら体に動きをつけられるのかわからなくて。
今はもう少し躍動感が出てきました☺
戦塚や神盾入手、帰還までの３人の続きが気になります。
コルディザ「神盾も手に入った事だし、３人で愛を育みながらゆっくり帰りましょ♪」
マルジナ「ただでさえ長旅なのだから、早く帰らないと。余計な時間を費やして帝国がどんな事態になると思っているの？」
コルディザ「え？滅んだ」
ルジエリ「そんな、あっさり…」
コ「魔導翼船が墜落するのも良いわね。邪魔が訪れない地で子孫繁栄なんてどう？」
マ「ハァ…女同士で子供が出来る訳無いでしょ」
コ「あら、愛し合う女同士なら子供だって作れるのよ？知らなかったの？３人で新世界のアダ…イブとイブとイブになりましょ♡」
ル「どんな土地でもコウノトリやキャベツ畑があれば問題ないよ」
ルジエリが純粋すぎた笑
そしてコルディザの謎ポジティブな感じがいいですね。
そんな感じなんですよ、このお方。
あまり深く考えないというか、今できる楽しみ方を優先するというか…
神器入手、それを参考にブリッツ改造。
までは進んでますね。
またヴェイダルたちのお話も挟みたいと思います。