🌐 Language / 言語
🇺🇸 [English Edition]
🇯🇵 [日本語版]
空が、一瞬だけ白く光った。
遠くの海で、巨大な影がゆっくりと崩れ落ちる。
波が遅れて揺れた。
「……なんだ、今の」
船員のひとりが顔を上げる。
遠目にも異様だった。
海面に横たわる、ありえないほど巨大な影。
熱気のせいか、空気まで揺らいでいる。
その横で、男が静かに口を開いた。
「行きましょう」
船員たちが振り向く。
「は?」
「あの場所です」
男――ヴェイダルは、遠くの海を見つめていた。
「冗談でしょう!?危険ですよ!」
ヴェイダルは海を見たまま答えた。
「だからこそ、見たい」
船員が顔をしかめる。
「博士、死にますよ」
「今見なければ、二度と分からないままだ」
船員たちは顔を見合わせる。
……止まらない。
知りたいと思った時のヴェイダルは、いつもこうだった。

船が進む。
近づくにつれ、空気が変わっていく。
熱い。
生ぬるい風が頬を撫でる。
焦げたにおい。
やがて、それが見えた。
巨大だった。
見上げるほどの黒い身体。
波に揺れるたび、裂けた傷口から蒸気のようなものが立ち昇る。
焼け焦げた外皮。
そして喉元には、深い傷。
何か鋭いものが、何度も斬り裂いたような跡だった。
「……これは」
ヴェイダルの声が、わずかに低くなる。
怖くないわけではない。
だが、それ以上に。
――知りたかった。
どうやって生きているのか。
何でできているのか。
なぜ存在しているのか。
ヴェイダルは布を巻いた鉗子を取り出す。
裂けた組織を慎重につまむ。
まだ熱い。
小瓶へ移した。
船員が顔をしかめる。
「博士、そんなもの持ち帰るんですか」
「正体が分からない。だから調べます」
ヴェイダルは即答した。
船員が呆れた顔をした、その時だった。
「は、博士!」
声が裏返る。
「女の死体が!」
視線の先。
怪物のうえで少女が横たわっていた。
布が目を覆っている。
濡れた金髪に、血まみれの身体。
腕がない。
脚もない。
あまりに損傷が激しい。
それなのに――
胸が、かすかに上下していた。
生きている。
ヴェイダルはすぐ膝をつく。
若い。
まだ少女だ。
兵士には見えない。
だが、身体に残る何かが異様だった。
ただの人間ではない。
そんな感覚があった。
ふと、近くに黄金の剣が見えた。
四本、散らばって落ちている。
船員がひとつを持ち上げようとするが、びくともしない。
「重っ……!」
二人でも動かなかった。
それでも、刃先だけが微かに震えている。
まるで、まだ誰かが触れているみたいに。
ヴェイダルは怪物の喉元を見る。
深い傷。
少女を見る。
失われた四肢。
黄金の剣。
静かに理解した。
この少女が戦ったのだ。
ひとりで、怪物と。
ヴェイダルの胸の奥で、何かが動く。
恐怖ではない。
敬意。
そして、そのすぐ隣にある感情。
強い好奇心だった。
どうやって戦った。
なぜ生きている。
その剣はいったい何なんだ?
なんとしても知りたかった。
だが、今は違う。
ヴェイダルは外套を裂き、傷口を縛る。
急がなければ死ぬ。
「まだ息があります」
静かに言った。
「急ぎましょう」
船員が顔をしかめる。
「でも、その剣……」
「積んでください」
迷いがない。
「おそらく、彼女のものです」
船員たちは顔を見合わせた。
反論はなかった。
怪物の死骸。
黄金の剣。
そして、死にかけている少女。
そのすべてが、同じ問いへ繋がっている気がした。
ヴェイダルは少女の呼吸を見つめる。
――救わなければならない。
そして知りたい。
そのふたつの感情だけが、静かに胸に残っていた。
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コメント
ゼタリリアの剣で攻撃されてもまるっきり自己修復ができなくなるわけじゃなく修復する力が弱まるということなんでしょうか。だとすると大型の爆弾で吹き飛ばして修復する前に殺してしまえば聖女以外でも倒せる可能性はありますよね。
ハイ、そうです!
自己治癒が遅くなるので倒しやすくなります。
大型爆弾で消し去る方法もなくはないのですが、大型獣魔以上は外皮がとても硬いので爆発だけで全身を一気に消し去るのはムズイです。
そのため、念動力で強化したブリッツでの攻撃が推奨されています。
余り強力な兵器があると長射程の大砲や大威力の空爆で瀕死にした後、再生中で満足に動けない獣魔に聖女が止めを刺す作業と化して盛り上がりに欠ける気がします。
軍事兵器はそこまで発達していないという事でしょうか?
その割にはレーザー兵器が存在していたり…。
そうですね~あまり簡単に倒せてしまうのも。
レーザーというか神気を凝縮させて射出させているので、そのあたりちゃんと書かないとですね。
話を前に進めたいばかりに世界観の説明がちょっと不足してます。
でもそこまで読んでもらえたら嬉しいな~
親方!空から女の子が!に通ずるものを感じてしまったw
たしかに笑
最初なんのことかわからずでしたが、記事に飛んだ瞬間に理解しました!
ラピュタネタで同じ事を考える人がいましたね(笑)
4本もの剣をどう使ったか←二刀流のもう一人を探すか、剣の大きさから4人両手持ちを考えるのが凡人。真っ先に特別な力を連想するヴェイダル博士は異才。
最近また盛り上がってましたね。
周りに誰もいなかったこと、船もなかったことなどから推測した感じです。
ヴェイダル博士ならなにか知っていたのかも?
ヴェイダルって命知らずの冒険野郎なんですねーw
物語のなかでとても重要な人物だと思うのですがこの後出てこないのが気になります
冒険野郎…でもありますかね。
とにかく好奇心が強くて、その特性を研究に活かしたりしています。
5章で再登場予定です。
昨日から読み始めたんですが最初の方だけやけに文字数が少ない回が多くないですか?
登場人物が多すぎて覚えられない。。
そうですね、イラストメインで文章が短い回が多いです。
最初の方で進め方も試行錯誤してまして…
登場人物の多さはごめんなさい、覚えにくいですよね。
そういう作品なんですm(_ _)m
イラストは新しくなったのにこの回だけ文字が増えていないだと・・・?
あ、本当ですね…
ここもリライトしたいなと思ってるんですが、そんなに増えないかも。
二人がかりでも動かせない程重い黄金の剣。
教皇庁が持ち帰れない伏線かと思いきや、より多い人数なら移動できる。
4本積んでも船が沈まない事を考えると、剣そのものの重量というより、適性が無い人間には実際以上に重く感じる特性がある?
宝剣が所有者を守る自動防御の様な描写は後程加筆されるのかな。
めっちゃ重たいけど神の力である念動力なら持ち上げやすい!
しかし人間が筋力で持ち上げるには重たい…という感じですね。
ゼタリリアが自らを守ろうとしている力に宝剣が反応している描写になっております。