
鎖を断つ声
「私は民衆の苦しみを直視する神だ。教皇庁のように至高の存在として見下ろす側にはならない――」
「私は民衆の苦しみを直視する神だ。教皇庁のように至高の存在として見下ろす側にはならない――」
「お嬢様…ご立派になられましたな」 レイヴィエ家に仕える執事、ノーウェンは燕尾服のポケットからハンカチを取り出すと目元を押さえた。
エザリス王国の首都バトリグ。 かつては街道に商隊が行き交い、官僚や貴族が闊歩する華やかな都だった。 しかし今、石造りの壁には新たな落書き...
灼熱の日差しが、アズカー地方の鉱山を照らしつけていた。 荒涼たる大地に吹きつける風は乾いて熱く、中央の華やかな貴族生活とはまるで別世界のよ...
幼いコルゼティは、真冬の冷たい風が吹き荒れる夜、熱に浮かされてベッドに横たわっていた。 頬は真っ赤に染まり、小さな額には冷たい布が置かれて...