灼熱の日差しが、アズカー地方の鉱山を照らしつけていた。
荒涼たる大地に吹きつける風は乾いて熱く、中央の華やかな貴族生活とはまるで別世界のようだ。
そこにいるふたりの少女――グラジェリとゼフィナは、確かに貴族の血を引いているが、この辺境ではその地位を示す機会など皆無に等しい。
それでも彼女たちは、並々ならぬ集中力をみなぎらせていた。
採掘のためのドリル型ブリッツが空中に浮かんでいる。
ふたりは聖女の力、念動力でさまざまな鉱具を操り、岩盤を砕いていた。
「ちぇっ……この岩、もっと崩れやすかったらいっぺんに採れるんだけどなぁ」
青い髪をかき上げてグラジェリがぼやく。
慣れているとはいえ、昼下がりの暑さは格別だ。
どこからともなく吹いてくる砂塵が肌にまとわりつき、不快感を増幅している。
「もう少しで掘り当てられそうよ。岩の表面が薄い赤みを帯びてるわ」
ゼフィナが落ち着いた声でうながした。
金髪を後ろでまとめ、白い肌に血筋の証のような上品さがただよう。
この鉱山での貴族らしい身の振る舞いを期待しても仕方ないが、彼女の言動からはわずかに知的な響きが感じられた。
「これがまともに売れたら、やっと辺境暮らしから抜け出すチャンスが近づくわね。コルゼティ様のご加護があれば、なおのこと……」
ゼフィナが呟くコルゼティの名を耳にすると、グラジェリの目つきが明るさを増す。
「だよなァ!あたしらだって貴族の端くれ。いつか王国の中央に行って、優雅に暮らすんだ」
彼女たちが熱心にブリッツを振るう理由は、ただの生活の糧を得るためだけではなかった。
この山中には、神気を増幅する鉱石が埋蔵されているという言い伝えがある。
ヴァルライトのように高値で取引される希少資源だ。
ましてここは神器の影響か、通常の数倍もの法力増幅率を誇ると言われる“極上品質”の鉱脈を秘めている、と噂されていた。
ドリルの先端が岩盤に深く食い込んだ瞬間、二人の動きが止まる。
小さな欠片がくずれ落ち、その奥から鈍く光る光がのぞいた。
「これがほんとに、あの噂の宝石……?」
ゼフィナの声が震える。
まばゆくはないが、その静かな光は確かに普通とは違う深みをたたえていた。
「やった! これなら、あたしらの苦労も報われるってもんだ!」
グラジェリが歓声を上げようとした、そのとき。乾いた足音が後ろから響く。
風に揺らぐ衣が視界の端をかすめ、ふたりはびくりと身体をこわばらせた。
振り返ると、そこには漆黒の装いをまとった女性――コルゼティの姿があった。
「コルゼティ様……」
ゼフィナが思わず息をのむ。
コルゼティは若くして“神の生まれ変わり”を名乗り、自ら聖女の頂点に立つと豪語している存在。
バイザーの奥から冷たく鋭い眼差しを送りながら、小さく微笑む。
「良いものを掘り当てたな。やはり神器が地質に及ぼした影響は大きかったようだ」
言いながら、コルゼティは手にした古の神器をふと掲げた。
青白いオーラが杖を包み込み、わずかに地表を震わせる。
まるで地中の宝石が共鳴するかのように。
「我が進める計画も大いに捗るだろう。ふふ」
周囲の空気が張り詰める。
コルゼティの放つ威圧感に、グラジェリとゼフィナは心の奥に熱い衝動を覚えた。
自分たちが憧れる偉大な存在が目の前に立っている。
その事実が、がらんとした鉱山の空間を神域に変えるようだ。
「コルゼティ様。あたしたちも計画に参加させてください。もうこんな辺境でくすぶるのはまっぴらなんです!」
グラジェリが熱っぽく言うと、ゼフィナも続くように静かにうなずく。
「あなた様のお力になれるのなら、誇りある貴族としてもこれ以上の栄誉はありません」
コルゼティはまるで当然のこととして、優雅に顎を引き、ふたりを見下ろすように視線を向けた。
「いいだろう。その気概、認めてやる」
その言葉はまさにふたりにとって福音だった。
歓喜に打ち震え、ため息をもらす。
「王国を覆う停滞を打ち破るのは――我が力。そしておまえたちの法力だ。急いで残りの鉱石を掘り出せ。暗くなる前に、ここの資源をすべて集めるぞ」
コルゼティの声には、有無を言わせぬ迫力があった。
もはやグラジェリもゼフィナも、彼女の瞳に宿る野望に夢中だった。
そう――王国の中心で暮らす夢だけではない。
自分たちこそが、この世界に新たな秩序をもたらす“選ばれし者”であるかのように思えてくる。
コルゼティのかたわらでなら、その幻想が現実になる気がした。
ふたりは歓喜を胸に、ブリッツを操作する。
その後、鉱石はアズカライトと名付けられた。
赤と紫が混ざった光彩は、まだ見ぬ災厄の影がちらついているかのようだった。
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コメント
新しい宝石、ヴァルライトとどちらが優れるのか。
通常の数倍の極上品質は強そうですね。
コ「さあ、残りの鉱石を掘り尽くすザマスよ!」ゼ「行くでガンス」グ「フンガー」
それぞれに良さがありますね。
しかし神器の効果で地質にも影響があり…
といういわくつきの宝石なので期待できます。
か、怪物くん…大野さん?
タイムボカンシリーズから定番となった悪玉3人トリオです。
有名どころでは「ナディア」のグランディス、サンソン、ハンソン。
「らき☆すた」のOPをイメージしました。
曖昧3センチ そりゃぷにってコトかい?
なつかしい笑
風情のあるイラストではあります。が。
岩山ばっかりの田舎に左遷されたコルゼティパパが不憫になります。
なにもなーい
でも辺境からの攻撃を止める役割もあったりして
左遷だけではないんですが、コルゼティのお父さんは不服に思ってました。
アズカライト!?フツーにありそう笑この宝石も聖女が御使いたちとの差を埋めるための仕掛けと見た!
ラズライトなら現実にありますよ!
御使いたちとの差を埋めるための仕掛け…
そうですね、いろんなものを総動員して、複数で戦ってやっと勝てるぐらいですので。
>その静かな光は確かに普通とは違う深みをたたえていた
このへんゴロが悪いと言うか絶妙に読みづらいんだよな
ちゃんと推敲してる?
うーん、そうですね、修飾語というか説明が多すぎるのかな。
ちょっと修正してみます!
ありがとうございます!