水中を泳ぐいくつもの黒い影。
そして空には鳥獣型の獣魔が要塞に向かって飛んでいた。
不気味な鳴き声をあげながら、聖女たちの眼前に迫る。
「さて、仕事するか」
額にずらしていたバイザーを目元にもどすと、聖女イルザスがつぶやいた。
短く切りそろえた赤い髪。
獣魔の群体に対して広範囲攻撃を行う特殊部隊 プルゼリフを率いる彼女は、大型の砲型ブリッツを携え、空中を滑るように飛んでいた。
まさか、自分が当番の時に大規模な襲撃があるとはな――
要塞の自室でのんびりと酒を飲んでいたイルザスも、水平線から近づく影を見たときには酔いが醒めた。
プルゼリフに所属する聖女を集め、準備と役割分担、迎撃の布陣について手短に説明する。
幾多の戦いを切り抜け、古参となった彼女が自然と指揮をとることになった。
「海が15、空に10ってところかな。あれだけ固まってくれたら私でも当てられるかも」
イルザスの隣で白いツインテールの髪が風になびく。
ゆとりのある黒の装束に金の刺繍。
大型の砲型ブリッツが太陽の光を鈍く反射していた。
聖女ミズハもまた、プルゼリフの一員として戦地に向かっている。
「あたしはあんまり自信ないなぁ。とりま、海に向かってぶっ放してみるね」
水色の髪に黄金の鎧を着込んだダルメザは、巨大な筒状の砲台型ブリッツとともに、ふたりのすぐ後ろを飛んでいる。
手元の袋からクッキーを取り出し、もぐもぐと忙しそうに口を動かしていた。
彼女たちの背後にも合計5人の聖女たちが付き従っている。
まだ戦闘経験の浅い者も含まれるため、援護射撃やイルザスたちへの攻撃・防御支援が主な仕事だ。
鳥獣型の獣魔の群れから1体が加速しながら近づいてくる。
鋭く湾曲した漆黒のくちばしは、大気を切り裂くように冷たい輝きを放っていた。
その目は青い稲妻のような光を宿している。
黒く大きな翼を広げるだけで、まるで暗雲が立ち込めるように周囲の空気が変質していった。
その周りを渦巻く電光が青白い蛇のように舞う。
「ローゲルクか。全員持ち場につけ!」
イルザスが叫ぶと聖女たちは旋回し、空中で静止するとブリッツを構えた。
後衛の聖女が放った機関砲型のブリッツから射出された弾丸は、すんでのところでローゲルクにかわされる。
「あわてるな。もっと引きつけろ」
イルザスも狙撃銃型のブリッツを構える。
甲高い雄叫びをあげながらローゲルクが突っ込んでくる。
乾いた銃声とともに、イルザスの放った弾丸がローゲルクの羽を貫いた。
10メートル近い巨体がぐらつく。
「今だ、撃て!」
合図とともに後衛の聖女たちが一斉に射撃をはじめる。
法力がこめられた弾丸がローゲルクの体に突き刺さり、周囲に赤黒い血が舞った。
しかしその赤く燃える目は力を失っていない。
電撃が空中をほとばしった。
回避しようとしたイルザスの眼の前に黒い方形型の盾が飛び出し、電撃を吸収していく。
フェノラ樹脂でコーティングした盾型ブリッツは、ローゲルクの電撃を無力化していた。
「リズトレアか。助かったよ」
「まだイル姉に倒れてもらっちゃ困るからね。手早く片付けてイイ男捕まえに行きましょ」
銀の長髪をなびかせて、リズトレアが蠱惑的な笑みを浮かべた。
丈の短いスカートにロングブーツ。戦う格好には見えない。
彼女の狙いは各国の酒場を飲み歩く、顔の広いイルザスにいい男を紹介してもらうこと。
任務など早々に済ませて、酒場に繰り出すことしか頭になかった。
ローゲルクは銃弾を浴び、海へと落下していく。
「んじゃ、こっちもボチボチ始めますねぇ」
のんびりとした口調とは裏腹に、ダルメザの放った砲弾は海上で大きな爆発音をあげた。
海中を進んでいた小型獣魔たちの悲鳴が混じる。
凄惨な戦いの場とは不似合いなほど、空は青く晴れ渡っている。
ゲイルード海上要塞を守るための長き戦いが、轟音とともに幕を開けた。
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コメント
暗雲が立ち込めるように周囲の空気を変質させながら海に落ちていくローゲルク(笑)
う~む、ちょっと大仰だったかな!?
イルザスってプルゼリフの体調だったのか。ローゲルグは強キャラの風格があったのに…
プルゼリフに所属している聖女のひとりですが、獣魔との戦闘について経験豊富なので隊を率いることも多くなっております。
ローゲルクはまだいっぱいいますので、いつか活躍してくれるはず。
や、やっと獣魔が要さいにたどりついたぞ!
おまたせいたしました!
ここからは怒闘の迎撃戦が続きます!
海王星でゾフィーを倒し、天王星でマン、土星でセブン、木星でジャック、火星でA、相次いで足止めを受けた獣魔達は道に迷い、這う這うの体で要塞に辿り着いた。
【無明の間】目の装飾が印象的な聖女達「いらっしゃい」
ゾフィー!?
ウルトラマン…
ゾがついてる!お前も聖女にならないか?
マンがわからなくて検索したら初代の文字が!
そしてそのままWikipediaのページを読み込むのであった。
昨日の夜コメントしたのですが反映されませんでした。
ゆっくりコメントしてくださいと言われましたが時間を変えても特に解決せずです。
大変申し訳ないです。
昨晩、コメントの不具合があったようです。
せっかく来ていただいたのにm(_ _)m
今は解消されております!
ご不便をおかけして申し訳ございませんでした。
プルゼリフの全容がよくわかりません。特殊部隊というのなら司令官・副司令官・副官・曹長・中隊長・准尉などそれぞれの階級を用意してほしいものです。
プルゼリフは対群体用の特殊部隊でして、その部隊に所属する聖女たちが交代でゲイルード海上要塞に駐留しております。
階位みたいなのは特に考えてなかったですね…
そんな何十人も一気に集まって戦うシーンがないもので。
一度また構成を考えてみたいと思います。ありがとうございます!
対集団広域シューター部隊プルゼリフ待っていました!
精密射撃、盾役など、戦況に備えて役割分担している辺りがBLITZらしいです。
古参の指揮者、酒場、異性など、軍人が好みそうな会話が小気味良いです。
イルザス、リズトレア、リカードが揃うと面白い話になりそうですね。
単体で突出したローゲルクは見た目の格好良さに反して見せ場も無く撃墜。
リガレアのシューターは先ずイルザスの狙撃研修を受けることが必須。高速移動しながら狙撃できる精密性(7.6)
ミズハ:精密動作(7.4)が苦手で、命中率も控えめ。
イルザスの命中の強みは狙撃で足を止める事無く、高速移動中に正確な狙いを定める事が他の聖女より得意という事でしょうか。
なるべく揚げ足取りみたいな指摘は避けたいですが、色々な聖女の各能力に関して余り高くない能力を高く優れている、逆に高い能力を低く苦手とする、一致しない記述が散見されます。(例 ギルゼンス:低めの耐久力が目立たない9.3)
イルザス、リズトレア、リカード
この3人がそろうお話は4章の最後にちょっとだけ入る予定です!
ローゲルクさんは聖女が待機しているところに特攻してきたので…
予想より強キャラと捉えられていたので驚いています。
数値のお話
ありがとうございます!
これはもうご指摘通りで、同じような数字でもあっちでは強い、こっちでは弱いでは見ている側としては混乱しますよね。
このあたり、修正していきたいと思います。
(他の能力値に比べたら)低めの耐久力~
のように作者の方では思ってたりするのですが、このカッコ内を説明していないのがダメダメですね。
4章をアップし終えたらまた数値やコメントも見直していきたいです。
イルザスみたいな女上司の下で働きたいです!厳しいけど仕事が山を越えたら飲みに連れて行ってくれそう。
けっこう適当だけど面倒見はよくて、雑だけど優しかったりします。
そして重要な業務が終わったら飲みに連れて行ってくれて、支払いもサラッと済ませていたり。
私も…そんな上司の元で…うう
上でも書かれてるけどローゲルクくんの扱いがひどい…
グエイジスくんの再来か?
まあプルゼリフの面々はけっこう強いですから…飛んでる相手も得意ですし。
そこに単身突っ込んできたローゲルクがわるい!
グエイジスは立派な大型獣魔ですよ!
なんかネタ枠にされている…!?
イルザスの紹介ページにある立ち絵に比べて胸が小さすぎる。読者への宣戦布告とみなすが宜しいか?
そ、そんなに怒らなくても…!
失礼しました。
確かに立ち絵に比べるとかなり控えめでした!
イルザスにも失礼でしたねコレ。
修正して立ち絵のものに近づけました!
今後気をつけます!
成程、これが「盛った」後の胸。
ジレミュー「胸なんて飾りなの。え〇い人にはそれが分からないの」
イルザス「…軍隊の罰則には銃殺刑という物があるらしいな」
ジレミューは今後どんどん成長する可能性が!
イルザスさんには大変申し訳ないことを…
>そ、そんなに怒らなくても…!
akima、お前もう船降りろ
そんな!海の一番端っこで泥舟漕いでるようなサイトなのに…
問題を軽く見すぎていたでしょうか!?
大船に乗ったつもりで楽しんでおります。
船の名前は…タイタニック?良い名だ。心が安心で満たされる。
絶対無事に最後まで書き切ってくれるに違いない!
タイタニック!
緊張感のある名前ですね…豪華客船なんですけども笑
頑張って書きます!
獣魔からの抗議
ローゲルク「撃たれれば墜ちる紙装甲は認めるが、広域電撃で脅威を与える間も無く火に飛び込む虫扱い…。鳥は脳が小さいと思われているのか?我よりボロ負けする奴を出してくれ」
グエイジス「厚い防御、広範囲攻撃、必殺の尾、満を持して登場した大型獣魔、しかし何も出来ず完封、一方的に処されたのは何故だ?相手が悪過ぎる」
ヴァラグス「格闘、電撃、硬い外皮、危険度が高いとされているにもかかわらず、高い敏捷性を活かす場面も無く敗退。何より両目を切り裂くとか悪質過ぎる」
マナグロア「3大獣魔最弱などと言い出したのは何処のどいつだ?聖女集団如き、本来なら敵では無かった。あのデタラメな狂戦士に活動が覚束無くなる程、切り刻まれてさえいなければ」
エルゼナグ「あの夢は何だ?指1本も動かせず女神に屠られるなど、雑魚扱いにも程がある!さらには体の主導権を奪おうとする煩い女ども。不気味な男が体に侵入して来る不快感…あれで心が死んだ。狂った聖女の中で不貞寝してやる」
リンカージェ「ここに私の名前を出すの、やめて!」
おお、獣魔たちの声…
ローゲルクやグエイジスは引き立て役的な感じにはなってしまいましたね。
特にグエイジスは次の章はこんなに強い聖女たちが登場するよ、という回だったので見せ場を作れませんでした。
夢に関してはエルゼナグの記憶の中にはありましたが、厳密には彼?の記憶ではない、さらに1勝1敗なのでセーフ!
獣魔が勝つパターンももちろんあるんですが、物語的には聖女が勝利したお話に焦点を当てるので、どうしても獣魔側の活躍?シーンが少なくなっちゃいますね。
参考までに部隊の人数です。
創作に現実の定義をあてはめるのは野暮ですがご参考までに。
軍…5~6万以上
師団…1~2万
旅団…2~8千(幻影旅団?)
連隊…500~5000
大隊…300~1000
中隊…60~250
小隊…30~60
分隊…8~12
班…4~6
おおっありがとうございます!
こんな定義があるんですね。
師団は一個師団、とか聞いたことがあります。
ずいぶんな大所帯ですね。
そして突然の幻影旅団笑
一騎当千の念能力使いだから旅団で合ってるんでしょうか。
聖女の場合は上の数字でいくと班、分隊ぐらいかな。
一気に30人が集まることはほとんどないイメージです。
勉強になります!
制圧の数が必要な陸軍に対して、人員が天啓を受けた特殊な人材に限定される聖女の性質は【空軍】に近い気がします。
日本空軍の最小単位は2機編成の分隊。
4機編成で小隊、小隊×3 12機 中隊/「飛行隊」、3個中隊で飛行戦隊。
航空総軍>航空軍>飛行師団/飛行集団>飛行団>飛行戦隊>飛行中隊
アメリカ海軍の空母航空団では、F/A-18F「飛行隊」は定数12機。
空軍!
確かに空を飛んでいることが多いですね。
戦闘機的な。
このあたり参考になりそうなので勉強しないとですね。
単純に面白そうだし…
飛行戦隊とか名前だけでもワクワクするぞ!
いっこわからんのだけど
思念制御兵器がBlitzだよね
剣とか斧はわかるけど銃とか大砲はどうしてんの??
銃弾とか砲弾を思念制御してるの??
そうです!
銃弾とか砲弾を発射後に思念制御しています!
そこで念動力をまとわせているので、ヒットした後、獣魔の再生能力を阻害できるという理屈になっております。