やわらかな日差しが木漏れ日となり、訓練場の石壁を照らしている。
涼しい風がそっと頬をなで、木々がざわめく音が心を和らげる昼下がり。
射撃の訓練場では新人聖女のティジスがズィーグレから銃器の扱いを教わっていた。
「まずは基本姿勢だ。両足を肩幅に開いて安定させる。で、重心はやや前。しっかり構えろよ。銃口を的に向けて、照準を合わせる。呼吸を止めて、引き金をひく」
説明しながら目の前で実践するズィーグレには、幾多の獣魔との戦いで身につけた凄みがあった。
ティジスは手帳を取り出し、熱心にメモをとる。
「自分の腕で的を狙えるようになったら、次は念動力で銃を操作する。弾丸の軌道をイメージするのがコツだな」
「あの、先輩。できたら撃つところも見せていただけませんか?」
「わかった。少し下がってな」
ズィーグレは先程の説明通り、銃を構えて狙いを定めた。
乾いた炸裂音が鳴り響く。
しかし、放たれた弾丸は的の中央から拳ふたつ分ほどズレていた。
「先輩」
「――うん、狙い通り。次が本番だ。見てな」
ズィーグレは同じ姿勢から銃弾を放つが、またもや的から外れた場所に風穴が開いた。
「あの先輩」
「――自分の手で撃つのは久しぶりだからな。まあ見てろ」
やはり、銃弾は明後日の方角に飛んでいく。
「せんぱ――」
「ああもう、じれったい!」
ズィーグレは手元にあったもう一丁の銃を持ち、両手で構えると前方に向かって撃ちまくった。
鋭い閃光とともに、空気を裂くような轟音が石壁を震わせる。
用意された的は蜂の巣となり、ほとんど原型を残していなかった。
「と、まあ、こんな感じだな。あまり難しく考えることねーよ。気楽にやんな♪」
ズィーグレは満面の笑みで振り返る。
――この人は絶対怒らせないようにしよう。
引きつった愛想笑いを浮かべながら、そう心に誓うティジスであった。
コメント
仮にこの世界の銃弾が鉛とか銅のような比較的柔らかい金属で作られているとしたらリガレウム製の鎧なら弾けるんですかね
小さい弾丸なら弾けます!
ただ、ズィーグレが使う大型の機関砲みたいなブリッツで撃たれたら鎧は変形しますし、中の人は昇天しちゃいますね…。
10段階中9.0の精密性とは。
念動力で使うと正確無比でも、自分の腕で直に扱う技術が身に付いていない事もあるのですね。
射撃の名手は筋肉の重さが変わると命中精度に影響が出るので、筋トレをしないとも言われています。
自信満々で大きく外し続けて癇癪を起すズィーグレが楽しいです。
新人のティジスは今後聖女紹介で登場するのでしょうか。
自分の腕でも精密に撃てるようにはなったんですが、もうその感覚を忘れちゃってる感じですね。
聖女なので自分の腕で狙って撃つ、ということも普段しないので鈍っているというか。
ティジスは登場予定ですが、結構後になるかも?です。
デカイ武器でデカイ敵を狙うのに慣れてしまったんですねきっと
普段はまとが大きいですからね。
大体空中とか海とか、だだっ広いところで戦ってますし。