「ああ、新しい秩序とかなんとか…。教会で信望者を集めてるみてえだな」
酒場の古びたテーブルの上にカードを配りながら、ミリオフが言う。
マグに注がれた酒を一口飲むと、向かいに座るベルナズに目をやった。
「ふーん。じゃあコルゼティたちは街の中にいるはずだよな。何か知らねーか?」
「さあな。聖女ったって、バイザーを外されちゃ俺らには見分けつかんからなぁ」
ミリオフは配られたカードをひと通り見ると、片方の眉を上げた。
テーブルの中央に金貨を2枚、差し出す。
「最初は誰も真面目にとりあってなかったんだがよ。教皇庁や中央政府に不満を持ってるやつは多いからな。けっこうな人数が集まってるらしいぞ」
「神聖軍だっけか。武装集団まで作るつもりだぜ、あいつら」
賭けの参加者たちも次々に口をはさむ。
さして興味を持っていない彼らでさえ無視できないほどに、コルゼティたちの活動はバトリグの市民たちに大きな影響を及ぼしていた。
酒場の柱にもコルゼティを讃える張り紙が見られる。
「ケッ。おおっぴらに集会するくせに、コルゼティは普段はどっかに隠れてるのかよ」
ベルナズは悪態をつきながら腕を組んだ。
情報収集の一環として裏路地の酒場に来たものの、肝心のコルゼティたちの潜伏場所に関するヒントは得られなかった。
――こうなりゃ集会に乗り込んで直接ブッ飛ばすか。ただ、市民を避難させなきゃいけねーのが面倒だな。
ベルナズが短絡的な作戦を考えだした時。
酒場の隅に座っていた、気弱そうな男がぽつりと言った。
「あの…僕、少し前に神聖軍の集まりに行ったことがあるんだけど」
「おっ!ホントかよ兄ちゃん。コルゼティたちが普段どこにいるか知ってるか?」
「さあ、そこまでは…でも、神聖軍はいつもこの時間に東の神殿跡で集会をしているみたいだよ」
「へえ。ちょっと行ってみるか」
そう言ってベルナズは立ち上がった。
過去に獣魔によって破壊された神殿跡は、彼女の飛行なら10分ほどで着く。
「おいベルナズ。今からひとりで行くのかよ。もう日が暮れるぞ?」
「大丈夫だって。ちょっと様子見するだけだからよ」
心配げに声をかけるミリオフに向かって、ベルナズはひらひらと手を振った。
「相手方の聖女もひとりじゃないって噂だぜ」
「ケッ。お前に心配されるほど弱かねーって。んじゃ兄ちゃん、ありがとな」
ベルナズは扉に向かって歩き出す。
上目遣いで彼女の背を見送る男の目には、微かな怯えが隠れていた。
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コメント
なんでそんなわかりやすい罠に―
とおもったけどベルナズは戦いたそうだからわざと話に乗った?
貼り紙なんかもあり、すでにコルゼティの手下が出入りはしている状態なんですねえ。
さてベルナズはどういうつもりなのか!?
3国の中で比較的上品なイメージのエザリスの情報収集では裏通りはベルナズが適任。
神聖軍を集める集会はある程度の収容人員を求められるので「鎖を絶つ声」の聖堂等、神殿規模の会場で活動するはず。
一人でちょっと様子見するだけ < 敗北、囚われるフラグ。
ベルナズなら大抵の状況を切り抜けられる実力があるものの、単独で先走ったギルゼンス戦、今回は神器持ちと1対3。
見送る男の目に微かな怯え < 一人ずつおびき寄せて数を減らす罠。
別の場所からも誘い出されて偶然4人以上集まる可能性もw
エザリスも表側は上品なんですけどね~。
ベルナズは地元のネットワークがありますので。
かなり規模がでかくなってきていますので、広い場所に集めるはずですが…
吟遊詩人を使って地道に小さい酒場でも広報活動をしていたりします。コツコツ真面目。
ベルナズは複数のブリッツを使えるタイプなので多体一も対応しやすいですが…
コルゼティ+手下の聖女となるとまずいですね!
ベルナズってなにげに顔が広いですよね。情報収集約にはうってうけかも。
路上のネットワークがありますので、いろいろと情報を集められます。
そういった意味では適任。
見つけてもすぐみんなに報告しないのが玉に瑕ですが…