「それにしてもよ。なんで民衆は『自称、神』なんてのを簡単に信じちまうんだろうな」
両手を頭の後ろで組み、長椅子に腰掛けたベルナズがぼやく。
その声色からは、退屈な会議に辟易している様子があらわれている。
「獣魔の襲来に対する不安、貧富の差。これらが今の王政への不満となっていたんでしょう。今の民にはコルゼティが自分たちを救ってくれる救世主に見えている」
テーブルを挟んで向かいに座るジグナは、小さくため息をついた。
「それだけじゃないよ。ザクネル様が死んで教皇庁の影響力は弱まった。だけど、それが逆にヴィゾア様の独裁に見えたのかも」
そわそわと落ち着かない様子で髪をいじるパルヴァズが口をはさんだ。
わけもなく会議室を歩きまわる。
「ふ。民の心をつかむのも王の務め。やはりヴィゾアは王の器ではなかった。それだけのこと」
長椅子に浅く腰掛け、足を組んだままベルザリアが言う。
金の刺繍があしらわれた長い袖がさらりと揺れる。
「ヴィゾア亡き今、私こそが王国の指導者にふさわしい」
「おいコラ、死んでねーぞ」
「さすがに冗談が過ぎるわ。珍しく王城に顔を出したと思ったのに――そんなことを言いに来たの?」
ベルナズとジグナ、エザリス王国の聖女の中でも屈指の実力者であるふたりがたしなめる。
しかしベルザリアは悪びれもせず、小さく鼻で笑うのみだった。
「んなこと言ってる場合じゃないってば! コルゼティたちの居場所はわからないし、感化された市民だって何をしでかすか予想できないんだよ」
パルヴァズがたまらず声を荒げた。
普段は大人しげな彼女の態度が、予断を許さない事態であることを物語っている。
「ケッ。めんどくせーなぁ。さっさと攻めて来やがれ。ブチのめしてやるのによ」
「パルヴァズの話を聞く限り、感化された市民たちに何を言っても効果はなさそうね。街の警戒を強めましょう」
「具体的に、どう警戒するのかしら?誰が敵になりうるか、わからない状況なのよ?」
「沿岸の警備にあたってる聖女たちを市内に呼び戻すとか? あ、でもそれじゃ獣魔に対応できないか…どうすりゃいいの~!?」
窓から差し込む陽の光が、会議室の赤い絨毯をオレンジ色に照らし出した。
それでも聖女たちの意見はまとまらない。
王都バトリグはヴィゾアという指導者が不在の状態で危機を迎えることになった。
「落ち着いて、みんな。まずは今バトリグ内にいる私たちで街を巡回し、情報を集める。それでいい?」
窓から外の様子をうかがいながら、ジグナが切り出す。
「コルゼティを見つけたらその場でぶっ飛ばしていいんだよな?」
ベルナズが不敵に微笑む。
ため息をつきながらジグナは椅子から立ち上がった。
「相手は今わかっているだけで聖女が3人。コルゼティも準備はしているでしょう。個々で戦うのは危険だわ。見つけたら照明弾で合図して」
「コレだとコルゼティたちにもバレちゃうんじゃない?」
テーブルの上に置かれてあった照明弾を手に取り、パルヴァズが不安げにつぶやく。
「ふ。心配しないで。私ならバトリグのどこにいてもすぐに駆けつけられる」
ベルザリアが胸をそびやかせる。
事実、彼女の飛行速度は聖女たちの中でも突出していた。
「さあ、行きましょう。真の正義のために」
ジグナの口調には、どこか震えるような硬さが混じる。
まるで拭えない不安の影を隠そうとしているかのようだった。
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コメント
ツワモノ揃いなんだけどクセも強いw
ジグナが一番まともかな?
ベルザリアは思ってたよりやべーやつだった
戦闘能力はみんな高いんですけど…
ジグナは割と常識人です。
パルヴァズもちょっとおとなしいだけで…まだまともな方かな?
ベルザリアは完全にやべー奴です笑
我が強い聖女に輪をかけた自意識過剰の頂上決戦。
自分に都合良く考えて認識がいい加減になっているベルザリアが楽しい。
天獣の襲撃に際しては、ラズナンドの生け捕りまで指示していたヴィゾアがいまだ臥せっている。
あるいは内乱の芽や国政そっちのけで天獣の利用に入れ込んでいるのか。
爆発物や毒ガスを仕込んだ信者達が口々に歌っている。
「こーるーこーるーこるこるぜーてぃー こーるぜてぃーかーみー」
宗教といえば〇umが真っ先に思い浮かぶ…。
個性豊かな面々なので…ミーティングもまとまらない笑
ベルザリアは特に人の話を聞きませんので。
美しければ何をしてもいい、ぐらいのノリです。
ヴィゾアは戦闘に参加しない…できない状況です。
その辺りもまた書いていこうかと。
日本だともう新興宗教=カルト、みたいな印象はありますね。
まともな新興宗教もあるのかもしれませんが。
六章…
開始まってんじゃん!?
昨日の夜から読ませてもらいました。
ベルナズのじゃじゃ馬加減とはまた違った方向で危険ですねベルザリアw
そうなんです!まだ最後まで書けてないですが見切り発車!
お読みいただきありがとうございますm(_ _)m
ベルザリアは今回のエザリス勢で一番アブナイかもしれないです笑
ベルナズが勝手に動く戦闘狂と思っていたら、状況次第で周りに合わせる事を知っているベルナズに対して、自分が最も(強く)美しいから一番偉いベルザリア、自身を神と思い込むコルゼティ。
ヴァルネイではギルゼンス、ゾティアス、グレイザ達強烈な個性の面々。
ゼハインを別枠と考えると現状ではリガレアが最もまともに見えて来る。
聖女の歪み方が世紀末で救世主を自称している様に見えてきました(笑)。
意外と頭を使っているベルナズ。
戦闘狂ってだけでは強くなれない世界…
なる前に獣魔に倒されてしまいますね。
リガレアはシンプルというか、あんまりみんな悩まないです。
力こそパワー!やはり暴力…!
自称救世主、もありえますね!
とにかく急に力を得るというのは危険だと思います。
ちゃんと誰がしゃべってるのかわかるのがいいw
真面目そうなのがジグナ
荒っぽいのがベルナズ
上品に見えて傲慢さが透けてみえるのがベルザリア
少女っぽさがあるパルヴァズ
という感じで書いております。