突然加速した拳が、ヴィゾアを狙って突進する。
地面を砕く衝撃に足元が崩れ、石片が飛散した。
さらにコルゼティは拳を異なる角度から同時攻撃させることで、大剣の死角を突き、ヴィゾアの体勢を崩していく。
空を斬り裂きながらヴィゾアは大剣を振るう。
だが、徐々にコルゼティの機動や力強さが上回りはじめ、王城の回廊は拳による破壊跡だらけとなった。
――まったく、やっかいなブリッツね。重いし、速いし。ただ……
コルゼティが操る拳型のブリッツは、重量のせいか急な転換ができないことにヴィゾアは気づいていた。
「はっはっは!どうした!?これまでか」
ふたつの拳を振り回し、コルゼティが猛攻を仕掛ける。
意を決したヴィゾアは側面へ回りこみ、あえて攻撃を誘発する。
コルゼティが狙いすました一撃を振り切った、その一瞬――
ヴィゾアは距離を詰め、鋭い大剣の斬撃を拳の側面に叩き込む。
ゴッ!と金属を砕く大きな音が響き、拳型ブリッツのひとつが指の関節部分を破壊され、崩れ落ちた。
「ちっ」
コルゼティはわずかに怯み、後方へ跳んだ。
「今度はこちらの番ね」
そうつぶやくと、ヴィゾアは全身にみなぎる天獣の力を開放した。
黄金に輝く神気がオーラのように立ち昇っていく。
「その輝きは…貴様!天獣の力を取り込んだというのか…!?」
「なんだってやるわ。正義を遂行するためなら、ね」
光の残像が回廊を舞う。
ヴィゾアは連続する精密な斬撃で、残った拳型ブリッツの指部分をすべて斬り落とした。
衝撃波が周囲を巻き込み、コルゼティが倒れそうになるほどの振動が走る。
「これで戦えないでしょう。さあ、おとなしく――」
ヴィゾアが静かに勝利を宣言しようとした時、コルゼティは大きく後ろに跳躍する。
壁の穴から空中へ飛び上がった。
「ふん。人ならざるモノと融合してまで力を欲するのか。おぞましい正義よ」
コルゼティの低い声に応えるように、メルサナトの王笏が妖しげな光を放つ。
次の瞬間、複数の擲弾がヴィゾアの頭上から降り注いだ。
爆発は連鎖していき、あたりには粉塵と砕かれた瓦礫が舞う。
「くっ…逃げるの……?」
念動防御で爆風をしのぎ、息を切らしながらもヴィゾアは大剣をかまえ直す。
しかし、感応力の範囲は煙と轟音に包まれている。
コルゼティの姿をとらえることは不可能だった。
「覚えていろ、ヴィゾア。禁術に手を染めた愚かな王を、我が神の力をもって裁いてやる」
頭上からコルゼティの声がかすかに聞こえる。
夜の風が悲鳴のように吹き抜けるなか、ヴィゾアはバイザー越しに空をにらんだ。
城の夜気がするどく醒めた月光と溶け合い、静かにただよう。
その静寂の底には、コルゼティの執念が鋭いトゲとなって満ちていた。
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コメント
いい勝負だけど天獣パワー解放後は一方的でしたねー。
初期に比べるとかなりインフレしてきたような・・・
あー、でもリンカージェも大剣で盾をベコベコにしていたか。。
神気を開放したヴィゾアは圧倒的な力で押し切れました。
もっと強い聖女を…とやっていくと神も倒せそうですね。
あんまりそんなふうには進めたくないのですが…
盾はボロボロにされてました。ベコベコ笑
拳型ブリッツは指の隙間に異物が詰まると握る事も開く事も出来なくなる欠点があると思っていたら、ヴィゾアなら普通に指の関節部分を切断できた。
指が無くなっても手の甲/平部分だけでも凶悪な重量・硬度を備えた金属塊として機能する様な…?
魔導巨兵の拳にブリッツとして使える細工を予め施しておけば、破壊された魔導巨兵から武器を再調達可能。
「その輝きは…天獣の力を取り込んだというのか?」<古の存在に関する知識判定に毎回成功する聖女達。
感応力は意外と遮られやすい。チャフを散布して逃走、射撃妨害などの戦術も今後有り得る。
セリフだけは正義の味方の様な事を言っているコルゼティ。
「神である我が政権を取った暁には‼……どうしよう?」
強化されたヴィゾアなら指部分を切り落とせる!
手のひら部分だけでもたしかに戦えますね。
天獣の力は、ごく最近天獣を見たばっかりだから判定できた!
ということですね…きっと。
チャフってなんだろうと思ったら妨害するものなんですね。
感応力も処理する能力は有限なので、こういった妨害手段は有効です。
コルゼティは自分を特別視してる時点でいい王様にはなれなさそうですが…
コルゼティって天獣を見たことがあるのか?と思ったけどラージェマが放った天獣と戦った経験があるとかかな。
そうなんです!
アズカー地方にも現れましたので鉄拳ブリッツでやっつけました。
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
おれは第六章がはじまるのを待っていたと思ったらいつのまにか終わっていた…
はじまってますはじまってます!
催眠術だとか超スピードだとか. そんなチャチなもんじゃあ 断じてないです!
コルゼティは撤退かー
でもあんまり格落ちしない負け方しましたねー
再登場に期待
子分たちはどうするんだろ
一時撤退ですね!
捨て台詞をはきながら去っていく…
手下の聖女たちもしっかり逃げると思われます!
天獣の力を取り込んだ <
聖魔の様に融合して常に強化され続けるのか。
天獣から取り込んだ力は使い切りで、使い尽くすと天獣分の強化は補充されず失われるのか。
天獣から取り込める力の上限。同時に何体まで力を取り込めるのか。
天獣は吸収して消えるのか、天獣の身体を保存して力を奪い続けるのか。
獣魔をベースとする憑魔術においてギルゼンスが素体として維持される聖魔はおそらくイレギュラーなケース。
オーゾレスが神器を用いて獣魔を取り込む秘術は量産性があるものの、生産・維持コストが高くリスクも大きい。
神気の塊である天獣の力を取り込む術は人の姿を保ち、現状ではデメリットについて言及されていない。獣魔細胞が暴走する様な危険性は多分、最も低い。
神器を消費して術者が獣魔に取り込まれる憑魔術の価値が暴落して行く…。
天獣を取り込んだことにデメリットはないのか!?
莫大な神気を得て、より強くなる…だけではないのが聖女BLITZなんです。
オーゾレス式はかなり強引なやりかたですが、ヴィゾアはもう少し高度な洗練された方法で取り込んでおります。
憑魔術がベースなんですが、術者が超強力なので安定している感じですね。