陽光の届かない深海の底では、異形の怪物たちが静寂の中を優雅に舞い踊る。
触手を持つ巨大な獣魔が古い沈没船の間を縫って泳ぎ、発光する鱗を持つ竜のような生物が海底の洞窟から姿を現す。
腐食した船の残骸や骨が散らばる海底は、彼らにとって理想的な隠れ家となっている。
水圧と暗闇に守られたこの領域で、獣魔たちは人間世界の喧騒から解放され、太古の本能のままに生きている。
その中で異質の輝きを放っている物体がある。
リガレア帝国によって作られた潜航型の魔導艇だ。
「本当に行くのですか、オーゾレス様」
魔導艇の中で、黒いコートを着た白髪交じりの男が心配げに聖女を見る。
彼――ヴェクスが牛耳るヴィリーク海洋掘削はオーゾレスの指示のもと、リガレウムの採掘により多大な利益をあげていた。
「もちろんよ。今さら臆したわけでもないでしょう?」
「そ、それは……」
ばつが悪そうにヴェクスは床に視線を落とす。
リガレウムの採掘において大型の重機を使用した彼らは、海底に大きな振動を起こした。
その振動は、女神アズトラの封印にも影響を及ぼしたのだ。
6振りの宝剣のうち、4振りは封印地リトグナから引き抜かれ、海中をさまようことになった。
「封印地から宝剣を引き抜き、神獣の封印を緩めた。つまり、獣魔を世に解き放ったのはあなたたちでしょう?」
「そ、そんな! 我々はオーゾレス様の命令で……!」
オーゾレスは悪びれる様子もなく、魔導艇の扉に手をかける。
念動力で体のまわりに空気の球を作り、水底へゆっくりと降り立つ。
「窮屈だったでしょう。私があなたを解き放ってあげる」
オーゾレスが掲げた杖の先端から血のように赤黒い光がほとばしる。
周囲の海水は異様な色に染め上げられた。
光は触手のように四方八方へ伸び、海底に潜む生物たちの生命力を容赦なく吸い取っていく。
巨大な魚型の獣魔が苦悶の叫びを上げながら触手をのたうたせる。
発光していた龍型の獣魔の鱗が、輝きを失って灰色に変わっていく。
獣魔たちは必死に逃れようとするが、赤黒い光の触手は執拗に追いかけ、一匹残らず神気をしぼり取っていった。
やがて海底には亡骸だけが静かに横たわる。
かつて神気に満ちていた楽園は死の世界へと変貌した。
「すべての準備は整ったわ。あとはあなたが私を迎え入れるだけ。新たな神代はすぐそこよ」
膨大な神気を身に宿したオーゾレスは、杖を胸元に抱きながら冷酷な笑みを浮かべる。
死に満ちた海底の静寂の中、突然どこからともなく低いうめき声が響き始めた。
それは人の声でも獣魔の鳴き声でもない――この世のものとは思えない不気味な音。
声は次第に大きくなり、やがて海底全体を震わせていった。
コメント
このクジラみたいな獣魔は街に攻め込まなくてもよかったんですかね~
獣魔もいろいろでして、全然自由に過ごしてるヤツもいたりします_(┐「ε:)_
ごつい水中専用装備が必要にならないオーゾレスの耐圧防護が優秀。
神器の表現に禍々しい瘴気、妖しく輝く、赤黒い光など、邪悪な力を連想する描写が目立つ。
登場した神器が闇に属する神々の物だったのか、神の存在が根本から聖とかけ離れた性質なのか。
融合実験を続けたオーゾレスの真の狙いは神獣との融合…深海生物の膨大な生命力を用いて果たしてオーゾレスの精神は耐えられるか。
神気が有り余ってるので装備無しでもいける!
…んですが、短時間ですね。
念動力を使いっぱなしになりますので。
オーゾレスは手に入れた膨大な神気をそのままパスするつもりですね。
ファイマズの宝珠で深海の生物から神気を集める
⇒ガルズレムに受け渡して復活させる
オーゾレスの神気を第三者に渡せる能力ってこのためだったんですね
神気を第三者にパスする能力は別のきっかけで発言したのですが、ガルズレムが地力で封印を解けるようにするためにも使用されます!
念動力で◯を作ってその中にいれば水中でも息ができる!
水中用の装備なんかいらんかったんや!
念動力で空気の球を作って、その中で過ごしています。
でも使いっぱなしになりますので、できれば水中用の装備がある方が本当はいいですね。
オーゾレスはこの状態で長居するつもりがないようです。
記事と関係なくてすいません。
これどこから読めばいいんですか?
最初の記事は用語集のようです。
すいません、わかりにくいですね!
https://seijyoblitz.com/1032.html
こちらから順番に読めるようになっています。
メインストーリーになりますm(_ _)m
次でラストですよね。いつぐらいにアップされるか予定がわかったら教えて欲しいです。
次でメインストーリーは一段落という感じです。
今2話だけ書けた状態で、絵もつけるとなると…8月中にはなんとか区切りつけたいな、と思ってます!