群れのボスと見られるエルパードの鱗は、まるで天の裁きを宿しているかのように美しく輝いていた。
不気味に輝く双眸は鋭く、見つめられるだけで心を射抜かれるような畏怖を感じる。
それでも、全身からただよう神々しい気配は、人知を超えた存在の崇高さを思わせた。
黒い長剣が刃鳴りをあげて舞う。
金色の鱗が刃を弾き、不快な金属音をたてた。
「グレイザ様!斬撃は効きが悪いようです」
ユゼルテスは2本の大槌型のブリッツを器用に扱い、高速でエルパードに叩きつける。
硬い鱗が砕かれ、甲高い悲鳴があがった。
「ふん。相変わらず安定した法力だ。可愛げのない子だよ」
「ここは私に任せて退いてください。ご老体にはこたえるでしょう」
「偉くなったモンだね、ユゼルテス。あたしを年寄り扱いするんじゃないよ」
言葉を交わすふたりに向かって、エルパードが鎌首をもたげる。
グレイザは長剣を正眼に構え、意識を集中させた。
両者の影が交差する瞬間、長剣が強い光を放つ。
閃光がきらめき、エルパードの首は鱗ごと断ち切られて中空に飛んだ。
切断面から大量の光の粒子が舞う。
纏閃――
大型獣魔を葬るためにグレイザが編み出した特殊スキル。
体内に凝集させた法力を一気に開放し、爆発的な威力を得る。
グレイザの纏閃は斬撃の瞬間にのみ法力を一点集中させることにより、無駄な消費を抑えながら威力を向上させることに成功していた。
「お見事」
ユゼルテスは構えていた大槌を下ろす。
戦場を駆け回り、数多の獣魔を葬った師の技は冴えわたっていた。
「グレイザ様。さきほど天獣が北西の砦の方に向かって飛んでいくのを見ました」
「なんだって?エルパードだけじゃないのかい」
「ええ。天獣の背には銀色の髪をした男が立っていました。あれは、おそらく――」
「まさか、天獣を使役する御使い…」
グレイザはうつむき、長剣の柄を握りしめた。
神話に登場する御使いが、天獣を率いて聖女を襲撃している。
神より天啓を受けて聖女となった彼女たちにとって、それはにわかには信じられない出来事だった。
「また襲撃があるかもしれません。グレイザ様はここで待機してください。私が――」
「バカ言うんじゃないよ。あんたとターレジアには残りのエルパードをまかせる。ゾティアス、テルザト!ついてきな」
「ニャッ!りょ~かいだニャ!」
「あんだとババア!いちいち指図すんじゃねえ」
ふたりの聖女も北西に飛び去るグレイザの後を追う。
「グレイザ様!」
ユゼルテスの叫びはもはや届いてはいなかった。
休むまもなく、数匹のエルパードがユゼルテスとターレジアを取り囲む。
「ご武運を」
ユゼルテスは諦めたように言い、2本の大槌を自身の両側に展開させる。
足元でうち寄せる波は弱々しく、砂浜には異様な静けさが広がっていた。

コメント
この天獣、名前があるだと・・・!?
あります!
他の天獣ページも作っていきたいと思ってますが…まずは物語を進めます!
やはりいた、飛行タイプの天獣。
大型は相変わらず硬いものの、小型廉価版は耐久力もそれなりの様で。
金属の光沢を放つ黄金の竜や獣は美しいですね。
『初めて見た敵は、想像していたよりも遥かに美しかった』(ファフナーRoLより)
これだけ沢山出て来るという事は、古より途方もない時間をかけて天獣を生産し続けていた?
激情の赴くまま敵を撃破、連戦、突貫を続けるグレイザはラージェマ戦で法力切れを起こしそう。
そうなんです、神の使い…の使いなだけあって飛べます!
防御力高めの難敵となっております。
エルパードはそれほど強くないですけども…
なのでたくさん使役できる、というのもあるんですけどね。
ラージェマ戦にたどりつくまでに法力は残しておかないと、なんですがブチギレて斬りまくるおばさま。
でも集気法も使えるから多分ギリ大丈夫!
エルパードは獣魔でいえばどのぐらいの強さなんでしょうか??中型獣魔ぐらいかな。
小型+ぐらいですかね。
群れのボスだけ中型獣魔ぐらい、かな。
ユゼルテスはずっと強者として描かれてますよねー
作者のお気に入りとみた(笑)
そうですね、公式設定として強い聖女なんです。
パルゼアと同じぐらいですかね。
グレイザにはまだ敵いませんが、武器の相性次第では上回ることも、という立ち位置です。
聖女と敵が一緒に写っているイラストは珍しい気がする
そうですね、うまいこと作りたいのですが…
まだまだ修行不足で。
今後も増やしていけたらと思ってます。
天獣、御使い、神気で構成された体には【グレイゼルの滅斧】が天敵になりそうですね。
ディアメズの魔槍が幾つか残されている様に、グレゼイルの滅斧を複数個調達できると対ラージェマ、天獣戦で打開策になるかもしれないのですが…。
神器は基本、1セットですね。アズトラの宝剣みたいに6本1セットの神器はあるんですけども。
グレゼイルの滅斧なら天獣や御使いにもダメージが通ります!
リカードはさらなる戦火に放り込まれそうな予感…
大型獣魔を氷像に変えた氷を打ち破り現れる。
どれ程深手を負わせても、再生して肉迫する。
御使いは初めて恐怖の感情を抱き後ずさる。
「き、貴様は一体何者だ!?」
リカード「ただの…人間だ‼」
おおっ熱い展開!
リカードが主人公だったらそんな物語になるのかな?
氷を打ち破るのは大変ですが、神器があればいけるかも。