幼いころから、世は闇に覆われていた。
人々は魔物の脅威に怯え、諸国の戦火は絶えることを知らなかった。
そんな混沌の世で、少女ファズニルは家族とともに安寧を求めて土地から土地へと移り住んでいた。
夜な夜な、彼女は蝋燭の灯りに照らされた本の中に憧れの世界を見出していた。
英雄たちが剣を振るい、能力を駆使し、圧倒的な力で強大な敵を打ち倒していく物語に、彼女は心を奪われていった。
暗い現実の中で、それは希望の光のように彼女の心を照らしていた。
神の啓示は、嵐の夜に訪れた。
稲妻が闇を切り裂く中、ファズニルの体は神聖な光に包まれる。
選ばれし者としての力が彼女の内に宿ったのだ。
しかし、彼女の心は揺れることはなかった。
「うーん…英雄ってガラじゃないんすよね」
ファズニルは静かに呟いた。
幼い頃から、彼女は物語の主人公に自分を重ね合わせることはなかった。
それは彼女の本質ではなかったのだ。
代わりに、彼女が見出したのは別の道だった。
念動力による攻撃支援を習得し、戦術を学び、そして何より、仲間たちの心に寄り添う術を身につけていった。
彼女は影となって英雄たちを支え、その力を最大限に引き出す存在となっていった。
闇を切り裂く剣を振るうのは、アタッカーを任される聖女たち。
しかし、その背後には常にファズニルがいた。
彼女の紡ぐ法力が聖女たちの力を増幅し、そして時には命さえも救った。
戦場に咲く一輪の花のように、彼女は静かに、しかし確かな存在感を放っていた。
聖女たちは口々に言った。
「ファズニルがいなければ、我々はとうの昔に全滅していただろう」
彼女はそんな言葉を照れくさそうに受け止めながら、自分の選んだ道が間違っていなかったことを噛みしめるのだった。
支える者にも、英雄と同じだけの輝きがある。
――それこそが、ファズニルが見出した聖女としての真実だった。
コメント
俺ツエーが好きなのにもちゃんと理由があったのか
せめて創作の世界ぐらいは…という逃避でもあったのですが、後方支援という形で現実のものに変えつつあります。
満足にダメージが通らず、回避が最大の防御になる獣魔との戦いではバフの重要性が際立っていますね。
多くの作品で単調・地味に描かれがちなバッファーに対する評価が高い作風がとても良いです。
物語では圧倒的な最強キャラに憧れるものの、実際に戦場に出る場合は後方支援希望。
現実的な思考が術者らしいです。
コルディザの深堀回が楽しみです。まだ登場すらしていませんけども(笑)
花形はアタッカーにはなるのですが、同じぐらい重要な位置づけで頑張ってほしいなと思っております。
獣魔はみんなデカいのでバフ盛りでぶっ飛ばしていきたいところ!
ファズニルは物語の主人公と自分を切り離すタイプの読み手ですね。
コルディザは扱いが結構ムズかしいなと思っています。
でも登場させますよ!