法下の武力

夕暮れの教皇庁の廊下に、重い足音が響いていた。
聖女ジオッドは報奨金の入った革袋を腰にくくり付けながら、無言で歩を進める。
バイザーで隠された瞳には何かを見すえるような強い光が宿っていた。

ジオッドは金のために戦う。
しかし、その金が向かう先には、彼女なりの大義があった。
ブリッツの開発を強みとした武器会社の設立――それはジオッドの夢であり、使命だった。

エザリス王国には兵器を開発するラムゼイ社があるが、獣魔に対抗するためのブリッツ製造においては他国に遅れを取っている。
――他国の侵略を防ぐため。
その大義の元、ラムゼイ社は教皇庁と結託し、人殺しの道具を生産し続けている。

「正義を成すための武力が必要だ」
ジオッドは時折、そうつぶやく。
それは自分に言い聞かせているようで、誰かに訴えかけているような――
両義的な響きを持つ言葉だった。

法学者として生きることを夢見た学生時代。
ジオッドは法こそが人々の救いになると、純粋に信じていた。
その信念は今でも心の奥底に残っている。
しかし、現実は彼女の理想を容赦なく打ち砕いた。

あの日の光景は今でも鮮明に蘇る。
親友は法の道を究め、誇り高い法学者となった。
だが、その命は一瞬で奪われた。

獣魔の爪に法典を持つ手ごと引き裂かれ、血潮を撒き散らしながら倒れた友の姿を、ジオッドは決して忘れることができない。

「法が通じない者たちがいる。そいつらを止められるのは、ただひとつ――武力だけだ」
それ以来、ジオッドは剣を手に取った。
しかし、彼女の目指すものは無秩序な暴力ではない。
聖女として国と人々を守るための、必要最低限の武力行使。
そのために、より強力な武器、そして防具が必要だった。

神々しい輝きを放つ、黄金の武具。
それこそが永遠の平和が約束された国 エザリス王国の戦士にふさわしい戦装束だ。

より高度な装備を用意できれば、聖女だけでなく兵士たちの犠牲も減らせるだろう。

革袋の中の金貨が、歩くたびにかすかに音を立てる。
それは彼女の決意を確かめるように響いた。

心の中で渦巻く矛盾と葛藤を押し殺し、ジオッドは今日も戦場へと向かう。
彼女の背中には法典を持って倒れた友の面影が、いつも寄り添っているのだ。

コメント

  1. 聖剣の目隠し乙女 より:

    個人紹介では趣味や人となりを推し量る情報が不足していましたが、ジオッドの過去と戦う理由が明かされましたね。
    より強い武器を作り正しく運用する、理想は素晴らしいですが個人の報酬ではどうにもならず、後援者を集め企業を起こす必要があります。
    ただ、ブリッツ専門会社という事はより高度な装備で聖女が戦う事で「兵士たちの犠牲が減る」訳ですね。

    • akima より:

      ジオッドなりの戦う理由があるので、それも書きたいなと思ってました!
      でも本筋に入れると回想シーンだらけなので…
      個人報酬をためて起業する感じでしょうか。
      実績のある聖女なら出資者も集められそう!

      ブリッツ専門だと聖女のみというニュアンスになりますね。
      「強み」などに変えてみたいと思います。
      ありがとうございます!

  2. 聖剣の目隠し乙女 より:

    がっしりした体躯に纏う重厚なフルプレート。
    エザリス王国の戦士が高度な戦装束を装備するのは良いとして、ジオッドの主役回で本人の絵が登場しない事がやや物足りないです。
    紹介の立ち絵も他の魅力的な聖女達と比べて出来がイマイチな様な…。

    • akima より:

      ジオッドが廊下を歩いているシーンを作ろうかなと思ったんですが、どうもかっこよく作れず。
      修行不足ですね。
      立ち絵は結構気に入ってたんですが…
      鎧に覆われすぎて、あんま女性らしくはないかな?
      もう少し模索してみます!