「悪いな、待ったか?」
「いいや、私も今来たところだ。それより休みのところをすまない」
カウンターチェアに座っていた聖女が振り向く。
ポニーテールに黒いドレスを来たオルゼトは、周囲の男の視線を釘付けにしていた。
「気にするなよ。酒が飲めるならどこにだって行くさ」
イルザスはそう言ってオルゼトの隣に座った。
慣れた様子でバーの店主に酒を頼む。
「で、相談ってのは?」
「実は…」
オルゼトの母が一年ぶりに故郷から会いに来るという。
年老いた母を安心させるために恋人を紹介したい、誰か適当な男を紹介してくれないか、というのがオルゼトの相談内容だった。
「紹介ったってなぁ。いつも楽しく飲んでるだけで、特に男友達が多いわけじゃないぞ」
「それでも、リガレアの聖女の中では一番顔が広いだろう?私に合いそうな人がいれば紹介して欲しいんだ」
「うーん、まあいいけど…」
イルザスは腕を組んで天井を見上げた。
かすかな違和感。
オルゼトの美貌なら、わざわざ紹介しなくても恋人ぐらいできそうなものだが――
「とりあえず、母を安心させたいだけなんだ。贅沢を言ってあなたを困らせるつもりもない」
「そうか。じゃあライデルはどうだ?ちょっと年は離れてるけど、実直な男だぞ」
「ああ、彼か。あまり悪い噂は聞かないが…もみあげが長いのがな。少し気になるところだ」
「そ、そうか。だったらアストンなんかはどうだ?よく新米聖女からもカッコイイと言われてるよな。人柄も騎士団で評判だし」
「確かに。見た目も性格も申し分ないな。ただ、長男だったはず。もし結婚して義理の両親と住むことになったら――」
「おい、ちょっと待て。贅沢は言わないって話だったろ。ちなみに、お前からの条件は?」
「本当にこだわりはないんだ。髪は黒で、身長が私より高くて、優しくて、面白くて、収入が安定していて…」
イルザスはグラスを傾けて一気に酒をあおる。
覚悟していた以上に、長い夜になりそうだった。
コメント
贅沢は言わないと切り出す人に限って、注文がうるさい(笑)
オルゼトの選考基準は恋人の演技というより、本気で相手を求めている様な?
一時的に誤魔化して安心させるだけなら、後で付き合う必要が無いリカードが適任かも。
相手の髪は金や青ではダメなのだろうか。(確かにピンク髪の男は違和感アリ)
「ルドマンなんてどうだ?優しくて面白くて収入が世界規模で。髪と体格は…まあ…うん、気にするな」
そうなんですよ!
贅沢いうじゃん!みたいな笑
オルゼトは結構好みが細かいようでして…
だから彼氏できないのかな?
ピンク髪の男は、うーん。
薄いピンクですし…似合う人もいるかな。
ルドマン…検索したらかなり前衛的な髪型をしたオジサマが出てきました笑
オルゼトって真面目だけどちょっとズレてるキャラなんすねw
本人は大真面目ですよ!
でもちょっとだけずれがあるみたいで笑
短い!
もう少しこの2人のやり取りを見たかった!
さくっと読めるようにしてみました!
でも確かにちょっとさくっとしすぎたかな笑
登場するキャラそれぞれの物語は短くてもある方がいいな。キャラが生き生きしてくると思う。聖女の紹介ページもいいけど一人称すらわからん聖女もいるしな。
そうですね、登場する時に差し込みたいと思っています。
本編の進みが回想シーンで遅くなりすぎないよう、新キャラは抑えないとですね…
オルゼト「服装と髪形は○○が基本だが、アクセサリーも疎かにせず、私の装いの差異に気付いてさりげなく褒めてくれて…(中略)…小物と音楽の趣味が云々…庭の東側には□□が生えていてその隣には△△…」
イルザス「夜も更けて来たし、そろそろお開きにしないか?昼からプルゼリフの勤務があるだろう?」
オルゼト「何を言う。本題はこれからだ。細かい事にはこだわらないが…」
まだ続いていた笑
音楽の趣味まで固定されると難しいですね。
オルゼトは頑固そうなので…
それが強みになることもあるんですけど、好みはうるさいという笑