「お前さん、いったい何と戦ったんだ?大型獣魔が相手でもこうはならねえぞ」
ラムゼイ社が抱える工房の主バルドンはため息混じりに話した。
白髪の混じったあごひげを撫でる。
その視線の先にはボロボロになった盾型ブリッツが立てかけられてあった。
バルドンがウェレジアのために、膨大な時間と労力をかけて仕上げた代物である。
「ん~、それが聖女なのに獣魔の力を使えるヤツが攻めてきて…ま、大変だったんだよ、とにかく」
「おいおい、物騒な話だなぁ。空から見たことねえほどデカイ獣魔も攻め込んでくるしよ」
「そうなんだよ。で、とっつぁん直せる?」
「うぅむ、さすがにここまでボロボロだとな…新しく作るしかねえだろうな」
バルドンは盾の表面をなでながらつぶやく。
獣魔との戦いでブリッツは破損していくものだが、今回は予想以上の損傷具合だった。
「そっか~。じゃあ、今度はもう一回り大きく作ってくれない?強度も欲しいから素材は全部リガレウムがいいな」
「はあ~?全部リガレウム製の大盾だと?おま、それいくらかかるんだよ!」
「ま、大丈夫でしょ。ヴィゾア様におねだりするわ」
「作ってから『予算がおりませんでした』ってのは勘弁してくれよ。まあ、長い付き合いだから設計だけは進めておいてやるよ」
バルドンはあきれながら腕を組み、木製の椅子に座った。
青く澄んだ空を見上げ、ぶつぶつとつぶやきながら制作費の試算を始める。
「…手強いヤツばっかでイヤになるよ」
「なんだ?ウェレジア、らしくねえな。弱気になってんのか?」
「は?なってないよ。たださ…いや、なんでもない」
「いいじゃねえか、弱音を吐いても。お前さんはよくやってるよ、こんな重い盾を振り回してよ」
バルドンの優しい眼差しに、ウェレジアは幾度も救われてきた。
天啓を受けた後、故郷を離れて首都バトリグに来たときは不安でいっぱいだった。
都会の聖女たちに舐められないように、と虚勢を張り、へらず口をたたいてばかりの日々。
しかし、ブリッツの手入れ時に知り合ったバルドンの前でだけは、少しだけ本音を話すことができた。
「俺からしたらお前ら聖女はみんな娘みたいなモンだ。しんどくなったらいつでも来い。なんなら聖女辞めて、ウチで働きゃいいんだぜ」
「ありがとう、とっつぁん」
「抱え込むこたぁねえ。なんでも相談してこい」
「うん。そうするよ。――さっそく相談なんだけど…新調する盾の制作代、まけてくれる?」
「うぐ、そ、そうだな。なるべく安くすむように作ってやる」
たじろぐバルドンの表情を見て、ウェレジアは微笑った。
彼女の戦いはまだまだ続く。
何度でも立ち上がり、人々を守る盾になると決めているから。
ウェレジアの心の奥底で、静かな覚悟が再び火をともしていた。
コメント
帽子ない方がかわいい
ウッ
あの謎帽子が個性かなと思ってたんですが、でもまあない方がすっきりしてますかね。
グレアス工房のレアモンドとはまた別の職人。
アタッカーの利用者が多いグレアス工房に対し、バルドンの工房は防具中心なのでしょうか?
遠めの全身像で細部が分かりにくい立ち絵に対し、個別のイベント絵は魅力が際立っていますね。
【甘口の約束】のパルゼアも鎧を脱いだ姿が年相応の少女らしく可愛かったです。
強気な聖女が弱みを見せる関係が良いですね。
国を守る最重要戦力でありながら、装備予算が火の車。まるで某RPGⅤを彷彿とさせます。
無料で手に入り整備コストがかからない神器・魔剣を集めれば、予算に余裕が出るかも?
しかし神々の武具は鉛の様に重い!聖女は装備を諦めた。
また別のおじさん職人です!
バルドンは武器・防具全般ですね。
銃器類はあつかっていません。
個別の立ち絵とは違うイラストもたくさん用意していきたいです…
まずはジオッドを頑張らねば笑
神器はGETできればたしかにお手軽強化につながりますが、代償ははたして…