迎撃作戦

獣魔の奇襲時に聖女たちが集まる大広間で聖女王ヴィゾアが次々に指示を飛ばす。

「ガルフィズは市民の誘導を。大聖堂に避難させて」
「承知しました」
主君であるヴィゾアの命を受け、聖女ガルフィズは床に片膝をつけたまま頭を下げた。

黄金に輝くバイザーとは対照的な漆黒の大剣。
輝く肌はよく日に焼けていた。
王国一の剣術を誇る彼女を市民の誘導役に命じたのには、予想外の敵に備える理由もある。

「ウェレジア、貴女も大聖堂へ。みんなを守って」
「ほーい」
間伸びした声とともに、聖女ウェレジアは白く加工された巨大な盾を背負う。
防御に秀でた彼女もまた、不測の事態に対する保険である。

「リズレウは司教たちの保護を。あとは————」
「あの獣魔をブッ殺すんだろ?」

焦れた声が割り込んだ。

「……いいの? ベルナズ。今度の相手は一筋縄じゃいかないわよ」
ヴィゾアが見た電撃が獣魔の攻撃であることは明白だった。
その威力から推定される獣魔のサイズは大型、もしくはそれ以上。

「上等だ。なんなら俺1人でやってやるよ」
聖女ベルナズが勝気な笑みを浮かべた。
切り揃えられた金色の髪とぴったり身に沿った戦闘服。
その体の周囲に4機の銃型ブリッツが浮き上がる。
ヴィゾアに並ぶシューターである彼女は強敵の襲来に胸を躍らせていた。

「イズデイルたちが応戦中なの。飛ばすわよ。ついて来れる?」
振り向きもせずヴィゾアは大広間の窓から飛び立った。
「ケッ! 誰に言ってんだよ」
その背をベルナズが追う。
冷たい風が街の上空に吹きすさんでいた。

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歪む信仰
聖女リズレウは幼いころから教会で暮らしていた。 両親は戦争で死んだらしい。