夢境の泡沫

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雪が降っていた。
どこまでも続く白銀の世界。
凍りついた海。
砕けた氷。
吹き荒れる風。
その中心に、ひとりの乙女が立っている。

白銀の鎧。
深く被った兜。
顔は見えない。
ただ、その周囲には六本の剣が浮かんでいた。

剣が飛ぶ。
鋭い閃光。
身が裂ける感覚。
骨が砕ける音。

全身を焼くような激痛が駆け巡った。

咆哮。
怒り。
憎悪。

どうして――なぜ?
何故、自分が封じられなければならない。
世界そのものを呪うような激情が渦巻く。

――誰の記憶?
ギルゼンスは考える。
だが思考は長く続かない。
雪景色は崩れ、白い世界は闇に沈んでいく。

意識が浮上する。
あるいは沈んでいるのかもしれない。
境界は曖昧だった。

温かく、心地よい。
すべてを委ねてしまいたくなるほどに。
そこには争いがない。
痛みもなく、恐怖もない。

ただ幸福だけがあった。

ふと、誰かの気配を感じる。
呼びかけようとした。
しかし返事はない。

温もりだけが残っている。
抱きしめられていた感触。
愛おしさ。
それだけが静かに漂っていた。

――サローザ。
名前が浮かぶ。
しかし、その姿はもう見えない。
深い水底へ沈んでしまったかのように。
どれだけ手を伸ばしても届かなかった。

意識の奥底で何かが囁く。
このまま眠ればいい。
もう苦しまなくていい。
何も考えなくていい。

強大な存在の一部となり、永遠に満たされていればいい。
甘美な誘惑だった。

だが、ギルゼンスはゆっくりと首を振る。

違う――これではない。
こんな閉じた幸福のために、ここまで来たのではない。

争いを終わらせる。
人々を導く。
世界を調和へと近づける。
そのために力を求めたのだ。
眠るわけにはいかない。

意識の底で、何か巨大なものが目を開く気配がした。
ゆっくりと重々しく。

そして――雲海の上。
巨大な獣魔がまぶたを開く。

すみ渡る青い瞳。
その奥で紅い光が揺らめく。
青は次第に失われ、燃えるような真紅へと染まっていった。

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開戦の狼煙
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コメント

  1. 匿名 より:

    陰謀に頼る必要が無い絶大な力を得た事と強大な精神と融合した影響で、ギルゼンスが憑き物が落ちた様に純粋に調和を目指す人物に見えてしまいます。
    他国や他者への態度を見る限り、隷属させて支配する事を調和と考えているみたいですが。
    深淵の像と憑魔術くらいではエルゼナグを御するには到底足りませんよね。

    • akima より:

      単純に力だけで圧倒できる状態にはなっていますので、心境の変化はあると思います。
      もっとダイレクトに思いを叶えられるようになった時、人はどういう行動に出るのか…
      大型獣魔ぐらいなら意のままにできたかもしれませんが、相手は神獣の化身なのでちょっと小さく見積もりすぎた感あります。

  2. 匿名 より:

    これは女神アズトラですよね
    エルゼナグを封印した御使いって実はアズトラだったってこと?
    剣って六本でしたっけ
    ゼタリリアは四本でしょ

    • akima より:

      銀の鎧を着ているのはアズトラです。
      エルゼナグを封印したのは御使いです。
      ご指摘通りゼタリリアが使ったのは4本、アズトラは6本です!

  3. 匿名 より:

    ギルゼンスのたちの悪いところは自分がやっていることが正しいと思っているところですね。
    そういう人が力を持つと碌なことになりません(^_^;)
    ところでギルゼンスの紹介ページには「闇に堕ちる感覚…教えてあげるわ」というセリフがあります。
    そしてこの回を読む限り『闇に堕ちる感覚』というのは『三者が合体した後意識が深い場所に堕ちていく感覚』だと説明があります。
    つまりあの発言は合体した後の発言ということになります。
    この後ギルゼンスは人の姿に戻るということでしょうか?
    その場合『教えてあげるわ』と言っているので少なくとも人語が通じる相手とまた合体するつもりなのでしょうか?
    ネタバレになりそうでしたら答えていただかなくても結構ですので。。

    • akima より:

      確かに自分のやっていることが正しい、と信じ切っています。
      でもギルゼンス自身もどこかで強引すぎるとは思っているみたいです。
      ただ、できるからやる、みたいな感覚です。

      >闇に堕ちる感覚

      細かいところまで読んでいただけて嬉しいです!
      こんな考察が寄せられることもまったくの想定外でした笑
      ご質問の内容に関してはコメント欄ではまだお答えできないです。
      ぼかす形になるかもしれません。
      続きも読んでもらえると嬉しいです。

      • 匿名 より:

        細かいもなにも一行目に書いてありますがね(^_^;)
        過去の更新でもいろいろとヒントが散りばめられているようなので楽しく読ませてもらっています。

        • akima より:

          ありがとうございます!
          一応先の物語に絡めて書いてある部分もあるので、時間に余裕のある時に見ていただけると嬉しいです。

  4. 匿名 より:

    オリジナルの宝剣に対してリンカージェの物は大剣なんですね。
    アズトラが参戦して攻撃する程となると、慧神イオクスの御使いでは足りないレベルの強敵という事になります。
    悪しき存在を滅ぼすアズトラが一方的に蹂躙してなお止めを刺さず封印する辺り、神獣は生かしておく必要がある?
    皆さん理解が深いですね。
    上から聖剣乙女、CCCさん、るなばるさんだったりするのでしょうか?

    • akima より:

      そうなんです、リンカージェはかなり大ぶりになっています。
      攻撃力はアップしているのですが、その分重たくもなっていて、防御にも使えたり。
      でもスピードならアズトラの宝剣型の方が上ですね。

      ご明察の通り、イオクスの御使いでは倒せないぐらいのやつが封印されているシーンとなります。
      神獣は再生能力が高くてアズトラでも倒せず、封印した、という経緯があります。
      このあたりも書ければと思ってます!

  5. 匿名 より:

    このイラストきっかけで読み始めたんだけど全然意味わからん

    • akima より:

      ありがとうございます!
      いくつかの媒体に載せているのですが、この画像経由で来てくれた方が多いようです。

      https://seijyoblitz.com/1032.html
      こちらが1話になりますので、良かったら読んでみてください。