月光に照らされる王城の回廊は、不気味なほど静寂に包まれていた。そんな夜の闇を貫くように、聖女王ヴィゾアと聖女コルゼティが対峙する。
「うう…ヴィゾア様…」
「ガルフィズ、あなたのブリッツを少し借りるわね」
ヴィゾアはうずくまるガルフィズに声をかけた。
その背後には、大剣型のブリッツが重厚な金属光を放ち、ゆるやかに浮遊している。
一方のコルゼティは両腕を組んだまま、拳型のブリッツを両脇に展開させていた。
「さて、コルゼティ。あなたに正義を語られるなんて予想外だったわ」
「ふん。身勝手な法ばかりが作られ、民の声はまるで考慮されない。それが貴様ら中央の言う『正義』だ。笑わせるなよ」
コルゼティはわずかに口元を吊り上げた。
影が薄い唇を覆い、まるでヴィゾアをあざ笑うかのような軽蔑の色を浮かべている。
「民の願いをそのまま法に反映させるなど、非現実的でしょう。知識と政治感覚を持った者たちが法を形作るべきよ」
「ほう……つまり、一部の選ばれた者たちが、一国の法律を勝手に決めるというわけだ」
コルゼティが肩をすくめる。
「そんな体制で『国全体の正義』など成り立つものか! 中央にとって都合のいい法しか作られず、民はただ押し付けられるだけ――なんとも歪んだ正義があったものだ」
吐き捨てるように言いながら、コルゼティは集会に集まった人々のおびえた表情を思い出していた。
何かにすがるような、それでいて諦めたような――そんな顔だった。
「感情的な民を混ぜるわけにはいかないでしょう? 彼らの意見は混乱を招くだけ」
ヴィゾアは少しだけうつむくと、バイザー越しにコルゼティをにらむ。
みずから動こうとはせず、不平不満ばかりの大衆たち。
正直に言ってしまえば、うんざりしていたのだ。
「くくっ、馬脚をあらわしたな。民は愚かなものと決めつけ、権力を独占するのが貴様らのやり方だ」
勝ち誇ったようにコルゼティが肩を揺らして笑う。
「国家運営は、あなたが考えるほど単純じゃないの。神の生まれ変わりを称しながら、民を扇動して自分の目的を遂げようとする。それは独善じゃないかしら」
ヴィゾアは自信に満ちた声で言い放ち、宙を舞う大剣をわずかに前へ突き出した。
「ふん、ほざくがいい。我が神の力によってこの国を改革する。それが民の望む姿だ」
小さな息を吐くと同時に、ヴィゾアは大剣型ブリッツを疾風のごとく操り、コルゼティへ向けて横薙ぎの一撃を放つ。
剣先が青白い残像を描くと、空気を切り裂く金属音が響き、拳型ブリッツを狙い撃つかのように容赦なく叩き込んだ。
コルゼティは素早く反応しようとするが、重い拳ゆえに動きがやや鈍い。
最初の一撃で拳の側面が小さく削られ、火花が散る。
「ほう、少しはやるようだな。近接は苦手かと思ったが」
コルゼティの言葉に、ヴィゾアは微笑を浮かべる。
まるでこの闘いがすでに自分の勝利であるかのような落ち着きぶりだった。
海上要塞での戦いで受けた怪我はいまや完全に回復している。
それだけでなく、今までにない力がみなぎっているのを感じていた。
反撃の余地を与えまいと、次なる打撃を立て続けに繰り出す。
しかし、コルゼティはこのまま押されっぱなしではなかった。
背中から現れた擲弾がふたつ、ヴィゾアの方に飛んでいく。
「小細工を」
ヴィゾアは白いドレスをひるがえし、大剣の腹で擲弾を叩き落とす。
壁にぶつかった擲弾は小さく爆発を起こした。
「ほざけ」
コルゼティが王笏を掲げる。
爆発により飛散した瓦礫が一度宙空で止まり、急加速してヴィゾアに向かっていく。
大剣で瓦礫をはたき落とし、破壊された回廊内をあわただしく飛び回りながらヴィゾアは回避を続けた。
「様子見は十分だろう。本気で来い」
コルゼティは巨大な拳型ブリッツを一度後方に退かせ、右手を天にかざすように広げる。
その輪郭が赤紫の光で妖しく変化し始めていた。
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コメント
ヴィゾアが近距離パワー型に・・!?
今までにない力とは天獣パワーなのか。
パワー型かどうかは謎ですが、前よりパワーはあります!
天獣の力を取り込んでますね。
次で決着です!
神器、手下、極上宝石、資金、大衆の扇動…準備を重ねてようやく行動を開始したコルゼティ。
政治も正しく運用出来る程の全能の神の力を自認するなら、道具や小細工は必要無かったのでは?
民の顔から心情を察する様な描写はあるものの、揚げ足取りばかりで建設的な意見は出てこない。
怪我で動けなかったはずのヴィゾアの傷が完治。
天獣の神気を吸収して自身をより強化する言わば【吸魔術】?
得意の銃火器を用意せず、肩慣らしとばかりに近接武器で余裕を見せる。
根本的に法力が強い聖女は得意分野以外の能力・技術も高く、苦手らしいものが見つからない。
一方、「輪郭が変化」ただ事ではない切り札を用意しているコルゼティ。
国家転覆を狙ってますので、かなり入念に準備をしてきました。
神の力も有限なんですねきっと笑
【吸魔術】おもしろいですね!
実際、それに近い形で強化されています。
近接武器でも結構やれてしまうぐらいには…
コルゼティは自分がエザリスの王になったらまともな政治をやるつもりなんですかね?独裁するのかと思いきや民主主義にしようとしてるのかな。
まともといってもこの性格ですからね~
言うこと聞かない人はばっさりいきそう。
ラズナンド1体では3大獣魔融合には及ばないものの、天獣を狩り続ければヴィゾアは今以上の成長を見込める。
融合対象がネイル、分離した神で打ち止めのピッコロより伸びしろで有利。
次章はパルゼア強化イベント必須。
リガレア聖女達は獣魔との融合強化を受け入れるかどうか。
山に戻ったとされるダルガロスの遺骸(休眠?)を融合素材に出来れば聖魔ギルゼンスにも比肩し得る。
範囲が広い土地や鉱脈に影響を与える程の神器の力をコルゼティ個人に集約すれば、計り知れない強化が見込める。
問題は人の体が耐えられるかどうか。輪郭の変化から想像されるのは、肉体強化。
筋肉増加、部分獣化、巨大化、極上を超える究極のアズカライトに自身を変質させるのか。
自らを神と称するだけに、許容量を顧みず自己強化を際限なく繰り返し自滅する可能性も。
仲間達が駆け付ける!ベルナズが右拳を破壊した!ベルザリアが左拳を破壊した!
ジグナが頭部を撃ち抜いた!
!?!?!?コルゼティの腹部が怪しく蠢き出す…‼
神コロさま!?
ヴィゾアはもっと強くなれるでしょうか。
これ以上いくと神に近づいていきそうですが…
パルゼアたちは獣魔との融合は受け入れるかどうか。
そこは次章で書く予定になっております!
コルゼティももっと強くできるのですが、インフレしまくるのも避けたいところ。
バトルものは難しいですね。
デスピサロは変身後の音楽がとてもカッコいい!