華やかな金箔の施された謁見の間に、朝日が差し込んでいた。
巨大な窓から差し込む光は、まるで神の眼差しのように室内を照らし出している。
「さて、ガルフィズ」
玉座に座る聖女王ヴィゾアの声が、静寂を破った。
その声には慈愛と威厳が同居していた。
瑞々しい金髪をたなびかせ、ガルフィズは一歩前に進み出た。
彼女の胸には、戦闘試験で首席を獲得した証である金の徽章が輝いている。
その立ち姿からは、大貴族の家に生まれ育った気品が自然とにじみ出ていた。
幼い頃から最高の教育を受け、何不自由ない環境で育った彼女だが、それゆえに強い使命感を抱いていた。
恵まれし者だからこそ、恵まれざる者のために力を振るう義務がある――それが彼女の信念だった。
「あなたが望むブリッツを告げなさい」
ガルフィズは凛として顔を上げ、バイザーの奥から迷いのない碧眼で聖女王を見つめた。
「剣です」
その声は、謁見の間に響き渡った。
「私は災禍を打ち砕く剣になりたいのです。この王国を脅かす獣魔たちを、この手で断ち切りたい」
その言葉には、虐げられた民のために立ち上がろうとする強い決意が込められていた。
神に選ばれた聖女として、己の特権を民のために使おうとする覚悟が。
女王はかすかに頷き、次に聖女イズデイルへと視線を向けた。
金色の髪を三つ編みに束ねた少女は、控えめながらも凜としたたたずまいで立っていた。
その素朴な立ち居振る舞いからは、庶民の中で育った素直さが感じられた。
彼女の目には、故郷の村で見てきた光景が今でも焼き付いている。
獣魔の襲撃で家族を失った幼なじみの嗚咽、傷ついた隣人たちの苦しむ姿。
そして、必死に生きる人々の強さと温かさ。
「イズデイル、あなたはどうかしら?」
「私が望むのは…盾です」
イズデイルの声は柔らかかったが、その言葉には強い意志が込められていた。
「誰も傷つかなくて済むように、この王国を守る盾になりたいのです」
その瞳に映るのは、彼女が知る全ての人々の顔だった。
市場で出会う笑顔の商人たち、畑を耕す農夫たち、路地で遊ぶ子どもたち。
守るべき人々の姿が、彼女の決意を強くしていた。
その言葉に、謁見の間に集まった廷臣たちの間で小さなざわめきが起こった。
攻撃と防御、剣と盾。まるで正反対の道を選んだかのようなふたり。
生まれ育った環境も、歩んできた道のりも、まったく異なっている。
しかしヴィゾアは、満足げな微笑みを浮かべていた。
彼女には見えていたのだ。ふたりの聖女の胸の内に燃える、同じ炎が。
それは王国を、そして民を守りたいという、揺るぎない決意だった。
朝日はふたりの聖女を等しく照らし、その姿はまるで古の預言画のように神々しく映えていた。
異なる道を選びながらも、同じ理想へと向かう聖女の物語は、ここから始まろうとしていた。
コメント
ノブレスオブリージュを前面に出して民を守る姿勢のエザリスは聖女の国として最も王道な設定になっていますね。
後は優秀なバッファーが加わればバランスが取れたチームになりそう。
聖女という名称のど真ん中をいく国は欲しいな、ということで最初期の構想からありました。
名前もなんかエとかアが付いて、上辺だけ見ると理想郷みたに見えるけど…というところから作っていきました。
ヴィゾア・ガルフィズ・イズデイル+バッファーはかなり強いチームですね!
お・やっと聖女の掘り下げストーリーがはじまったか。
その調子で全員分かくんだよ!
が、がんばります!
ありがとうございます。
もっとキャラクターがいきいきと動き出すように掘り下げていきたいと思います。