「さて、話してもらうよ。なぜ天獣をけしかけたんだい」
冷たい海風を背に、グレイザが静かに問い詰める。
対峙するラージェマは静かに歩み寄りながら、淡々と答えた。
「お前たち人間の浅はかな行いが、獣魔をこの世に解き放ったのだ。しかも今や、我らに触れるほどの力さえ手にしている。もはや黙って見過ごすわけにはいかん」
その声はどこまでも冷酷だった。
グレイザは長剣の柄を握りしめる。
「そんな理由で……あたしの娘たちを殺したってのかい?」
「詮無いことだ。諦めよ」
グレイザの激情が一気に爆ぜる。
渾身の力でラージェマに斬りかかるが、ラージェマは微動だにせず、手元の神器イオクスの断刃で攻撃を軽々と防いでみせた。
ゾティアスは法力を振り絞り、斬撃を放つ。
さらにグレイザ、アムネズも加わり、三人の聖女が同時に攻撃を仕掛けた。
しかし、ラージェマはまるで先の未来まで見渡しているかのように、すべての攻撃を見切っていく。
「どうなってんだ、こいつ!かすりもしねえ!」
ゾティアスが声を荒げる。
雨のような斬撃を、ラージェマは涼しい顔で避け続けていた。
――膨大な情報を高速で処理し、どんな状況でも最適な判断を下す。
これが「イオクスの断刃」の力か。
とらえきれない難敵を前に、アムネズは畏怖した。
到底、人間の力が及ぶ相手には思えない。
「あんたら諦めんじゃないよ!」
連撃の隙間をかいくぐりながら、アムネズの刃をラージェマが避けた一瞬。
グレイザがの稲妻のような突きが空気を裂いた。
ラージェマの腕にかすかな刃の感触が走る。
浅い傷口から光の粒子が立ちのぼった。
――法力を帯びたブリッツなら、相手が御使いでも刃は通る。
あの先読みを超える一撃さえ放てれば、ラージェマも倒せるはずだ。
そう確信したグレイザは仲間に呼びかけるように吠える。
「攻め続けな!」
ゾティアスとアムネズも再度踏み込み、三人同時に総攻撃を仕掛ける。
しかし、ラージェマはどこか憐れみを含むように小さくつぶやいた。
「――遊びは終わりだ」
次の瞬間、イオクスの断刃が低くうなりを上げる。
グレイザとゾティアスは凄まじい衝撃波に弾き飛ばされ、背後の岩場に叩きつけられた。
息を整えようとしたとき、違和感が腰から下を襲う。
分厚い氷が這い上がるように体を覆っていき、ふたりの動きを封じ込めていた。
「なんだい、これは……!?」
グレイザの驚愕に答えるように、アムネズが構えたブリッツまでも凍りつき、砂浜に突き立った。
追い討ちのように断刃を振りかざすラージェマ。
アムネズを仕留めるべく迫ったその瞬間――
黒いブリッツが空から飛来し、イオクスの断刃を弾き飛ばす。
空から静かに舞い降りたのはギルゼンスだった。
ざわめきが海辺に広がる。
「貴様――約束を違えるつもりか」
「その子たちは大切なコマなの。芽のある聖女まで減らされちゃ困るわ」
凍りつく砂浜の上、氷に捕らえられたグレイザらは息をのんだ。
静まり返った海面を、冷たい風がすべるように通り抜ける。
雲間からの薄光が、その静寂をいっそう際立たせていた。
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コメント
膨大な情報を高速で処理し、どんな状況でも最適な判断を下す。
↑御使い自身の段違いな感応力+ラージェマの判断力と思いきや、神器の力。
『1秒先の未来を読む』異能でもなく、あくまで神器。
【イオクスの断刃】を持たない御使いはここまでの回避率を持たないという事に。
アムネズが構えたブリッツまでも凍りつき、砂浜に突き立った。
↑グレイゼルの滅斧が神気を奪う様に、凍結するとブリッツの法力までも凍り付く?
美味しい場面で駆け付けるギルゼンスが熱い!
アムネズも相応の見返りを差し出さないと♪
顔を俯かせたアムネズが頬を染めて囁く。
「聖女皇様…お礼の件…期待していて下さい///」
…後日、贈答用高級『瑞々しい果実』盛り合わせが届けられた。
これは神器の力ですね!
ラージェマでもこれだけの総攻撃を避け続けるのはムリでして。
たいていの場合、仕掛けられる前に倒すことはできるんですけども。
アムネズのブリッツは凍結してしまって刃としての機能がなくなってしまいました。
なので、アムネズもムリに持ち上げようとしていない感じです!
またしてもギルゼンス乱入…
アムネズのお礼が可愛い笑
真面目だなあ~
なんか胴体が長く感じられたんですけどおパンツの股上が浅すぎるからじゃないか!
そうなんです笑
ちょっとパンツ部分が小さすぎました。
これ戦ってる時大丈夫なんでしょうか?
真面目なのにえっち担当ってどういうことなの
真面目な性格なのに、どうしてこんな面積の小さいパンツを履いているのか。
作者は何を考えているのでしょうか。
このまま行きましょう!
ありがとうございます!
自分を信じる!
バイザーの中央部分の飾りと金色の髭、刺々しい鎧と刃、竜を彷彿とさせるデザインですね。
腕を覆う鎧が取り払われて身軽な姿になりましたね
首と胸を繋ぐ箇所、腿、装甲が減って大剣への回避を重視したスピーディな姿が魅力的。
ムチムチした立ち絵より、すっきりしたこちらの方が好みです。
アムネズ「鎧の面積を減らすと防御力が下がる。布地を軽くして運動性を高めよう」
『アムネズ様、流石にそのお姿は如何なものかと…』(さらに小さくなった下の▼を見る)
アムネズ「何を言う!まだまだもっと小型軽量化出来るはずだ!」
アムネズは私服が刺激的でも気付いて無さそうですね。
アムネズはムチ感ある感じではあるのですが、お胸が特徴的なので盛りました笑
バイザーはご指摘どおり、ドラゴンっぽさを意識しています。
最近、聖女はちょっと装甲が減っている傾向にありまして。
鎧好きなんですけど鈍重そうに見えるのはマズいなあ、と。
まあゴツゴツした装甲の聖女も登場すると思いますが笑
▼笑
これ爆笑しました、一文字で表現できていいですね!
あんまりヒワイな感じもしないですし。
アムネズは天然というか、自分の性的な魅力に気づいてないようです。
アムネズは実力のある聖女ですがメンタル面で揺らぐことが多いように思えます。その辺りが一線級の聖女たちにはまだかなわない理由なのでしょうか。
確固たる自信があるわけではなくて、自らを過小評価する傾向があります。
パルゼアやユゼルテスのように自信満々な聖女とはまた別ですね。
グレイザの一撃を簡単に受け止めているあたりラージェマとの実力差はかなりあるとみていいですねー。やはり奇襲や不意打ちでしか勝てないか。
聖女vs御使いは一対一だとかなりキツイですね。
まず負けてしまいます。
しかもラージェマは神器持ちなのでより力の差が開いています。
アタッカーを並べてバフをかけながら攻撃に全振り。
地味に今までにはなかった戦術。
一対一だと実力差のある相手ならこの方法しか勝ち目ないかも。
このぐらいしか勝ち筋を作れなかった…というのはあります。
防御役が受けて後ろから撃ったり、バフりながら攻撃役が攻めて…
といったオーソドックスな戦法では力負けしてましたね。
おそらく戦力差をひっくり返すならキルゾーンを形成してラージェマが実力を出しきれない環境で一気に倒し切るのが良いかと思います。
つまり、待ち伏せですね!
ラージェマは戦闘中は瞬間移動を使わないのでしょうか。神気を消費するとか?
神気も消費しますし、使わなくても勝てると思ってたのがありますね。
同時攻撃でかすりもしないとなると戦力差はかなり大きいということ。
ラージェマの登場は早かったんじゃ…
そうですね、正面から勝負するとまず負けてしまうぐらいの差がありました。
もう少し後にしても良かったんですが…
メリハリが欲しいなということで新しい存在である御使いに登場していただきました。
アズトラの宝剣、イオクスの断刃、神器は所有者の名前を冠している。
ディアメズの魔槍、グレゼイルの滅斧等の入手経路として、元の所有者から贈られる他、斃して奪った可能性も。
特にディアメズの魔槍は禍々しい瘴気を纏う等、味方側の神器らしからぬ表現。
神代の時代には他にも大勢いたはずが作中で判明しているのは3神のみ。
神々同士の勢力争いが起きたとしたら神気は大量に失われる。
力の行使に膨大な神気を必要とする神々は活動がままならなくなり、異世界へ離散。
神々が誕生する程の世界は神気が豊富に供給されるはずなので、いずれ環境が整い帰還する時に備え報告役の御使いを残す。
そして現在、神気は潤沢に満ちている。
「ヒャッハー! 神気と世界は神の物だぁ~!!」
そうなんです、神はもう少しいます。
そして神器には神々の名前がついています。
ディアメズはワルイ神様ですね。
それ以外もあんま変わらないのかもしれませんが…
グレゼイルはどちらでしょうか。
次の章でもまた新たな神の名が明かされる予定となってます!