暗然たるさざ波

「手強かったわね。イズデイル、立てる?」
「ええ、なんとか…」
差し出されたガルフィズの手を取り、イズデイルは立ち上がる。

突如エザリス王国の沿岸に現れた天獣
その猛攻を受けきる代わりに法力は尽きていた。
全身が痛みで軋む。

「はあ、やっと倒せた…なんだったんですかね、コイツ」

杖に寄りかかりながら聖女ポコレズはため息をついた。
陽の光を浴びて短い青髪が輝く。

彼女の眼前には砂浜に横たわる巨大な黄金の龍の姿があった。
体中の傷口から光の粒子がもれ出しているが、まだ息はある。

「天獣、ってヤツですよね?本当にいたんだ。それにしたって、ヴィゾア様はなんで――」

空中から砲撃を浴びせていたジレミューが砂浜に降り立つ。
間近で見る天獣の迫力に、思わず息を呑んだ。

「余計な詮索は不要よ。ジレミュー、手配していた魔導巨兵をこちらに。広場へ運ぶわ」

荒い呼吸を整えながらガルフィズが指示を飛ばす。
彼女が受けた任務は天獣を生きたまま海沿いの広場に運び込むことだ。

「ガルフィズ…」

不穏な空気を察したイズデイルが声をかける。
しかし、ガルフィズは振り返らずに小さく、大丈夫よ、とだけつぶやいた。

さざ波が寄せては返し、返しては寄せる。
どこかに帰るはずの音が、どこにも辿り着かないまま、ただ永遠に続いているかのように。

コメント

  1. 聖剣の目隠し乙女 より:

    トップクラスの防御耐久を持つイズデイルが法力切れ。
    ヴァルネイはグレイザ、アムネズがいた事で危な気なく倒した印象がある一方、エザリスはかなり苦戦。
    ガルフィズは平均して高めの能力がある反面、肝心の攻撃力がそこまで高くない。
    ポコレズの攻撃バフは強力なものの、やはりアタッカーの質が戦局を大きく左右する。
    天獣の数はどの程度放たれたのか、天竜ラズナンド級は各国に1体ずつ?

    ヴィゾアは天獣を調べ上げて模造する気ですね。
    今まで目立たなかったラムゼイ社の研究者が魔導天龍を開発!?

    • akima より:

      イズデイルはほぼひとりで受けていたので法力が切れてしまいましたね。
      ヴァルネイ勢はアタッカーが多く、長丁場にならなかったのが良かったようです。
      ガルフィズはバランス型なので攻撃特化型には譲りますが、いろんな局面への対応力はありますね。
      ラズナンドは量産できないので各国に1体ずつぐらいになります!

      天獣をいったいどうするのか?
      次章でヴィゾアの考えも見えてきます。
      魔導天龍めっちゃ強そう笑

  2. 匿名 より:

    やっぱり不穏な終わり方をするブリッツ・・・
    ヴィゾアはボロ負けしたので自軍強化のために天獣を使うつもりでしょうか?
    天啓を受けたとはいえ人間に従うようには思えませんが従魔術を使うのか。
    気になるところで終わりましたねー

    • akima より:

      だいたい何かよくないことが起こりそうな感じが最終話に来る!
      ヴィゾアは天獣を使ってなんとかギルゼンスを超える力を得たいようです。
      従える・呼び出す・融合する、どれになるかな…?

      • 聖剣の目隠し乙女 より:

        従魔術は天獣には効かない設定だったはず。
        神器でも使わない限り聖女の法力では、従える・呼び出す・融合する、いずれも不可能と思われます。
        技術的に有り得るのは天獣を操縦出来る様に改造。
        天獣を戦力化したなら他国との軍事力では有効としても、今のギルセンスに通用するとは思えない。
        膨大な神気の源となる核の様な神器が内蔵されていれば、そこから力を得るとか?

        • akima より:

          従「魔」術なので獣魔を従える術ですね。
          しかし天獣を現に従えている存在もいたり…
          ご指摘どおり、聖女が神器もなしに3つをこなすのはちょっと無理ですね。

          深淵の像があればエルゼナグとの融合も果たせましたし、降魔術は聖女ですらない人間でも発動させることはできました。
          触媒として兵士の命が奪われたり、ゼハインの助けがあったりもしたのですが。
          天獣は強力ですが、今のギルゼンスと戦うにはややパワー不足かもしれません。

          • 聖剣の目隠し乙女 より:

            生け捕りにしたラズナンドを従える、融合だとギルゼンスの手駒は抑えられても肝心のギルセンスには及ばない。
            ヴィゾアは生贄が必要になる降魔術を使わない先入観で除外していましたが、「正義に反した罪人」なら倫理観をクリアできますね(笑)
            数攻めで対応力を擦り減らすなら天獣の備蓄を呼び出す術式を得るのが妥当。
            目標が小さい聖魔をより大型の天獣で囲んで有効な攻撃を行えるかは謎

            ベルナズvsギルセンス、ギルセンスvsラージェマ、いずれも実力が拮抗する相手に集中している所へ伏兵が不意打ちする方法が決定打になっていました。
            神器で情報処理を拡大した御使いにも有効な事が実証済み。
            他に意識を割く余裕を与えず後ろから撃つ勝ち筋が人型サイズ戦の定番となるのか。

          • akima より:

            ヴィゾアは負けたことでさらに歪みを深める可能性がありまして、その場合何をしでかすか…
            ギルゼンスは大型獣魔にくらべると小さいですし、空も飛べますから囲むのは難しそうですね。
            そう思うと獣魔は狙いやすいというか、デカい武器でも戦いやすい存在だったり。

            ラージェマは不意打ちでしか倒せないだろう、という結論に至りました。
            いろいろと倒す方法を考えてみたのですが、正面から倒せるのはどうもおかしくなるな、と。
            ベルナズvsギルセンスはギルゼンスも普通に戦って勝てたかもしれないですが、より確実性のある方法を選んだということですね。
            そういうの、全然気にしないキャラですよ、という描写でもあります笑

      • 目覚めた人 より:

        3つとも使える聖女(?)がひとりだけいますねェ!

        • akima より:

          ?が付いている笑
          3つの禁術を使える上に神器まで携えている謎の聖女、またしてもメインストーリーに絡んでくるのか!?

  3. 匿名 より:

    ヴィゾアが今のギルゼンスに勝とうと思ったら天獣の力+神器ぐらいはいりそう。天獣をどう使うかによるけど。

    • akima より:

      一対一だとちょっと差があります。
      なので何かしらの方法でその差を埋めたいとヴィゾアは考えているようです。

      • 匿名 より:

        永遠に続く…
        さざなみ…
        同じことがまた繰り返されるということ。
        つまり…融合?

        • akima より:

          さてどうなるでしょうか!?
          同じことが繰り返される、というのは一部当たっているかもしれません!
          今頑張って書いてます!

  4. 匿名 より:

    次回予告!とか執筆日記みたいなのを書くっていうのはどうですか?今の状態だといつ更新されるかわからんので