蒼穹の極光

王都の上空で尾がうなり、雷が走る。
空そのものが敵になったかのようだった。

「――ベルナズ!」

ヴィゾアの声が飛ぶ。
空を旋回しながら、目隠しの下の視線を細める。

「胸部を狙って!電撃の起点よ!」

聖女王の叫びが空気を震わせる。

胸元――外皮の隙間。
そこだけ青白い光が脈打っている。

「おう、任せろ!」

四方に展開させた火砲を戻す。
狙いは電撃を撃つ瞬間。
マナグロアが体内のエネルギーを胸部に集めた時――今だ。

周囲を飛んでいたベルナズは、軌道を変え、急激に加速する。
四つの火砲が、胸元へ向く。

「ブッ潰す!」

爆音と同時に、火砲が吠えた。
まばゆいばかりの閃光。

空気が裂ける。
念動力で加速された砲弾が、龍の胸部へ突き刺さる。

血煙と獰猛な声。
紺碧の鱗が砕けた。
マナグロアが初めて大きく身をよじる。

そして空を覆っていた雷が、目に見えて弱まった。

「ざまぁみやがれ!」

ベルナズが笑った、その直後。
巨龍の尾が空を裂く。
鈍い衝撃音。

「――っ!」

割り込んだイズデイル。
巨大な盾が尾を押し返す。
骨まで震える衝撃。

「う、ぐぅっ……!」

吹き飛ばされそうになるのをこらえる。
息が苦しい。
それでも、盾を握り直す。

「お願い!時間を稼いで!」

再び前へ出るイズデイルの背中に向って、ヴィゾアが叫ぶ。
まっすぐ、天へと上昇していく。

戦場から切り離されたような空――それは静かな場所だった。
目を閉じ、両手を広げる。

風が集まり、雲が揺れる。
空気が静かに震えだした。
世界に満ちる力が、ゆっくりとヴィゾアの元へ吸い寄せられていく。

巨大な火砲が、淡く輝き始めた。
王都を照らすほどの光になる。

その足元では尾と爪による波状攻撃が続く。
電撃を封じても、獣魔の勢いは全く衰えることがなかった。

ベルナズが頬を伝う血をぬぐう。
目元から赤い筋。
耳元も熱い。

聖女の力を使いすぎている。
わかっているが、戦いを止める気はない。

「チッ……ヴィゾア、急げよ!」

再び砲撃を再開する。

だがマナグロアも気づいていた。
天を照らすまばゆい光。
その危険に。

巨龍が咆哮する。
胸元に残った光が脈打つ。
天へ向かって放たれた、最後の電撃。

閃光は一直線にヴィゾアへ。
避けられない――しかし、集中を解けば間に合わない。

その時、黄金の盾が空へ飛び込んだ。

「させない!!」

空中で割り込んだのはイズデイルだった。
雷光と小さな悲鳴。

「あぁぁっ――!!」

白い光が身体を焼く。
盾越しでも防ぎきれない、電流が体を貫く。
空中で身体が痙攣し、意識が遠のいていく。
それでも盾だけは離さなかった。

「みんなを……」

言葉は最後まで続かなかった。
落下していくイズデイルの身体をベルナズが抱きかかえた。

「ヴィゾア!撃てぇ!!」

その声に応えるように――
ヴィゾアが、ゆっくりと目を開いた。

静かな表情だった。
恐れも焦りもなく、ただ、絶対の確信だけがある。

巨大な砲を構える。
銃口が、龍をとらえた。

「終わりよ」

一瞬の静寂。
静まった世界に光が落ちた。

空を裂き、海を白く照らし、王都そのものを揺らしながら。
巨大な奔流が、巨大な獣魔をを呑み込んでいった。

↓NEXT

光闇の撤退
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コメント

  1. 匿名 より:

    画像とストーリーのリンクが素晴らしいです。
    仲間に凌いでもらう間に、時間を稼ぐ溜め撃ちにはロマンがあります。
    ルドルザの時といい、頭部毛細血管の損傷は脳にダメージが行きそうで怖いですね。
    個人的には目から出血した聖女は、戦闘終了後の療養中は目に包帯をしていて、消費し過ぎた法力の負担を減らす為に感応力の使用も控える描写があると萌えます。

    • akima より:

      ありがとうございます!
      いろいろ加工して帳尻を合わせているのですが、技術不足でなかなか…
      超強力だけど撃つのにタメがいるタイプの攻撃は好きなんで、入れてみたいと思っていました。
      念動力・感応力を使いすぎると頭にダメージが来るので、聖女たちは耐久戦が苦手ですね。
      包帯系の目隠しも出していきたいと思います!

  2. 匿名 より:

    イラストはポン出しですか?
    それかイラストに合わせて文章を書いているとか?

  3. 聖剣の目隠し乙女 より:

    ベルナズが4機の火力を集中させると発電器官の大半を破壊できる。
    前回まではヴィゾアの大型砲でもほとんどダメージが入っていない様子だった。
    基本的に前面や胸部は厚く外皮で守られるが、前半戦のマナグロアは弱点を分かりやすく重要な胸部発電器官の鱗を薄く設定されているのだろうか。

    • akima より:

      発電する瞬間はエネルギーが集まっているので爆破しやすいんですね、きっと!
      人間で言うところの、相手が息を吸う瞬間に打撃を当てることにより、腹筋に力が入らず一番ダメージが蓄積しやすくなる…的な!

  4. 聖剣の目隠し乙女 より:

    攻防がしっかりと描かれ、誰一人欠けても成立しない秀逸な戦闘バランス!
    パルヴァズは何処へ。

    • akima より:

      守る人・電撃を阻止する人・仕留める人、という役割でのバトル!
      パルヴァズは…もっと後ですかね…出番…。